解体工事業は、以前から中小企業のような下請け企業が、工事施工業者の名前を借りて行なっているのが通例でした。

平成28年6月から施行された建設業法改正で、これまで「とび・土木工事業」に含まれていた解体作業を分離させて、新たに「解体工事業」として別の業種が誕生しました。

平成28年6月1日以降に解体工事を行なうためには、この「解体工事業」の許可を得なければ、解体工事そのものが出来なくなってしまいました。施工から2年が経った現在では、解体工事を専門として扱う業者も徐々に増えてきていますが、業界全体の景気はあまりよくないようです。

今回は、そんな解体工事業の資金繰りを助けるファクタリングについて詳しく解説していきます。どうしてファクタリングが解体工事業の助けになるのか?そして解体工事業のファクタリングにはどんなメリットがあるかなどについても合わせて解説していきます。

解体工事業とファクタリングの相性の良さとは?

解体工事業とファクタリングの関係性を探る為には、ファクタリングそのものを理解しなくてはなりません。ファクタリングとは、売掛債権を売掛先ではなく、第三者であるファクタリング業者に買い取ってもらうことで資金を調達する方法です。

売掛債権譲渡登記というファクタリング手法もありますが、この方法は法人しか使うことが出来ません。個人事業主は、この売掛債権譲渡登記を必要としないファクタリングを行なわなくてはなりません。

ファクタリングには大きく分けて2種類の方法があります。それが2社間ファクタリングと3社間ファクタリングという方法です。2社間ファクタリングとは、売掛元(解体工事業者)とファクタリングを行なうファクタリング業者の2社間で行なわれるファクタリングの事です。

3社間ファクタリングは、売掛元と売掛先(工事依頼主)、ファクタリング業者の3社間で行なわれるファクタリング取引を指します。

2社間ファクタリングと3社間ファクタリングにはそれぞれメリットとデメリットがあります。次項では、それぞれのメリットとデメリットについて解説していきます。

2社間ファクタリングのメリットとデメリット

2社間ファクタリングとは、売掛元と、売掛債権を資金化してくれるファクタリング業者の2社で行なわれるファクタリング取引です。売掛債権を「モノ」として取り扱い、売掛債権額から手数料を差し引いた分の金額を資金化する方法です。2社間ファクタリングのメリットとデメリットは以下です。

メリット

1.資金化までのスピードが速い

銀行融資などでは審査期間や、書類手続きなどを含めると、資金化までの時間が長くなってしまいがちです。ファクタリングでは業者にもよりますが、即日資金化、3営業日以内に資金化など、売掛債権が資金化されるまでのスピードが速いため、資金難に陥っても迅速に対応することが出来ます。

2.審査は売掛元ではなく売掛先

ファクタリングを申し込む企業や個人事業(売掛元)の経営状況が火の車であっても、売掛先(工事依頼元)の与信力が高ければ問題ありません。あくまでも売掛債権をきちんと回収できるのかという点において審査がされるため、申し込み企業・個人事業主の経理状況が悪くても審査に通りやすくなります。特に、公共事業や上場企業などが依頼元であった場合などは貸し倒れの可能性が低くなるため、手数料も安くなる場合があります。

3.売掛先に知られずに資金化できる

2社間ファクタリングは、売掛元とファクタリング業者の2社間で契約される取引です。しかし、資金化の源となる「売掛債権」は売掛先と売掛元の2社内での取引です。債権譲渡を行なう際には、契約書上で債権譲渡の禁止特約などを締結する場合がありますが、金額などによっては、債権譲渡禁止特約などが無い場合もあります。

債権譲渡禁止特約が無い売掛債権のファクタリングは、売掛先へ、債権を譲渡したという通知をする必要がありません。そのため、資金繰りに困っているというネガティブな情報を売掛先に知られることなく、資金を調達することが可能です。資金繰りにあえいでいるということを知られると何かと都合が悪いという場合には2社間ファクタリングが有効です。

デメリット

1.手数料が高い

2社間ファクタリングと3社間ファクタリングを比べると、圧倒的に2社間ファクタリングの方の手数料が高いです。これにはファクタリング業者側の理由があります。それは貸し倒れリスクを最小限にするためです。業者によっても異なりますが、3社間ファクタリングの場合で5%~10%なのに対し、2社間ファクタリングでは10%~30%とかなり幅が広くなります。

2.個人事業主は利用できない

先ほども触れましたが、2社間ファクタリングには「売掛債権の譲渡登記」が必須です。この売掛債権の譲渡登記は、現行の法律では、法人企業しか利用できない制度です。そのため、いくら売掛債権譲渡禁止特約がない売掛債権だとしても、法人ではない個人事業主は2社間ファクタリングを利用できません。

3社間ファクタリングのメリットとデメリット

3社間ファクタリングのメリットとデメリットは以下です。

メリット

1.手数料が安い

先ほども触れましたが、2社間ファクタリングの手数料相場に比べ、3社間ファクタリングの手数料相場は圧倒的に3社間ファクタリングの方が安く済みます。

2.個人事業主でも利用できる

債権譲渡を売掛先の合意を得て行なうため、個人事業主でも利用できます。債権譲渡登記は売掛先と売掛元で行なわれるのではなく、売掛元とファクタリング業者間で新たに締結されます。

デメリット

1.2社間ファクタリングに比べて資金化までのスピードが遅い

3社間ファクタリングは、売掛元、ファクタリング業者に加えて、売掛先も取引の対象になります。そのため、資金を得たい売掛元と、売掛先の打ち合わせのタイミング次第では、2社間ファクタリングよりも時間がかかってしまう場合があります。

2.売掛先との交渉次第では今後の取引に影響が出る場合も

債権譲渡通知が行なわれるため、ファクタリングを行なうことで売掛先である企業から色眼鏡で見られてしまう可能性もあります。資金繰りに困っているという事実によって、将来的な受注が困難になる場合もあります。

解体工事業の資金繰りの現実とは?

解体工事業は、他の土木業やとび業に比べると歴史が浅い業界です。ですが、業界のルールは土木業や建築業のルールを踏襲しており、そのルールが解体工事業の資金繰りを悪化させている原因にもなっています。ここでは、解体工事業の資金繰りの現実について解説していきます。

人件費の仕組みが資金繰りを悪化させている?

解体土木業は基本的に「一人親方」の経営が多く、中小企業というよりも個人事業主、もしくは零細企業として仕事をしている業者ばかりです。そのため、大きな解体工事を受注した場合、一人で解体するのは工事期日に間に合わないため、外注で他の業者に依頼する必要があります。

その際に発生する人件費は、契約書にもよりますが、ほとんどが「前払い制」です。この経費発生の仕組みは、土木業時代から変わっておらず、どうしても流動資産である預金を切り崩して支払うことになります。また、解体工事が終わっても、工事全体の竣工が行なわれるまでは工事代金の売上が入金されないという点も業界の暗黙のルールになっています。

こうした外注の人件費が資金繰りを悪化させている主な要因として挙げられています。

資金ショートによる黒字倒産

一人親方の解体工事業では請け負える解体工事も小さな規模のものになってしまいます。従業員が複数人いても、結局は人件費や重機の運搬費などの経費は、流動資産から支払わなければなりません。売上の入金タイミングがクライアントとの契約状況に応じて変化するということも一人親方の解体工事業においては、大きなハンデになります。

売掛債権として帳簿上に記録される解体工事の売上ですが、実際に入金されるタイミングは翌月、もしくは翌々月というケースも少なくありません。仕事が途切れなければ問題はありませんが、仕事と仕事の間で期間が空いてしまった場合、新しい仕事を受注するにしても、その仕事が完遂出来ないような経理状況に陥ってしまうことも少なくないのです。

解体工事業を営んでいるほとんどの法人・個人は自転車操業で運営しているという現実があります。資金繰りに苦戦した挙句、黒字倒産になってしまうというケースもあります。

いかにして運転資金を円滑に運用するかが、解体工事業のポイントということです。

解体工事業者の需要が増えている理由

解体工事業がわざわざ別業種として分離した理由とは一体何なのでしょうか?解体業者の需要も年々と増加している傾向にあります。ここでは解体工事業者の需要増について解説していきます。

高齢化社会による空き家解体の需要が高い

解体工事業とは、そもそも「建築物の解体」が仕事です。建築物の解体がピークを迎えるのは西暦何年頃かご存知ですか?ほとんどの建築物の耐用年数は、築50年が一つの区切りと言われています。建築物が日本国内で最も増えた年は、バブル期の1970年代後半~1980年代前半です。その年代に50年を加算してみましょう。すると、建築物の耐用年数である築50年になるのは、2030年~2040年前後ということになります。

耐用年数の経過、つまり老朽化は建物だけに言えることではありません。人間も同じように高齢化社会を迎えることになります。空き家問題として度々ニュースでも取り上げられていますが、2013年の総務省の調査では、820万戸という空き家が現存していることが発表されています。これが2033年には、倍以上の2150万戸まで増えると試算されています。

人が済まなくなった家屋は、急激に劣化し、震度4程度の地震で倒壊の危険性もある為、早急な対策が必要となります。ただでさえ地震大国である日本において、空き家問題は安全管理の面からも深刻な問題であるということを覚えておくべきです。

災害時の解体作業も重要な仕事

東日本大震災や、熊本地震、西日本豪雨や台風の異常発生など、災害による解体工事業の需要も年々高まっています。災害で家が半壊してしまうと、安全面の問題から二度と人が住めない建築物になってしまいます。その場合には、解体のプロである解体工事業者が、半壊した家屋を解体する必要があります。

近年では、大雨などによる浸水被害や、台風に伴う暴風の影響で半壊する家屋も増えてきています。家屋の老朽化という問題と重ねると、今後災害のたびに家屋の解体工事需要が増えていくことが予想されています。

解体工事業の資金繰りに困ったらまずはファクタリング

ファクタリングと解体工事業の関係性について説明してきましたが、猫も杓子もファクタリングというわけではありません。きちんとファクタリングを有効活用しなければ、ファクタリングのデメリットの影響を受け、ファクタリングをしているのに、経営状況が悪化してしまうということにもなってしまいます。ここでは、解体工事業の有効的なファクタリング方法について解説していきます。

ファクタリング自体を予算に組み込むという方法

ファクタリングを活用するタイミングは、資金難の緊急時というのが基本です。しかし、解体工事業のような自転車操業で仕事をする業界の場合には、経営予算に最初からファクタリング費用を組み込んでしまうというのも賢い方法です。

実際に業界は異なりますが、多くの上場企業、巨大企業はファクタリングを早いタイミングで予算編成に組み込んでおり、資金サイクルの円滑化を図っている事実があります。通販大手のZOZOや、ユニクロ、トヨタ自動車など、日本を代表する企業がファクタリングを有効活用して自社の資金繰りを健全化させています。

安定した資金繰りで企業の成長につなげる

資金繰りが安定すれば、一人親方の解体工事業であっても、企業の成長につなげることが出来ます。売掛債権を入金期日前に資金化できれば、利益や経費などの管理も容易になりますし、計画的な設備投資、人材投資ができるようになります。

個人事業主であっても、利益を最大限にするための投資は必要不可欠です。将来の大きな仕事の受注のためにも、早いタイミングでファクタリングを自社経理に組み込んでおくことをおすすめします。

ファクタリングを最大限に活用して新規業界の需要をさらに上げる

ファクタリングのメリットやデメリット、使い方について解説してきました。ファクタリングを有効的に活用することで、会社の利益確保が容易になりますし、急な出費にも対応できる企業の「体力」が強化されます。資金繰りに困って解体作業そのものに支障をきたしてしまうよりも、ファクタリングを最大限に活用することで、企業の成長、業界の発展が達成できるのではないでしょうか?