改正派遣法が施行されたことで、派遣社員の人たちはもちろん、派遣元である人材派遣会社にも大きな影響が出ていることをご存知でしょうか?新しく制定された改正派遣法では、派遣元の人材派遣会社の資産状態によって、営業許可が下りなくなりました。

人材派遣会社の多くは、中小企業がメインとなって営業しています。派遣する立場なのに関わらず、その扱いは下請け、孫請けのような状態の派遣会社も多くあります。労働者を派遣して手数料を利益にしているため、派遣社員への給料が下がったり、派遣手数料の削減を求められたりした場合には、派遣会社の営業自体が出来なくなるというケースも発生しています。

今回は、人材派遣会社がファクタリングを利用することがどれだけメリットが大きいのかということについて解説していきます。キャッシュフローで悩む人材派遣会社は、ぜひご一読ください。

ファクタリングと人材派遣会社

ファクタリングと人材派遣会社の関係は、改正派遣法の施行から大きく変化しました。これまで、ファクタリングと人材派遣会社はあまり大きな関係を持っていませんでした。しかし、改正派遣法の「新基準」と「小規模派遣業の暫定措置」で、派遣会社の「売掛債権」が、経営そのものに影響することになり、ファクタリングが重要視されるようになりました。

改正派遣法で何が変わったのか?

改正派遣法では、派遣会社の「新基準」と「小規模派遣業の暫定措置」が制定されました。新しい基準は以下の通りです。

【新基準】

  1. 基準資産額が「2000万円×事業所数」以上であること
  2. 基準資産額が負債総額の7分の1以下であること
  3. 現預金額が「1500万円×事業所数」以上であること

【小規模派遣業の暫定措置】

小規模派遣業1=事業所の数が一つだけであり、常時雇用している派遣労働者の数が10名以下
  1. 基準資産額が1000万円以上であること
  2. 基準資産額が負債総額の7分の1以上であること
  3. 現預金金額が800万円以上であること
小規模派遣業2=事業所の数が一つだけであり、常時雇用している派遣労働者の数が5名以下
  1. 基準資産額が500万円以上であること
  2. 基準資産額が負債総額の7分の1以上であること
  3. 現預金金額が400万円以上であること

つまり簡単にまとめると「借金ができない(しづらい)」ということと、「預金額を減らせない」ということです。

ファクタリングは改正派遣法の急所をカバーできる

ファクタリングは売掛債権を債権支払い期日よりも前に資金化する金融工学です。融資と違い、借金にならないため中小企業の派遣会社の中では、キャッシュフロー改善のための金融手法として注目を集めています。

人材派遣業では、売上の多くが月末締めの売掛金として計上されます。長い場合では、翌月では2カ月後、3カ月後に入金されることもあり、設備投資や人件費に使われる経費は先払いで流動資産(預金など)から捻出することがほとんどです。

流動資産が足りないと、目の前にある大口の案件を引き受けることができずにビジネスチャンスをみすみす逃すことにもなってしまい、派遣会社の経営にも影響を与えてしまいます。

そして先ほどの新基準です。融資は負債ですから、会社の規模によっては派遣会社としての許可を取り消されてしまうことにもなってしまいますし、流動資産である預金額も営業許可のために今までのように使うことが出来ないということになります。

ファクタリングは、そういった改正派遣法によって使えなくなった流動資産や融資の替わりとなる「金策」です。ファクタリングは、金額や業者にもよりますが、最短で即日資金化できます。ビジネスチャンスを逃さず、負債にもならず、流動資産に手を着けなくてもいいというメリットは、まさに今の人材派遣会社にとって必要なことです。

ファクタリングの基本

ファクタリングとは、売掛債権を資金化する金融工学で、古くは15世紀のイギリスで行なわれたファクタリングが起源とされています。その後、ヨーロッパを中心に広がり、現在では、アメリカを含む経済大国では、手形取引よりもメジャーな金策の一つです。ファクタリングには、3社間ファクタリング、2社間ファクタリングの2種類があります。

3社間ファクタリング

ファクタリングには、人材派遣会社である売掛元、派遣先である売掛先、ファクタリングを行なうファクタリング業者の3社が関与します。3社間ファクタリングは、この3社が一堂に会して、ファクタリング契約を行なう取引の方法です。

売掛元には、売掛債権から、ファクタリング業者の取り分である「手数料」と「掛け目」を差し引いた分の売り上げが入金されます。売掛先である派遣先企業は、契約書に基づいた売掛債権の支払いをファクタリング業者に全額入金。そしてファクタリング業者は、売掛先の経営状況の審査を行ない、売掛債権の買取を決めます。

この3社がそれぞれの役割を果たして成立するのが、3社間ファクタリングです。3社間ファクタリングにおけるメリットとデメリットを見てみましょう。

3社間ファクタリングのメリット

3社間ファクタリングのメリットには以下のようなものがあります。

  • 資金化までのスピードが速い
    3社間ファクタリングは、銀行やノンバンクの融資、助成金などよりも圧倒的に資金化までのスピードが速いです。最短で即日資金化ができる業者も存在しています。一つ注意しなくてはならないのが、3社間(特に売掛先)のスケジュール調整が大変という点です。3社が一堂に会して打ち合わせや書類作成を行なうため、売掛先のスケジュール次第では資金化までのスピードが長くなるケースもあります。
  • 保証人などが不要
    ファクタリングは融資ではないため、保証人や担保が必要ありません。保証人や担保があるとファクタリングではなく、売掛債権担保融資になってしまいます。
  • 回収義務がない
    ファクタリング業者に売掛債権を譲渡すると、売掛債権の回収義務はファクタリング業者に移ります。そのため、もし万が一売掛先が倒産してしまっても、売掛金を回収するのは、ファクタリング業者の仕事であって、売掛元である企業にその義務は生じません。
  • 手数料が安い
    後ほど紹介しますが、3社間ファクタリングは2社間ファクタリングに比べると圧倒的に手数料が安いです。それは、債権譲渡登記の有無です。債権譲渡登記を行なうと、貸し倒れのリスクは2社間ファクタリングよりも軽減されるため、その分手数料も割安になります。相場では2社間が10%~30%の手数料に対し、3社間は5%~10%という手数料になります。

3社間ファクタリングのデメリット

3社間ファクタリングのデメリットは以下です。

  • 売掛先との関係の悪化
    3社間ファクタリングのデメリットとして一番に上がるのが、売掛先とのファクタリング後の関係悪化です。売掛債権は、企業間の信頼によって成り立つ取引方法です。そのため、自社の経営状況の悪化を防ぐために売掛債権を第3者であるファクタリング業者に買い取ってもらうことで、心証が悪化ししてしまうということにもなりかねません。

2社間ファクタリング

2社間ファクタリングは、派遣会社である売掛元と、ファクタリングを行なうファクタリング業者の間で行なわれる取引です。債権譲渡登記が行なわれないケースがほとんどで、その場合には売掛債権の譲渡という事実を売掛先に通知する必要が無いというルールがあります。

2社間ファクタリングのメリットとデメリットについて見てみましょう。

2社間ファクタリングのメリット

2社間ファクタリングのメリットは以下です。

  • 資金化までのスピードは3社間よりも早い
    3社間でも触れましたが、売掛先の企業が打ち合わせのテーブルにつく必要が無いため、最短で即日資金化が可能です。
  • 信用情報に影響しない
    3社間のデメリットでもある企業間の信頼を損ねることもありません。また、融資ではないため、改正派遣法の新基準である「負債」にもなりません。

2社間ファクタリングのデメリット

2社間ファクタリングのデメリットは以下です。

  • 手数料が高い
    3社間のメリットでも述べましたが、2社間ファクタリングの場合は、3社間に比べてリスクが高いです。売掛債権の支払いがされたときに、ファクタリング業者に債権売上を送金するのは、売掛先ではなく売掛元になります。この時に、売掛先から支払われたお金を、他の事に使用したり、また売掛先の経営悪化によって債権売上が入金されなかったりといった場合には、貸し倒れになってしまうため、リスク軽減のためにも手数料が割高になってしまいます。
  • 債権譲渡登記が必要になる場合がある
    ファクタリングの金額によっては債権譲渡登記が必要になる場合もあります。債権譲渡登記を行なうと、売掛先へ通知がされてしまうため、2社間ファクタリングのメリットである企業間の信頼が損なわれることもあります。また、登記にはファクタリング業者ではなく役所に支払う手数料が数万円発生するため、手数料以外のコストがかかってしまうというデメリットもあります。

人材派遣会社がファクタリングを活用するに至るケース

ここでは、ファクタリングを検討している人材派遣会社が、実際にファクタリング業者に売掛債権の買取を依頼したケースについて紹介していきます。

人件費の先払いが必要になった

人材派遣会社のメリットでもある、日払いや週払い制度。この制度が人材派遣会社のキャッシュフローを悪化させているのは、業界内では常識です。実際に入金されるのは、派遣先の締日から半月後か1カ月後というケースがほとんど。

そのため、派遣労働者を多く抱える人材派遣業者ほど、先払いによるキャッシュフローの悪化に陥りやすくなります。ファクタリングを活用すれば、派遣先から支払われる派遣料を手早く資金化することができ、キャッシュフローの改善や、派遣労働者の週払い、日払いといった実質先払いに対応できるようになります。

派遣先の経営状況が悪化してしまった

派遣している会社の経営状況の悪化によって、支払いの遅延や、支払いがされないというケースです。ファクタリングは、売掛先の企業を審査してファクタリングを行ないます。ファクタリング依頼時の経営状況が悪化している場合には、ファクタリングを利用することが出来ませんが、その前であれば、ファクタリングは有効な手段です。

先ほども触れましたが、ファクタリングには償還請求権がありません。そのため、もし万が一売掛先が倒産してしまっても、その損は売掛元である人材派遣会社ではなく、ファクタリング業者が被ることになります。回収の義務なども全てファクタリング業者が行うため、売掛元であるファクタリング申し込み者は、自分の会社の業務に集中できるというメリットがあります。

派遣社員のトラブル

派遣社員が派遣先で起こしたトラブルによって、急な出費が発生した場合にも有効です。派遣先の備品を壊してしまったり、派遣先の顧客とトラブルになったりした場合には、損害補償の支払いが発生します。そのような急な出費に対応するために、ファクタリングを利用するという人材派遣会社もあります。

キャッシュフローの不足

先ほども触れましたが、人材派遣会社は、登録する労働者が集まらなければ利益になりません。しかし、賃金が安いと人材は集まりませんし、売上にもなりません。人件費を上げて人材募集をかけることで人は集まるかも知れませんが、キャッシュフローは悪化しているという負のスパイラルに陥っているのが人材派遣業界です。

ファクタリングで売掛債権を早期資金化できれば、融資と違って負債ではないため、キャッシュフローの改善にもつながります。

同業他社から人材を割り振ってもらなければならない場合

仕事を確保しても、人材不足によって仕事ができないという場合には、他の同業他社から人材を派遣してもらうという二重派遣が起こってしまいます。労働者と、ライバル社に支払う経費が発生してしまい、自社に利益が残らないというケースです。

ファクタリングを行なうことで、適正な人数を確保すれば、二重派遣が起こる可能性も低くなりますし、売上と利益も確保することが出来ます。

ファクタリングこそ今の人材派遣会社に必要な最適の一手

ファクタリングと人材派遣会社の関係性について解説してきました。

改正派遣法により、中小規模の派遣会社が淘汰される可能性もあります。ファクタリングはそんな派遣会社を救う最適の一手ではないでしょうか?

黒字倒産やキャッシュフローの悪化を招く前に、ぜひ一度ファクタリングを検討することをおすすめします。