資金調達には「借りる=借金」や「売る=資産売却」以外にも「もらう」という方法があります。

もらう資金調達で重要なのが「どこからor誰からもらうのか」という点です。従業員からもらう資金調達方法もありますし、社外の第三者からもらう方法もあります。

主な9つのもらう資金調達方法は以下です。

  1. 第三者割当増資
  2. ベンチャーキャピタル(VC)
  3. エンジェル投資家
  4. 新株予約権(ストックオプション)
  5. 従業員持株会
  6. 中小企業ファンド
  7. クラウドファンディング
  8. 事業譲渡・M&A
  9. IPO(株式公開・上場)

それぞれの資金調達方法と利用する場合の注意点についてお話しします。

【もらう】資金調達方法9選

資金調達には「借りる=借金」や「売る=資産売却」以外にも「もらう」という方法があります。

もらう資金調達の代表格としては国からもらえる「補助金」や「助成金」が挙げられます。補助金や助成金は事前に支払いが必要だったり、交付対象の事業者であったりすることが条件です。

ここで紹介する9つの「もらう資金調達方法」は補助金や助成金以外の方法になります。それぞれを詳しくご紹介します。

  1. 第三者割当増資
  2. ベンチャーキャピタル(VC)
  3. エンジェル投資家
  4. 新株予約権(ストックオプション)
  5. 従業員持株会
  6. 中小企業ファンド
  7. クラウドファンディング
  8. 事業譲渡・M&A
  9. IPO(株式公開・上場)

第三者割当増資

第三者割当増資とは、特定の第三者に株式を有償で引き受けてもらうことで資金を得る方法のことです。

新しい株式を発行して資金調達を行う「新株発行増資」という手法の1つでもあります。

上場企業が第三者割当増資を行う場合、資金調達目的というよりも株式を引き受けてもらう相手との関係強化目的で行われることが多いです。株主総会を開かずとも取締役会の議決で実施できる資金調達方法であるため、中小企業をはじめとした法人格の事業者には比較的利用しやすい「もらう資金調達方法」と言えるでしょう。

ベンチャーキャピタル(VC)

ベンチャーキャピタルとは高額なリターン目的で投資を行う投資会社のことです。

未上場企業に対して投資をすることが多いです。優れた技術やサービスがあるのにかかわらず、資金がないために事業を拡大できないという場合にはピッタリの資金調達方法と言えるでしょう。

しかし、ベンチャーキャピタルに出資してもらうためには相応の準備が必要です。日本国内のベンチャーキャピタルには証券系や都市銀行系、保険系などさまざまなタイプの会社があります。自分の事業、業界に強いベンチャーキャピタルに出資を依頼することで、より出資してもらいやすくなるかも知れません。

エンジェル投資家

創業から間もない事業者に対して投資を行う個人投資家のことを「エンジェル投資家」と呼びます。

主な投資対象になっている事業としては信託や有限責任会社、投資ファンドの他、ヘルスケア・医療機器関連事業者、ソフトウェア・バイオテクノロジーといった21世紀に必要不可欠となる会社が多いのも特徴です。

新株予約権(ストックオプション)

新株発行増資の一種で、まだ発行されていない新株を事前に予約して購入できる権利を「新株予約権」と言います。

新株予約権を資金調達の方法として使います。株主総会の特別決議が必要になるため、簡単に資金調達できる方法とは言えないのがネックです。

従業員持株会

事業に従事している従業員が自社株の取得を容易にして、財産形成を助成する制度が従業員持株会です。

多くの会社では従業員持株会を通して取得した資金に対して10%程度の奨励金を付与しています。

銀行の定期預金の金利が1%未満ということを踏まえると、かなりの高利回りが期待できるというメリットがあります。従業員の資産形成をしながら事業の資金調達も同時に行う方法として利用されているのが特徴です。

中小企業ファンド

民間の中小企業が共同で設立した投資会社が中小企業ファンドです。上場企業でなくとも投資対象であることがメリットです。

業界や地方など、いくつかのグループになっているため、自分の事業所の住所地や業界新聞などから調べてみるとよいでしょう。

クラウドファンディング

クラウドファンディングは、不特定多数の人から少額~高額の投資をしてもらえる資金調達方法です。

インターネット経由で行われることが多く、ソーシャルファンディングやクラファンという呼ばれ方もしています。

日本では購入型や寄付型、投資型と3つのタイプのクラウドファンディングがあります。それぞれに実施方法が異なるため、はじめてクラウドファンディングを行う場合には、専門のコンサルティングを活用する事業者も多いです。

クラウドファンディングの特徴としては、事業所に投資してもらうのではなく、サービスや商品といった事業のプロダクトに投資してもらうために行うことが挙げられます。もちろん事業所に投資してもらうクラウドファンディングも存在しますが、目標とする金額が集まりにくい可能性もあります。

事前に専門家に相談してから行う資金調達方法と言えるでしょう。

事業譲渡・M&A

事業譲渡・M&Aとは、事業所が持っている部門を個別に譲渡して資金を得る方法です。

譲渡して資金をもらうという意味では「もらう資金調達」とも言えますが、性質的には「売る資金調達」にも近いでしょう。

譲渡したい事業者と譲渡されたい事業者を結ぶマッチングが重要になります。最近では事業譲渡・M&A専門のマッチング業者なども増えています。事業譲渡・M&Aを利用して資金調達をするのであれば、マッチング業者に相談してみるとよいでしょう。

IPO(株式公開・上場)

株式公開=IPOとは、株式会社が自社から発行した株式を自由に譲渡できる状態にすることです。

株式上場とも言われています。IPOで株式を売る場合、基本的に抽選方式で売り先が決まります。値段も変動しやすいため、国内外の個人投資家やファンド会社から注目を集めやすく、資金を調達しやすい状況になるのです。

上場することで資金が得られるというメリットがある反面、市場では厳しく評価される立場になるというデメリットもあります。売上げや利益、会社のスキャンダルなども株価に影響するため、上場する場合には細心の注意が必要になるでしょう。

もらう資金調達方法を利用する場合の注意点

もらう資金調達方法を利用する場合、注意点として次の2つが挙げられます。

  • 法人格のみが利用できる方法が多い
  • 素人知識で行うと逆に損失を生む可能性もある

どのような注意点なのかお話ししていきます。

法人格のみが利用できる方法が多い

ベンチャーキャピタルやエンジェル投資家からの「もらう資金調達」方法は、法人格のみが利用できるものが多いです。

なぜかというと、法人格ではない個人事業主の場合、投資をしてもリターンを得られない可能性が高いからです。

個人事業主として「もらう資金調達」を行うのであれば、クラウドファンディングや法人成りしてからの中小企業ファンドなどを利用するとよいでしょう。

素人知識で行うと逆に損失を生む可能性もある

どの方法でも素人知識で行った場合、逆に損失が発生する可能性もあります。

クラウドファンディングのような不特定多数の投資家からもらう資金調達の場合、リターンとして商品やサービスをバックしなくてはなりません。他にもさまざまな業務が発生します。

素人知識でクラウドファンディングを実施するよりも、専門家であるクラウドファンディングコンサルなどに依頼をして資金調達を行うとよいでしょう。

クラウドファンディングだけではありません。第三者割当増資や新株予約権なども素人知識で行うのは避けた方がよいでしょう。事前に専門家に相談の上で行うことをオススメします。

もらう資金調達方法は専門家に相談しながら進めるとスムーズ

どの資金調達方法でも同じことが言えますが、専門家に相談しながら資金調達を進めることをオススメします。

資金調達にはもらう以外にも借りる方法や売る方法などさまざまな手法があります。

どの方法でも素人知識で行うことで、将来的に事業の財務状況を悪化させる原因になる可能性もあるのです。

税理士や会計士、コンサルタントのような資金調達の専門家に相談しながら、自分の事業に適した資金調達方法を模索してくとよいでしょう。

資金調達方法を覚えておけば資金繰りに悩まなくなる!

資金調達の方法はなにも銀行融資やビジネスローンといった「借りる=借金」だけではありません。借金は返すときが一番負担になります。借金を増やすことで事業の生産性を無理に引き上げたとしても長続きしない可能性が高くなるでしょう。

運転資金調達は将来の負担度合いを考えながら、色々な手法を検討し、自分の事業規模や財務状況に合った方法を選択するとよいでしょう。