中東情勢や原油高で資金繰りが苦しくなった場合は、まず「いつ・いくら足りないのか」を資金繰り表で確認します。そのうえで、融資、セーフティネット貸付、セーフティネット保証5号、ファクタリングなどを、自社の支払日と入金予定に合わせて検討した方がよいでしょう。
原油価格や原材料費が上がると、運送費、電気代、仕入代、外注費などの支払いが先に増えます。
一方で、売上代金の入金日が早まるわけではありません。帳簿上は黒字でも、給与や仕入代の支払日に口座残高が足りなくなることがあります。
中小企業庁は、2026年7月時点で中東・ウクライナ情勢や原油価格上昇の影響を受ける中小企業・小規模事業者向けに、特別相談窓口、セーフティネット貸付、セーフティネット保証5号などを案内しています。
- 数か月以上の運転資金が必要な場合は、融資やセーフティネット貸付を検討します。
- 保証付き融資を使いたい場合は、セーフティネット保証5号の指定業種や認定要件を確認します。
- 売掛金の入金前に支払いがある場合は、ファクタリングで受け取れる金額と入金時期を確認します。
中東情勢と原油高で資金繰りが苦しくなる理由
中東情勢や原油高の影響は、ガソリン代や軽油代だけに限られません。物流費、電気代、原材料費、包装資材、外注費などにも広がります。
売上がすぐに増えないまま支払いだけが先に増えると、手元資金は減りやすくなります。資金繰りでは利益だけでなく、入金日と支払日のズレを把握することが出発点です。
売上があっても現金が足りなくなることがある
売上が立っていても、入金が翌月末や翌々月末であれば、その前に資金が不足することがあります。
たとえば運送業で燃料費が上がると、軽油代や車両関連費の支払いは先に発生します。製造業では原材料費、飲食店では仕入代や光熱費が上がることもあります。
取引先への請求が済んでいても、売掛金が入金される前に給与、社会保険料、税金、家賃、外注費、仕入代を支払うことになれば、資金ショートが起こりえます。
この状態を避けるためには、売上の増減だけではなく、入金サイトと支払いサイトを見ておく必要があります。
まず資金繰り表で不足する日と金額を確認する
資金調達を検討する前に、少なくとも向こう3か月の入金予定と支払予定を日付順に書き出します。
確認する項目は次のとおりです。
- 売掛金の入金予定日と金額
- 給与、社会保険料、税金、家賃、外注費、仕入代の支払日と金額
- 借入金の返済日と返済額
- 現預金残高
- すでに使い道が決まっている資金
- 入金が遅れる可能性がある売掛金
不足する日と金額がわかれば、必要以上の借入や売掛金の資金化を避けやすくなります。
融資の相談でも、資金使途と返済見込みを説明しやすくなります。資金繰り表を作っていない場合は、先に入金予定と支払予定を月単位・日単位で書き出しておくとよいでしょう。
中東情勢・原油高で案内されている主な支援策
2026年7月時点では、中小企業庁が「中東情勢等を踏まえた中小企業・小規模事業者向け支援」を案内しています。
内容は、特別相談窓口、セーフティネット貸付、セーフティネット保証5号、事業再生支援、金融機関への配慮要請、価格転嫁・取引適正化などです。制度名だけで判断せず、自社の業種、売上、利益率、資金使途に合うものを確認します。
特別相談窓口
中小企業庁は、全国の日本政策金融公庫、沖縄振興開発金融公庫、商工組合中央金庫、信用保証協会、中小企業活性化協議会、商工会議所、商工会連合会、よろず支援拠点などに、特別相談窓口を設置しています。
相談時には、次の数字を用意しておくと話が進みやすくなります。
- 燃料費や原材料費がどのくらい増えたのか
- 価格転嫁がどこまで進んでいるのか
- 今後いつ資金が不足する見込みなのか
- 不足額はいくらなのか
- 売掛金の入金予定日はいつなのか
「資金繰りが苦しい」という説明だけでは、相談相手も具体的な支援策を選びにくくなります。
数字を用意しておくと、融資、保証付き融資、価格転嫁、経営改善のどこから進めるべきかを話しやすくなるでしょう。
セーフティネット貸付
セーフティネット貸付は、社会的・経済的環境の変化などで一時的に業況が悪化している事業者を支援する融資制度です。
日本政策金融公庫の経営環境変化対応資金では、売上の減少、取引条件の悪化、社会的な要因による資金繰りへの支障など、複数の対象要件が示されています。
中東情勢や原油価格上昇の影響を受け、一定の条件を満たす場合には、金利引下げの対象となる場合もあります。
ただし融資である以上、審査があります。申し込めば必ず借りられる制度ではありません。資金使途、返済見込み、借入状況、試算表、資金繰り表などをもとに判断されます。
セーフティネット保証5号
セーフティネット保証5号は、全国的に業況が悪化している指定業種に属し、経営の安定に支障が生じている中小企業者を対象とする保証制度です。
信用保証協会が通常の保証限度額とは別枠で、保証割合80%の保証を行います。
ただし保証5号は、資金を直接受け取る制度ではありません。信用保証協会の保証を付けて、金融機関からの借入を進める制度です。
2026年7月1日から9月30日までの指定業種は583業種と案内されています。利用には指定業種への該当だけでなく、市区町村長の認定、金融機関や信用保証協会の手続きも関係します。
原油高の影響を受けていても、指定業種や認定要件に当てはまらなければ保証5号は利用できません。
融資・保証5号・ファクタリングのどれを検討すべきか
資金調達の方法は、資金が必要な時期、金額、使い道、返済できるかどうか、売掛金の有無によって変わります。数か月以上の運転資金には融資、保証付き融資を進めたい場合にはセーフティネット保証5号、売掛金の入金前に支払いが迫っている場合にはファクタリングが候補となるでしょう。それぞれの違いを押さえて選ぶ必要があります。
| 方法 | 仕組み | 向いているケース | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 融資・セーフティネット貸付 | 金融機関などから資金を借りる | 数か月以上の運転資金、設備投資、仕入れ拡大 | 元本返済と利息が発生する。審査や書類準備も必要 |
| セーフティネット保証5号 | 信用保証協会の保証を付けて借入を進める | 指定業種・認定要件を満たし、保証付き融資を使いたい場合 | 市区町村の認定、金融機関、信用保証協会の手続きが必要 |
| ファクタリング | 売掛金を譲渡して入金日前に資金化する | 売掛金があり、入金前に支払いが来る場合 | 手数料がかかる。受取額、契約条件、入金時期を確認する |
融資が向いているケース
設備投資、仕入れ拡大、数か月以上続く運転資金など、まとまった資金を中長期で確保したい場合は、融資を先に検討した方がよいでしょう。
返済は必要ですが、資金使途と返済計画を説明できれば、資金繰りを継続的に安定させる選択肢になります。
融資の相談では、資金繰り表だけでは足りません。試算表、借入状況、資金使途、返済原資を説明できる資料も求められます。
セーフティネット保証5号が向いているケース
セーフティネット保証5号は、指定業種に属し、売上高などの認定要件を満たす可能性があり、金融機関から借入を行いたい場合に検討します。
保証5号は、原油高対策の給付金ではありません。信用保証協会の保証を利用し、金融機関への融資申込みを進める制度です。
支払日が迫っている場合は、認定や融資手続きが終わるまでの資金を別に用意しなければならないこともあります。
そのため保証5号だけで間に合うのか、当面の不足額を別の方法で補う必要があるのかを、支払日から逆算して確認した方がよいでしょう。
ファクタリングが向いているケース
取引先に対する売掛金があり、その入金日より前に仕入代や外注費などの支払いが来る場合は、ファクタリングで売掛金を早めに資金化する方法があります。
ファクタリングは融資ではありません。売掛金を譲渡して、入金日前に資金を受け取る取引です。
ただし売掛金があれば必ず利用できるわけではありません。
売掛先の信用状況、請求書、通帳、契約書、過去の入金履歴、契約条件などによって、利用できるかどうかや受取額は変わります。
支払日までに時間がない場合は、必要書類と入金条件を早めに確認した方がよいでしょう。
ファクタリングを検討するときの注意点
原油高や中東情勢の影響で支払いが迫っていると、入金の早さだけを見てファクタリング会社を選びたくなるかもしれません。
しかしファクタリングは、手数料を差し引いた後の受取額、契約条件、売掛先への通知、入金後の流れまで見ておく必要があります。条件を見ずに契約すると、翌月以降の資金繰りがさらに苦しくなることもあります。
手数料を引いた後の受取額を見る
ファクタリングでは、請求書の金額がそのまま入金されるわけではありません。
手数料や追加費用が差し引かれます。必要なのは「いくら調達したいか」ではなく、「手元にいくら残れば支払いに間に合うか」です。
たとえば100万円の売掛金を資金化しても、手数料を引いた後の受取額が支払予定額に届かなければ、資金不足は解消しません。
見積もりを見るときは、手数料率だけでなく、実際の受取額で比べた方がよいでしょう。
ファクタリングを装った違法貸付に注意する
金融庁は、ファクタリングを装った違法な貸付けや、高額な手数料による資金繰り悪化について注意喚起しています。
次のような条件がある場合は、契約前に慎重に確認してください。
- 売掛債権の金額に比べて受取額が著しく低い
- 売掛先から回収できない場合に、利用者が買い戻す契約になっている
- 実質的に借入と同じ返済義務が残る
- 契約書の内容を十分に説明しない
- 「審査なし」「誰でも通る」「必ず即日入金」と強くうたっている
早く資金を用意したい場面ほど、契約書の内容を急いで読み飛ばしがちです。
入金日だけでなく、手数料、償還請求権、売掛先への通知、追加費用の有無まで確認しておく必要があります。
相談前に用意したい資料
ファクタリングを相談する場合は、次の資料をそろえておくと話が進みやすくなります。
- 請求書
- 通帳
- 売掛先との契約書や発注書
- 納品書や検収書
- 過去の入金履歴
- 希望入金日
- 支払予定日と不足額
売掛金の入金前に支払いが迫っている場合は、必要額、入金予定日、支払予定日を整理したうえで相談すると、条件を比べやすくなります。
資金繰りが苦しいときの進め方
資金繰りが苦しいときは、資金調達の申込みだけを急ぐと、必要額や返済の目途を見誤る可能性があります。
給与や税金など事業継続に直結する支払いを先に並べ、不足額と不足日を出します。そのうえで、中長期の運転資金は融資、売掛金の入金前に発生する短期の不足はファクタリングなど、支払日までの時間に合わせて検討します。
支払いの優先順位を決める
まず給与、社会保険料、税金、主要な仕入先への支払い、借入返済などを支払日順に並べます。
次に、売掛金の入金予定日と金額を確認します。
取引先の支払い遅延が見込まれる売掛金を、予定どおり入る前提で資金繰り表に入れると、不足額を小さく見積もることになります。
不足額を「今月末まで」「翌月末まで」「3か月後まで」に分けると、どこまでを短期資金で補い、どこからを融資で補うかを決めやすくなります。
融資と短期資金を同時に進める
中長期の運転資金が必要な場合は、融資や保証付き融資の準備を始めます。
資金繰り表、試算表、借入状況、資金使途をそろえ、返済原資を説明できる状態にします。
支払日までに時間がなく、入金予定の売掛金がある場合は、ファクタリングの見積もりも取ります。
このときは、調達希望額ではなく、手数料を引いた後の受取額が不足額を満たすかどうかで比べます。
資金調達後に価格転嫁や支払条件を見直す
資金調達は、支払日を乗り切るための手段の1つです。
燃料費、物流費、原材料費の上昇で利益が圧迫され続ける場合は、資金を入れても同じ不足が繰り返されます。
取引先との価格改定の交渉、支払条件の見直し、回収条件の見直し、在庫や仕入れ量の調整、固定費の見直しも進めます。
資金繰り表を毎月更新すると、入金サイトと支払いサイトのズレが縮んでいるかを確認できます。
中東情勢・原油高による資金繰りでよくある質問
中東情勢や原油高による資金繰り悪化では、「どの制度を使えるのか」「融資とファクタリングのどちらを選ぶべきか」「支払いが迫っているときに何から進めるべきか」といった疑問が出てきます。ここでは、中小企業や個人事業主が迷いやすい点に絞って回答します。
原油高で資金繰りが苦しい場合、最初に何をすればよいですか?
まず資金繰り表で、不足する日と金額を出します。
燃料費、原材料費、外注費、家賃、給与、税金、借入返済を支払日順に並べ、売掛金の入金予定日と照らし合わせます。
不足額がわかってから、融資、保証付き融資、ファクタリングなどを検討した方がよいでしょう。
セーフティネット保証5号は原油高だけで使えますか?
原油高の影響を受けていても、必ず使えるわけではありません。
指定業種に該当するか、市区町村の認定を受けられるか、金融機関や信用保証協会の手続きを進められるかが関係します。
保証5号は現金給付ではなく、保証付き融資を進めるための制度です。
支払日が近い場合は融資とファクタリングのどちらがよいですか?
支払日までの時間で変わります。
数か月以上の運転資金が必要な場合は、融資や保証付き融資を検討します。
一方で、売掛金の入金前に支払いが迫っている場合は、ファクタリングで受け取れる金額と入金時期を確認する方法もあります。
ファクタリングを使えば必ず資金調達できますか?
必ず資金調達できるわけではありません。
売掛先の信用状況、請求書、通帳、契約書、過去の入金履歴などによって、利用できるかどうかや受取額は変わります。
相談前に、売掛金の内容と支払予定日を整理しておくとよいでしょう。
資金調達後も資金繰りが苦しい場合はどうすればよいですか?
燃料費や原材料費の上昇が続く場合は、資金調達だけでは同じ不足が繰り返される可能性があります。
価格改定、支払条件の見直し、回収条件の見直し、固定費の見直しも必要です。
資金繰り表を毎月更新し、不足が出る時期を早めに把握しておくと、次の対応が遅れにくくなります。
まとめ
中東情勢や原油高による資金繰り悪化は、売上減少だけでなく、コスト増と入出金サイトのズレでも起こります。資金が足りなくなってから慌てて手段を探すのではなく、資金繰り表で不足する日と金額を先に出すことが出発点です。そのうえで、融資、セーフティネット保証5号、ファクタリングを支払日と入金予定に合わせて検討した方がよいでしょう。
数か月以上の運転資金が必要な場合は、融資やセーフティネット貸付を検討します。
指定業種に該当し、保証付き融資を進めたい場合は、セーフティネット保証5号を確認します。
売掛金の入金前に支払いが迫っている場合は、ファクタリングも選択肢の1つとなるでしょう。
調達方法を選ぶ際は、借入額や調達希望額だけでなく、返済、手数料、受取額、入金時期、その後も不足が続くかどうかまで見ておく必要があります。
参考・出典
本記事は、中東情勢・原油価格上昇等に関する中小企業向け支援策、日本政策金融公庫の融資制度、中小企業庁のセーフティネット保証5号、金融庁のファクタリング注意喚起を確認したうえで作成しています。
制度の対象者、指定業種、貸付条件、金利、保証条件は変更される可能性があります。申込みを検討する際は、最新の公式情報と取引金融機関で確認する必要があります。
- 中東情勢等を踏まえた中小企業・小規模事業者向け支援について|中小企業庁
- 中東情勢等を踏まえた中小企業・小規模事業者向け支援について|中小企業庁
- 経営環境変化対応資金(セーフティネット貸付)|日本政策金融公庫
- セーフティネット保証制度(5号)|中小企業庁
- 中東情勢を踏まえた金融上の対応について|金融庁
- ファクタリングの利用に関する注意喚起|金融庁
- 高額な手数料によるファクタリングの利用に関する注意喚起|金融庁
著者・監修情報
株式会社インターテック
更新日
2026年8月12日
























