ファクタリングで登記はされる?基本はされないが契約違反が発生したときには可能性あり

ファクタリング会社と取引をしている中で、登記というキーワードが出てくることがあります。登記といえば土地や建物に関係する手続きであり、ファクタリングにどのような関係があるのか疑問を抱きます。

登記はファクタリングにおいても需要な手続きであり、登記を行うことで、二重譲渡を防ぎ、権利を主張ができるのです。

ここではファクタリングにおける登記について、その役割やメリット、デメリットなどについて詳しく解説していきます。

ただしなのですが、基本的に登記を行なうファクタリング会社は非常に少ないと思います。もし登記を行なうとしたら、契約違反を行なったとき、もしくはその疑いがあるときです。

ファクタリングにおける「登記」とは?

法的に認められた債権や土地、建物の状況や法人などの権利を国の機関である法務局に届出し、記録することを登記といいます。登記をすれば、法律的にその債権や不動産の権利を主張することができ、取引の安全が図れます。

ファクタリング契約での登記とは、債権譲渡登記を指しています。ファクタリング利用者が保有する売掛債権を、ファクタリング会社へ譲渡することを公示して債権の所有者を明確にします。

売掛債権の登記の仕方

売掛債権の登記は、東京法務局で手続きを行います。債権譲渡登記は、東京法務局のみで取扱をしています。窓口申請の他、郵送での受付も可能ですが、郵送の場合は、1週間ほど時間が掛かってしまうため、緊急に資金が必要になった場合は、債権譲渡登記有りのファクタリング契約は不向きといえます。

申請の仕方は、必要な書類を全てそろえて東京法務局へ提出をします。書類不備がなければそのまま受理され、債権譲渡登記が完了します。債権譲渡登記が認められると次の項目が登記されます。

  • 登記の日付
  • 登記の原因
  • 存続期間
  • 譲渡人情報(法人名や住所など)
  • 譲受人情報(法人名や住所など)
  • 譲渡債権額

登記をするメリットとデメリット

ファクタリングの登記がもたらすメリット、デメリットには主に次のようなものが挙げられます。

登記をするメリット

登記をすれば利用できるファクタリング会社の選択肢が広がります。ファクタリング会社は、債権譲渡登記をしてもらうことで売掛債権の保有権を確保しています。

債権譲渡登記が不要なファクタリング会社も中にはありますが、かなり少ないため、ファクタリング会社の選択肢が限られてしまうのです。

登記をするデメリット

登記をすると、登記所や登記情報サービスの閲覧が可能です。誰でも、登記情報を知ることができます。

3社間ファクタリングでは売掛先の承諾がなければファクタリングができないため、売掛先に売掛債権の売却は知られてしまいますが、2社間ファクタリングは、売掛先に知られずに債権を譲渡できるというメリットがあります。

せっかく2社間ファクタリングを利用しても、登記をすることで、売掛先に売掛債権を譲渡したことを知られてしまう恐れがあるのです。

「登記」がもたらす役割とは?

それでは、債権譲渡登記を行うことがファクタリングにどのような役割を担うのか解説していきます。

二重譲渡などの不正を防止する

ファクタリング会社が懸念しているものとして挙げられるのが、二重譲渡によるトラブルです。

例えば、

利用者が、ファクタリング会社A社にファクタリングをして資金調達を受けた後、同じ売掛債権を使って、他のファクタリング会社B社でもファクタリングによる資金調達を受けました。

ファクタリング手数料が両社とも10%であれば、A社で90万円、B社で90万円の合計180万円をち調達できることになります。100万円の債権で、180万円を得ることができてしまうのです。

このような取引「二重譲渡」といいます。二重譲渡は、詐欺行為にあたるので絶対にしてはいけないことです。ファクタリング会社が二重譲渡に巻き込まれてしまった時には、登記という公的な証明がないと「どちらが優先的な権利があるのか?」を裁判で争わなければならなくなってしまうのです。

日付の早い債権譲渡登記のあるファクタリング会社が優先と判断されます。二重譲渡をした利用者は詐欺罪などで罰せられてしまうため、絶対に二重譲渡にならないようにファクタリング会社を利用してください。

債権回収不能などのリスク回避

2社間ファクタリングの場合、利用者は回収した売掛金をファクタリング会社に引き渡さなければなりません。しかし、売掛金を 利用者が使い込んでしまったら、ファクタリング会社は債権回収不能になってしまいます。

このような場合、裁判所に訴え債権執行手続である差し押え手続きを行わなくてはなりません。このとき、登記を行なっていれば、地方裁判所や簡易裁判所に対する申請の際、売掛債権譲渡の事実や、権利者がファクタリング会社であることを明確に伝えることができるのです。

登記申請の流れと注意点

登記申請を行う際の流れと注意すべき点を抑えておくことで、スムーズな資金調達が可能です。

登記に必要な書類・申請までに要する時間

先ほども述べましたが、債権譲渡登記の申請は東京法務局のみの取り扱いとなります。直接申請に行き、不備が無ければ即日登記は完了しますが、郵送の場合、1週間程度の時間が掛かります。

郵送の場合、不備があれば、書類を送り返す時間や再度、郵送する時間など無駄な時間がかかってしまうため特に注意が必要です。

書類は以下のものを用意します。

  • 申請書(または委任状)
  • ファクタリング会社・利用者双方の実印を捺印
  • 印鑑証明書

全てがそろった上で書類不備がなければ、登記が完了します。

登記申請時の注意点

債権譲渡登記申請をした際の注意点として、金融機関に融資を申し込むことがある場合、審査時点で債権譲渡登記を確認されることがあります。

債権譲渡登記をしていると、ファクタリング取引を融資だと受け取られてしまう可能性があるのです。これが、融資の審査に悪影響を及ぼす可能性があるため注意が必要です。

融資を申し込む予定があるならファクタリングの決済後に登記を抹消しておきましょう。

登記をすることでファクタリング会社も安心してファクタリングできる

ファクタリングの本質は、売掛先から債権譲渡の承諾を得て売掛債権譲渡の取引を完了させることにあります。しかし、信用取引を重んじる日本では、売掛先に知られるとマイナスのイメージがついてしまい、今後の事業継続に支障がでてしまう恐れがあるのです。

登記をすることで利用者は、二重譲渡をしていないという証ができ、ファクタリング会社の信用を得られます。ファクタリング会社も債権譲渡登記をした売掛債権であれば、スムーズに取引に応じてくれます。その結果、両者にとって安心したファクタリングが行なえるのです。