製造業の中でも資金難に陥りやすい業種が、自動車部品製造業と言われています。日本の自動車産業はグローバル展開が当たり前になっており、その景気は日本国内の景気動向だけではなく、世界情勢にも左右されます。近年は、リーマンショックなどの影響もあり、自動車部品製造業の破産などが相次ぎました。

手形取引を主とした決済方法が不渡りになり、多くの中小零細企業が黒字破産をする羽目になったことも記憶に新しいでしょう。そんな自動車部品製造業を救ってくれるのが、売掛債権買取り業である「ファクタリング」です。ファクタリングとは、売掛債権を資金化する合法的な金融工学の一つです。

今回は、自動車部品製造業とファクタリングの関係について詳しく解説していきます。

ファクタリングと自動車部品製造業

ファクタリングと自動車部品製造業の関係を説明する前に、まずは、ファクタリングについて解説していきます。

ファクタリングを知る

ファクタリングとは冒頭でも触れましたが、企業間の決済方法である「売掛債権」をモノとして扱い、専門業者に買い取ってもらうことで資金化をする金融工学の一つです。歴史は古く、15世紀にイギリスで行なわれたファクタリングが起源とされています。

欧州諸国やアメリカでは手形取引よりもファクタリング取引の方がメジャーな金策として流通しています。銀行融資や、助成金といった将来的に負債(借金)になるようなものではないため、多くの企業が積極的にファクタリングを活用して資金繰りを安定化させている実績がある資金調達方法です。

ファクタリングの方法とは?

ファクタリングは、自動車部品製造業のような中小零細企業にとっては大きなメリットを生む金融工学です。特に、入金サイクルが不安定な会社程、その恩恵を受けることが出来るでしょう。ファクタリングは、簡単にいうと、入金期日がまだ先にある売掛債権を早期に資金化できる方法です。

ファクタリングには、一般的に使われている方法として2社間ファクタリングと3社間ファクタリングという2通りの方法があります。それぞれにメリットとデメリットがあり、その情報を知らないままファクタリングを行なうのはおすすめできません。

次の項では2社間ファクタリングと3社間ファクタリングのメリットとデメリットについて解説していきます。

2社間ファクタリングのメリットとデメリット

2社間ファクタリングとは、売掛元と、売掛債権を資金化してくれるファクタリング業者の2社で行なわれるファクタリング取引です。売掛債権を「モノ」として取り扱い、売掛債権額から手数料を差し引いた分の金額を資金化する方法です。

メリット

1…資金化までのスピードが速い…銀行融資などでは審査期間や、書類手続きなどを含めると、資金化までの時間が長くなってしまいがちです。ファクタリングでは業者にもよりますが、即日資金化、3営業日以内に資金化など、売掛債権が資金化されるまでのスピードが速いため、資金難に陥っても迅速に対応することが出来ます。

2…審査は売掛元ではなく売掛先…ファクタリング申し込み企業(売掛元)の経営状況が火の車であっても、売掛先の企業の与信力が高ければ、資金化が可能です。特に、上場企業などは貸し倒れの可能性が低くなるため、手数料も安くなる場合があります。

3…売掛先に知られずに資金化できる…2社間ファクタリングは、売掛元とファクタリング業者の2社間で契約される取引です。ただし、資金化の源となる「売掛債権」は売掛先と売掛元の2社内での取引です。債権譲渡を行なう際には、契約書上で債権譲渡の禁止特約などを締結する場合がありますが、金額などによっては、債権譲渡禁止特約などが無い場合もあります。

債権譲渡禁止特約が無い売掛債権のファクタリングは、売掛先へ、債権を譲渡したという通知をする必要がありません。そのため、資金繰りに困っているというネガティブな情報を売掛先に知られることなく、資金を調達することが可能です。資金繰りにあえいでいるということを知られると何かと都合が悪いという場合には2社間ファクタリングが有効です。

デメリット

1…手数料が高い…2社間ファクタリングと3社間ファクタリングを比べると、圧倒的に2社間ファクタリングの方の手数料が高いです。これにはファクタリング業者側の理由があります。それは貸し倒れリスクを最小限にするためです。業者によっても異なりますが、3社間ファクタリングの場合で5%~10%なのに対し、2社間ファクタリングでは10%~30%と負担が大きくなります。

2…個人事業主は利用できない…ファクタリングには「売掛債権の譲渡登記」が必須です。この売掛債権の譲渡登記は、現行の法律では、法人企業しか利用できない制度です。そのため、いくら売掛債権譲渡禁止特約がない売掛債権だとしても、法人ではない個人事業主は2社間ファクタリングを利用できません。

3社間ファクタリングのメリットとデメリット

2社間ファクタリングのメリットとデメリットについて解説してきましたが、3社間ファクタリングのメリットとデメリットはどんなものがあるのでしょうか?

メリット

1.手数料が安い

2社間ファクタリングの手数料相場に比べ、3社間ファクタリングの手数料相場は圧倒的に3社間ファクタリングの方が安く済みます。

2.個人事業主でも利用できる

債権譲渡を売掛先の合意を得て行なうため、個人事業主でも利用できます。

デメリット

1.2社間ファクタリングに比べて資金化までのスピードが遅い

3社間ファクタリングは、売掛元、ファクタリング業者に加えて、売掛先も取引の対象になります。そのため、資金を得たい売掛元と、売掛先の打ち合わせのタイミング次第では、2社間ファクタリングよりも時間がかかってしまう場合があります。

2.売掛先との交渉次第では今後の取引に影響が出る場合も

債権譲渡通知が行なわれるため、ファクタリングを行なうことで両社(売掛先と売掛元)の関係がぎくしゃくする可能性もあります。資金繰りに困っているという事実によって、契約内容の見直しがされてしまう場合もあります。

自動車部品製造業の資金繰りが悪化しやすい理由とは?

どうして自動車部品製造業の資金繰りは悪化しやすいのでしょうか?ここでは自動車部品製造業の資金繰りが悪化しやすい代表的な理由について解説していきます。

材料費の高騰

冒頭でも述べたように、自動車産業は年々グローバル化しています。自動車部品製造業も同じように様々な部分でグローバル化がされているのが現状です。特に影響を受けるのは、肝心の商品を作るための材料費です。日本の自動車部品製造を支えているのは、国外から輸入される鉄などの材料です。近年では法律的な関係もあり、これまで低価格で輸入出来ていた材料の値段が高騰しています。

こうした材料費の高騰は、自動車産業全体の利益を減らす原因の一つにもなっています。材料費が高いからと言って、商品の代金を上げることも出来ないのが中小零細企業の泣き所と言ってもいいでしょう。しかし値段を上げてしまえば、競合の資金力が高い会社に仕事を奪われてしまうのも現実問題として起こっています。

材料費の高騰は、部品製造業に多くの問題を引き起こす大きな問題となっているのです。

孫請け・ひ孫請けの関係性

先ほどの材料費の部分でも触れましたが、材料費の高騰に比例して商品(自動車部品)の価格を上げられないというのは、自動車部品製造業以外の業種でも同じことです。下請けや孫請け、ひ孫請けといった関係性が、経済的な負担になっていることもまた事実なのです。

完成した自動車を販売しているメーカー(トヨタやホンダなど)は、車を売ることで利益を上げます。その車が人気になればなるほど、商品である車の増産が行なわれ、下請け、孫請け、ひ孫請けといった自動車部品製造業に仕事が与えられます。

この「与えられる」という主従関係が、色々な問題を引き起こしているのは、皆さんもご存知の通りです。近年では、材料費の高騰以外でも、労働基準法の改正による人件費の高騰や、光熱費の高騰といった経費の圧迫が中小零細企業の利益を目減りさせています。

利益を最大限にしたくても、仕事を与えられている側としては、安い値段で仕事を請け負うしかないという現状があり、それが出来なければ、他の資金力のある企業に仕事を取られてしまうのが現実なのです。

資金難による黒字破産

上記の問題が引き起こす最大のリスクは「黒字破産」です。黒字破産とは、帳簿上は黒字なのに、流動資産である預金が少ないため、材料費などの経費の支払いが出来なくなって破産してしまうことです。

入金サイクルが不安定な契約程、この黒字破産に陥ることが多いと言われています。また、資金難を解決するために銀行への融資などを申し込んでいても、融資審査に受かるほどの帳簿状態ではないため、融資を受けることが出来ないというケースも多くあります。

こうした金策の行き詰まりが、多くの中小零細企業を破産に追い込んできたことも、また事実なのです。

自動車部品製造業者のファクタリング活用例

自動車部品製造業の資金繰りを健全化させるために、多くの中小零細企業の経営者たちが行き着いた答えが「ファクタリング」でした。ここでは、自動車部品製造業を営んでいる経営者が、どのようにファクタリングを活用して資金難を乗り越えたかという活用例を紹介していきます。

設備投資での活用例

自動車部品製造業の中でも老舗と言われている製造工場での活用例です。

これまでは、昔気質の職人さんの手作業がメインとなって自動車に使われる部品を製造していました。しかし、合理化という波は多くの職人から仕事を奪っていきました。また、職人たちの高齢化も問題になってきます。

そうした中で、昔から付き合いのあったメーカーから、大量受注の仕事の打診を受けました。しかし、現在の工場の規模では、その大量受注をこなすことはできません。新たに人材を育成する暇はもちろんありませんし、設備投資をするしか方法がありませんでした。

目の前にある大きなビジネスチャンスを逃すかもしれないと悩んでいた時にファクタリングに出会いました。ファクタリング業者と大量受注をしてくれたメーカーさんとの3社間ファクタリングを行ない、設備投資をすることが出来ました。

高齢化している業界だからこそ、ファクタリングで資金繰りを健全化させ、製造に必要な合理化を図っていくことは、一つの方法だと思います。昔から付き合いのあるメーカーさんのご厚意により、ファクタリング以降も変わらない契約をしてくださいました。今ではファクタリングで得た資金を元に設備投資を行ない、他社からの受注もこなせるようになりました。

銀行融資を断られたケースでの活用例

有名メーカーのひ孫請けとして営業している自動車部品製造会社の活用例です。

当社は、自動車メーカーとしては中堅にあたる会社の、ひ孫請けとして営業している小さな製作所です。従業員も家族を含めても10人に満たないため、商品の売り上げのほとんどは従業員の人件費と生活費に回っています。景気が良い時は仕事も多くありましたが、近年では毎年が破産と隣り合わせのギリギリの営業をしているのが実情です。

材料費の高騰は、我々のような小さな基礎部品(ネジやボルトといった小さな部品)製造業に大きな影響を与えました。仕事はあっても材料費が支払えないために、目の前にある稼げるチャンスを見送らなければならないというケースも多くありました。

銀行の融資相談には毎月のように通っています。しかし返事はいつも「現状では無理」という答えばかり。合理化もしていない小さな製造業では、融資を受けることすらできず、破産までの階段をゆっくり上がっているような感覚でした。

ファクタリングのことを友人の経営者から聞いた時には半信半疑でした。そんなうまい話があるわけがないとも思っていました。一度話を聞いてもらえばという友人の勧めもあり、ファクタリング業者の事務所に向かいます。現状抱えている売掛債権の入金期日は3カ月後でした。ファクタリングでは2社間ファクタリングを相談しました。

資金難であることを取引相手には知られたくなかったのが本音です。相談してから3日後に資金化OKの返事を貰えました。手数料は10%と銀行融資の利率と比べると若干高くはありましたが、手数料の徴収は、最初の一回だけというのも良かったのかも知れません。将来的な負債になることもないと聞いていたので、すぐに売掛債権を資金化しました。

そこで得た資金を元に材料費を支払い、破産を免れることに成功しました。現在では、毎月ファクタリング業者と契約し、利益をきちんと確保した上で、設備投資をするための貯蓄を行なっています。設備投資さえできれば、銀行融資も通りやすくなりますし、今後の事業拡大も夢ではなくなります。

今後も末永くお付き合い頂きたいと思っています。

自動車部品製造業の年度予算にファクタリング費用を計上する

ファクタリングは、自動車部品製造業だけではなく、多くの中小零細企業の資金難を救う最良の一手です。活用例でも語られていましたが、ファクタリング費用を会社の予算に組み込んで資金繰りを最適化させている企業も少なくありません。実際に、株式上場を果たしている企業も年度予算にファクタリング費用を組み込んで資金繰りを安定化させて営業しています。

突発的なファクタリング利用も有効ではありますが、一番重要なのは会社の資金繰りを安定化させるという目的があってファクタリングを利用することです。ぜひ一度ファクタリングを相談してみてくださいね。