売掛と掛売という言葉は「商品やサービスを提供した際に、後日支払いを行うこと」を意味しています。

しかし、同じ意味を持つ言葉として一括りにされてはいるものの、ビジネスにおいては使い方が少し異なります。「売掛」「掛売」の言葉の違いを理解しておくと、混乱することなくスムーズな取引ができるでしょう。

両者の違いを理解しやすくするためには、他の4つの取引方法も頭に入れておくことが大切です。売掛と掛売以外の取引方法を知っておくことも、有利な交渉には強い味方になるでしょう。

4つの取引方法には以下のものが挙げられます。

  • 現金決済
  • 前払い
  • クレジットカードによる支払い
  • デビットカードによる支払い

これらの取引方法は、日常生活でも行っている馴染みのあるものでしょう。

これらの言葉の意味や、売り手と買い手が誰になるのかを正しく理解しておく必要があります。その理解が、売掛と掛売の違いを明確にする最善の近道にもなるでしょう。

それではまず、4つの取引方法について詳しく説明していきたいと思います。

売掛と掛売の違いがわかりやすくなる4つの取引方法

売掛と掛売という言葉は「商品やサービスを提供した際に、後日支払いを行うこと」を意味しています。ビジネスにおいて、売掛と掛売の他に取引を行う方法が4つあります。売掛と掛売の違いを理解するためにも、事前知識として4つの取引方法を把握しておきましょう。

  • 現金決済
  • 前払い
  • クレジットカード決済
  • デビットカード決済

現金決済

現金決済は、文字通り現金での支払いを行う方法です。ビジネスの場だけではなく、一般的に行われる買い物でも現金決済は昔から行われています。現在では、ポイント払いやクーポンなどに併用して、現金で残高分を支払うという場面も多くなっています。

その場で現金が手に入るのは売り手としては嬉しい取引方法です。「現金」という確かなものを手にできるため、安心感もあります。

ただ、スマホ1つでできるスマホ決済も増えているため、現金払いのみでの対応をしている店舗はほとんどないといえるでしょう。

前払い

前払いは、商品やサービスを受ける前に、クレジットカードや現金で代金を支払う取引方法です。

主に、建設業や製造業などが前払いで取引を行っています。ホテルなどの宿泊業では予約時に前払いをし、宿泊後に追加の商品やサービスを後払いすることもあります。

クレジットカード決済

クレジットカード決済も売掛の一種です。

ただしクレジットカード会社を経由して入金され、取り扱い手数料が引かれるため通常の売掛とは若干の違いがあります。実質的な意味では売掛はクレジットカードのように後から支払われるもの、と覚えておくとよいでしょう。

クレジット決済の場合は、クレジットカード会社が取引先との間に入って売上を回収してくれるため、未回収の心配がないというメリットがあります。

未回収防止策としてクレジットカードでの取引を行うのも1つの手段です。

デビットカード決済

デビットカード決済は、クレジットカード決済と同様にカードを仕様した決済方法です。

しかし売掛・掛売と同類の取引にはなりません。

デビッドカードは、銀行口座の残高から直接支払われる機能です。よって、クレジットカード決済よりも現金支払いに近いシステムといえます。

お財布から現金を出して支払うように、口座残高からデビットカードを通して支払っているとイメージすればわかりやすいでしょう。

これらの4つの取引方法をおさらいした上で、売掛と掛売の違いを詳しくお話していきます。

売掛と掛売の言葉の意味と違い

売掛と掛売は「後で支払う」という意味を持っており、先ほど解説したクレジットカード決済に似た構造といえます。両者の言葉の意味は共通していますが、商習慣ではそれぞれが異なるニュアンスで捉えられていることが多いのです。

たとえば、まだ支払われていない状態を「売掛」と呼んでいたり、後で支払うことを「掛売」と呼んでいたりしています。どちらも同じことを言っているのですが、シーンによって以下のような使い分けが行われています。

  • 売掛=勘定科目の専門用語
  • 掛売=取引方法の名称

では、それぞれの言葉の意味や使い方について詳しくお話していきましょう。

売掛は勘定科目として使われる言葉

先ほどのクレジットカード決済の説明で「売掛の一種」と表現していたのは、勘定科目としての視点で見ていたからです。

そもそも売掛は、簿記や会計における「勘定科目」の名称です。会計において分類項目の総称としての意味を持っています。

「売掛金」という言葉で表現されることもありますが、これは「取引先から受け取るお金(代金)」という意味を持っています。また、場合によっては「後日支払われるお金をもらう権利」という意味で用いられることもあるでしょう。

掛売は取引方法として使われる言葉

掛売は取引方法をあらわすときに用いられ、売る側から見たときの表現です。買う側にとっては「掛け買い」になります。商品やサービスを先に提供し、代金を後払いする取引方法で「掛取引」ともいわれています。

掛売に当てはまるのは、以下のようなものです。

  • クレジットカード決済
  • 請求書を送り、後日支払いが行われる
  • ツケ払い

居酒屋で「ツケ払い」という言葉がありますが、これも掛売の1つです。

ツケ払いはまとめて支払うシステムで、翌月に引き落とされるクレジット決済よりも、支払い期限に猶予があるのが特徴です。

数ヶ月後にまとめて支払う場合などは、ツケ払いという掛取引ということになります。日本の商取引において現金取引はほとんど行われないため、掛売が常識とされています。

売掛と掛売で間違いやすい言葉にも注意

売掛と掛売に関する言葉には、似ている言葉や同じような取引方法が多くあります。そのため、混同してしまわないように注意が必要です。

同じような意味で、間違えやすい言葉を3つ覚えておきましょう。

  • 買掛金
  • 未収金
  • 前受金

「買掛金」とは支払う義務のあるお金という意味

売掛に似ている言葉として「買掛」があります。同じような意味に感じて混同してしまうかもしれません。売る側と買う側という立場に注目してみるとわかりやすくなります。

「売掛=売る側(受け取る側)」であり「買掛=買う側(支払う側)」

になります。

よって、買掛は商品やサービスの代金を後日「支払う義務」のことを指します。売掛で、取引先から受け取るお金を「売掛金」と呼んでいたように、支払う義務を「買掛金」と表現しているのです。

「未収金」「未収入金」とも呼ばれる債権

「未収金」とは営業以外で発生した取引による債権をいいます。「未収入金」とも呼ばれています。漢字の意味を考えると「まだ入ってこないお金」と解釈できるため、売掛金と同じようなニュアンスで捉えてしまうこともあるでしょう。

しかしながら、未収金は売掛金とはまったくの別物です。たとえば、営業以外で発生する取引として、事業者が保有している株式を売却したとしましょう。その場合に「未収金」として計上されます。

この「未収」という言葉が付く勘定科目は他にもあり「未収収益」は、継続した債権の発生を表します。継続した債権とは、定期預金の受取利息や不動産の賃料などです。

また建設業者の場合は、「完成工事未収入金」という用語もあります。

完成工事高に計上した工場にかかわる請負代金のうち、まだ代金を受け取っていない未回収の状態の代金がある場合に分類します。「完成工事未収入金」においては、一般的な取引では「売掛金」と同じ意味です。

「前受金」は前払いされた代金を意味する

前受金は、商品やサービスの提供前に支払われる代金のことをいいます。前払いと同じ意味なのですが、売る側から見ているため「前受金」です。

前受金は、代金の一部だけ前払いを受けた場合でも当てはまります。また、商品やサービスを提供した後は「売上」として計上します。

「前受金」「売掛金」との違いは、お金を受け取るタイミングです。

売掛金はすでに商品やサービスを提供した上で、その後に受け取る権利です。商品やサービスを提供している前か後かで勘定項目が変わってきます。

売掛と掛売は取引方法や関連ワードを覚えておくと交渉に有利

同じ意味で使われる売掛と掛売ですが、ビジネスでは違ったニュアンスで使われることもあります。

似ている意味や言葉の勘定科目も多くあるため、売掛の定義をしっかりと覚えておきましょう。売掛と掛売以外の取引方法を把握し、関連ワードの意味を理解しておくことで取引先との交渉にも有利になる可能性が高くなります。