会社での財務の基本となる会計処理。ファクタリングを始めたばかりの頃は勘定科目に頭を悩ませます。また、経理職員、会計士、税理士など処理をする人によっても処理に使う科目が違う事はよくある話です。
勘定科目がなぜ譲渡損という科目で処理をされるのか。ファクタリング会社を利用した仕訳は通常の売掛金とは少し違います。さらに税法上の注意にも目を向ける必要があるのです。
ファクタリングの会計処理はどうすればいいの?
ファクタリングは売掛債権を譲渡した資金調達法です。資金調達というと銀行などの融資などが一般には浸透しています。銀行融資は長期借入という勘定科目です。となると、ファクタリングは一体どの勘定科目で処理されるのか。また手数料はどうすればいいのか戸惑います。
ファクタリングの場合、借入とは根本的に違う勘定科目で処理されるのです。
融資の手数料とファクタリングの手数料は勘定科目が異なる
融資の場合、手数料だけではなく、利息も発生します。その場合、帳簿上は支払い利息として計上されます。しかし、ファクタリングは譲渡になるため、勘定科目も違ってきます。
ファクタリング会社へ支払う手数料などには様々な費用があります。
- ファクタリングへの登録費用
- 書類作成に必要な印紙代
- 紹介料
- 登記代行手数料
- ファクタリング会社の儲け
全てが同じ費用感ではありませんが、運営に必要な費用が差し引かれて資金化されます。
通常待たなければいけない期間より早く現金になることが、ファクタリングの一番のウリなのです。その費用もおおよそ5%~30%くらいまで。取引方法によっても手数料が異なります。
売掛債権を譲渡するというファクタリングの性質上、分類される勘定科目が自ずと見えてきます。
譲渡損益で処理する
譲渡の場合は、支払手数料の勘定科目を使うよりは、譲渡損益と計上するのが一般的です。正式には、売上債権譲渡損という勘定科目を使用します。ファクタリングの場合は、この譲渡損益を使う事でファクタリング会社に支払う手数料を処理していきます。
譲渡損益とは何?
譲渡損益とは、価値が変動する資産に対して利用される勘定科目です。この勘定科目で処理された利益には税金がかかり、損失には税金が掛からないという特徴があります。
そのため、利益に転じれば確定申告に必要な数字となり、損失に転じれば確定申告が不要となるのです。ファクタリングの場合は、売掛債権を譲渡して、それにかかる手数料などについては譲渡損益として処理をします。
譲渡益はキャピタルゲイン
金融用語では譲渡益はキャピタルゲインとも言われます。価値が上下する土地や債権、金などが代表的な物ですが、元が10,000円のものが15,000円で引き取られた場合の利益5,000円がキャピタルゲインと呼ばれるものです。ファクタリングの場合、手数料を支払う為、基本的にはキャピタルゲインになることはありません。
譲渡損はキャピタルロス
次にキャピタルロスですが、プラスになるキャピタルゲインに対してマイナスになるのがキャピタルロスと呼ばれています。元が10,000円のものが5,000円で引き取られた場合の損失5,000円がキャピタルロスとなります。
ファクタリングの場合、手数料などが売掛債権の数字から引かれて資金化されます。元々売掛債権にあった数字から差し引くので、キャピタルロスが発生します。ファクタリングで行う会計処理では、譲渡損になるのです。
譲渡損益以外で発生する会計処理はある?
ファクタリングを利用する際、もちろん譲渡損益だけでは仕訳は出来ません。会計処理をするためには多くの勘定科目が必要です。
例として、手数料が10%。500万円のファクタリングを利用するとします。
ファクタリング契約時
契約時点では資金化していないので未収金として仕訳します。
未収金 500万円 / 売掛金 500万円
ファクタリングされ入金された場合
手数料が引かれ資金化されています。
普通預金 450万円 / 未収金 450万円
売上債権売却損 50万 / 未収金 50万
ファクタリング契約と入金が同時に起こる場合
契約と入金が別のもとのは仕訳が違います。
通常の売掛金処理と似ていますが、支払手数料ではないので注意が必要です。
普通預金 450万円 / 売掛金 450万円
売上債権売却損 50万円 / 売掛金 50万円
ファクタリング会社の契約状況によって微妙に仕訳が変化します。一般的な売掛金処理と似ている部分もあります。
見落としがちなのが消費税
会社経営をしているなら、切っても切れないのが消費税です。ファクタリングの場合、消費税の扱いにも違いがあります。
ファクタリングは、売掛債権を譲渡する行為として法律上あたります。売上債権売却損に分類される手数料などは消費税が掛からない金額となります。
ですが、ファクタリング会社から売掛債権と引き換えにした資金に関しては、課税対象となるので注意が必要です。
課税先が異なる消費税の計上方法に要注意
ファクタリング会社を利用するに当たっては、消費税の計上方法にも気を付けなければいけません。
仮に200万円の商品が売掛金になったとします。その売掛金をファクタリングすると、次のフローとなります。
- 200万円分の商品を納入(200万円分課税処理)
- その後売掛債権になる
- ファクタリング会社と契約、ファクタリング手数料10%(20万円分非課税)
- ファクタリング会社より20万円を差し引いた180万円分
ここで、かかってくる消費税は、納入時にかかる200万円分に対しての消費税16万円とファクタリング会社を通した資金180万円分に対して課税される14万4千円があります。
ファクタリングの場合、消費税の仕訳は仮払い消費税の勘定科目を使用します。
売掛金 16万円 / 仮払消費税 16万円
現金 14万4千円 / 仮払消費税 14万4千円
消費税で2つの仕訳が発生するので、ファクタリング会社を利用する際には覚える必要があります。
正しい計上処理で決算書をキレイに!
売掛債権を手軽に多くの日数を待たずに資本化できるファクタリング。便利な部分もありますが、会計処理では少し面倒な部分もありました。特に消費税に関しては忘れてしまうと脱税と疑いを掛けられてしまうので注意しておきたいポイントです。
ファクタリングを利用する場合、どんな仕訳になるのか予めイメージをし、取引が実際あった場合に慌てずに処理をしたいものです。正しい計上処理は、財務の透明化を計れます。決算書をキレイに作成するためには、ブレのない勘定科目で日々処理をして下さい。