未収金とは売掛金以外の売り上げです。
売掛金が本業での収入であるのに対し、未収金は本業以外での収入となります。そして未収金が回収不能になった場合の対処方法は、売掛金が回収不能になった場合と同じです。
未収金が回収できないと判断した場合には、「内容証明郵便」や「支払督促」などの法律に乗っ取った回収方法を利用しましょう。もし回収業務が困難であるのなら、弁護士や債権回収代行業者を利用することでスムーズに回収できるでしょう。
注意したいこととしては、取引先が倒産してしまい売掛金が回収不能になってしまう場合です。回収できなくなってから頭を抱えるのではなく、回収不能にならないように対応することも重要なのです。
金の切れ目が縁の切れ目。個人同士の貸し借りであれば、それでもいいかも知れませんが、会社同士のお金の問題は、法律にのっとって冷静に対処しなければならないのです。
目次
未収金の回収不能を防ぐ3つの方法
未収金が回収不能になるのを防ぐためには次の3つの方法が効果的です。
正しい内容の契約書を作成する
未収金を得る場合であっても、会社間で取引をするのなら契約書を作成するのが一般的です。
契約書を作成することは、支払遅延や回収不能になりそうな状況が起こった場合に、問題を複雑にしない役目があります。つまり契約書に書かれている内容に沿って問題を解決することができるのです。
契約書を作成するときには、6つのポイントを踏まえて作成しましょう。
双方のリスクヘッジができる
リスクヘッジとは、取引で発生しうるリスクへの対応策のことです。どちらかが損をするような契約書は公平な取引ではありません。自社が売主の場合でも買主の場合でも取引先と公平なリスクヘッジができる契約書を作成しましょう。
売主側のリスクとしては「代金の回収ができなくなる」や「商品が輸送中に破損する」といったコトがあります。買主側は「納期の遅れ」や「商品が不良品だった場合の対応がしてもらえない」といったコトに対して契約書上で対策を明記しておきましょう。
権利と義務について書かれている
契約書はビジネスレターや説明用の資料ではありません。契約書を発行する上で重要な「権利と義務」について書かれていることが大前提になります。簡単にいうと、契約条項にきちんと主語があり、誰の権利なのか義務なのかという点が明確でなければならないのです。
この「主語」という部分には、自社もしくは取引先の「権利」か「義務」が該当します。この部分をあやふやなままにしておくと、どれだけリスクヘッジをとっている契約書であっても、裁判などが起こった際に証明が難しくなってしまいます。
万が一のリスクが発生したときを想定して「権利」と「義務」を踏まえて作成しましょう。
第三者にもわかる内容にする
第三者とはつまるところ「裁判官」です。将来的に支払いができない、されないといった問題は裁判などの「法的手続き」によって最終的な解決がなされます。そのときに取引先と自社しか理解できないような契約書だと、裁判官も正しい判決を下せなくなってしまいます。
裁判官が見てもわかる内容にすることを意識しましょう。
法律で記載事項が決まっている場合はそれに従う
未収金は営業外収入にあたる取引で発生する代金です。取引される商品などによっては、法律で契約書に記載すべき内容が決まっている場合もあります。対象の未収金取引の契約時には、契約書に入れるべき記載事項が無いかを確認してから作成しましょう。
契約に関連する法律や判例を踏まえて作成する
法律で記載事項が決まっていない場合の契約でも、契約に関する法律や過去のトラブル判例などを調べて契約書に反映させておくといいでしょう。売買契約書の場合では、民法や商法が関わってくるケースもあります。
取引する商品などによって関連する法律や判例をチェックして契約書に反映させましょう。
契約書のひな形を記載漏れのチェックに使う
契約書=ひな形を使えばOKと考えている方が多いです。しかし、実際の契約において、ひな形でカバーできないこともあります。ひな形はあくまでも完成した契約書の記載漏れをチェックする目的で利用するといいでしょう。
ひな形に書かれている内容+取引に合わせた契約内容を記載しておけば、トラブルが起こっても対応できる可能性が高くなります。
もしその後問題が大きくなったとしても、契約書が証拠になる。互いを守るためにも契約書は作成しておいた方がよいだろう。
自社で回収するか、回収代行業者に依頼するか
未収金が自社で回収できそうであればそれに越したことはありません。しかし難しいと判断した場合には、回収代行業者に外部委託するなどして回収業務を行ないましょう。
未収金も売掛金も、受け取る権利のあるお金です。
取引先に支払い催促メールを送ったり、内容証明を送付したりするのは自社でもできることです。
もし自社で回収する時間がない、もしくは回収困難という判断に至った場合には、回収代行業者や弁護士などに依頼して回収してもらう方法があります。
ただし、代行業者や弁護士に回収業務を依頼する場合には当然、依頼料が発生します。未収金の金額よりも手数料が高い場合には、自分で解決するしかありません。
どのような方法を使っても、取引先が支払いに応じない場合には、未収金を破棄し、損失として経費に計上するという方法もあります。未収金が入ってこないという面でいうと売上げの損失にはなります。しかし損金として経費に計上することで税金対策になります。
状況に合わせて適切な対処をおこないましょう。
ただしどうしても回収が困難という場合には考え方を変え、損金として経費計上するという方法もある。これにより節税効果が見込めるためだ。
買掛金と相殺
未収金が残っている取引先に対して買掛金がある場合には、取引先の合意を得ることで「相殺」できます。
相殺とは、相手に対して同種の債権がある場合に、自分と取引先双方の債権額を消滅させる行為です。
参照 未収入金は取引先との合意さえあれば買掛金と相殺できる!
正直あまり現実的ではないため、参考程度に覚えておいてください。
たとえば、A社がB社に200万円の売掛金があるとします。そして逆にB社はA社に対して200万円の売掛金を持っているとします。つまりこちらが向こうに支払うお金があり、向こうもこちらに支払うお金がある場合のことです。売掛金と買掛金を互いに持っている状態ということです。
このような場合には、互いの支払いを互いの了承の元、打ち消しあうことができます。これを「相殺」と言います。
今回の場合ですと200万円-200万円となります。そのためA社はB社へ支払いをしなくてよくなります。同じようにB社はA社へ支払いをしなくてよくなります。
200万円払って、200万円払われるということ。
では、「相殺」すれば互いに支払いがなくて良いのでは?
このような感じとなるのです。
そして相殺は本来「同種」の債権をぶつけ合うことが原則ですが、取引先の了承さえ得られれば、買掛金と未収金を相殺することが可能です。もし未収金額よりも買掛金額の方が高いのであれば、未収金を消滅することができ、支払うべき買掛金を減らすこともできるのです。
債権というのは一定の行為を要求できるものだ。今回の場合は「お金の支払い」となる。
ただし双方の合意があってはじめて相殺することができる。どちらか一方でも反対すれば実現はしない。
参照 他の支払いで相殺する
未収金回収不能の対処をしないと資金繰りが悪化する可能性が高まる
未収金が回収不能の状態で放置しておくと、資金繰りの悪化に繋がってしまいます。
未収金はメインとなる業務以外の収入ではあるものの、会社にとっては予算として計算できる収入となります。期首予算などでは、営業外収益も予算の「経常利益」に組み込まれるのが一般的です。
予算に組み込まれているお金のやりとりがなされなければ、予算達成ができなくなります。期中に予算編成を組み替える手間も発生しますし、金額によっては資金繰りが悪化してしまう可能性もあるのです。
未収金の回収不能のまま決算処理を行なうと法人税に影響が
未収金の回収不能の状態であれば、回収不能になった未収金を「損失」という経費として計上することで、支払うべき法人税を抑えることができます。しかし経費に計上しなかった場合には、税金を抑えることはできません。
未収金の場合、本来の仕事以外の収入になるため、注目されづらく、会社の規模によっては気づかない可能性があるので注意が必要です。
回収不能になった未収金を正しく経費計上するために覚えておくこと
回収不能になった未収金を経費として正しく計上するためには、未収金と未収収益の違いを理解しなければなりません。
未収金と未収収益は名前が似ている上、本来の営業以外で発生する収入という意味では同じということもあります。
なぜ、この違いを理解しなければならないのかというと、未収金は当期計上が原則で、未収収益は翌期首に振戻仕訳をしなければならないためです。
振戻仕訳とは、決算をはさんで未収収益が発生する場合に前期で計上した未収収益を営業外収益として計上することです。振戻仕訳をしなければ、前期と当期の決算金額にズレが生じてしまい、正しいお金の流れが掴みにくくなってしまいます。
回収不能になった未収金を未収収益の振戻仕訳で処理してしまうと、実際にはお金が手元にないのにかかわらず、売上げが発生した状態として計上してしまうのです。金額によっては大きなズレを生じることもあるため、未収金と未収収益の違いは確実に把握しておかなければなりません。
未収金と未収収益。2つの違いを理解した上で経費に正しく計上しましょう。
未収金の種類は「単発」で発生しやすい
未収金は「単発」で発生しやすい収入です。
たとえば自社の機器などを売却することで「売却益」が発生します。この売却益がまだ支払われていない場合には未収金となります。
未収金と混同しやすいのが、不動産の家賃収入のように毎月「継続的」に収益が発生する「未収収益」です。
未収収益は「継続」で発生するもの
未収収益とは、一定の期間で収入が継続的に発生するものです。
たとえば、家賃収入などがよい例です。不動産収入を得ている会社は意外とたくさんあります。毎月決まった金額が得られることもあり、安定した収入は経営者にとっては魅力となる収入源です。会社の資産として不動産を所有している場合には「支払われていない家賃収入」が未収金となります。
不動産収入のほかにも、債権や定期預金の受け取っていない受取利息なども該当します。
未収金が回収不能になる原因は「取引先の倒産」と「時効成立」
未収金が回収不能になってしまうとは、自社の営業以外で発生する収入の支払いを受けられなくなる状態のことです。
未収金が回収不能になってしまう主な原因として考えられるのは、「取引先の倒産」や「時効成立」が挙げられます。
取引先が倒産した場合
取引先が倒産して、未収金が回収できなくなった場合、自社にできる対策としては「未収金の支払遅延が起こったタイミングですぐに回収業務を行なう」ことです。
未収金が残っているままで倒産されてしまうと、回収が非常に難しくなってしまうためです。倒産の度合いや倒産時の資産がどれぐらい残っているかによって、一部を回収できる可能性もありますが、未収金額の100%が戻ってくることはほぼないと言っていいでしょう。
取引先が倒産して回収できなくなった未収金は「貸倒損失」という名目で経緯に計上できます。貸倒損失として計上するのとしないのとでは、支払う税金に差が出てきてしまいます。そのためもし未収金が回収できなかった場合には、そのままにしておくのではなく、損失として計上することで税金対策につながります。
未収金の時効が成立した状態
未収金には売掛金と同じように「時効」があります。時効の成立すると未収金は回収できなくなります。
時効成立前に回収していない未収金があるのならば、まずは「時効の中断措置」を行なって、時効の経過をストップさせた上で未収金を回収しましょう。
未収金の時効は、取引する商品やサービスなどの種類に応じて時効の長さが異なります。
- 旅館
- 料理店
- 飲食店
- 貸席または娯楽場の宿泊料
- 飲食料
- 席料
- 入場料
- 消費物の代価または立替金に係る債権
- 生産者、卸売商人または小売商人が売却した産物
- 商品の代価に係る債権
- 自己の技能を用い、注文を受けて、物を製作しまたは自己の仕事場で他人のために仕をすることを業とする者の仕事に関する債権
- 学芸または技能の教育を行う者が生徒の教育
- 衣食または寄宿の代価について有する債権
- 弁護士、弁護士法人または公証人の職務に関する債権
- 医師、助産師または薬剤師の診療
- 助産または調剤に関する債権
- 工事の設計、施工または監理を業とする者の工事に関する債権
このように未収金の種類によって時効の年数が変わります。
時効が成立してしまうと、取引先の財務状況に問題が無くとも未収金を受け取る権利が消失されます。そのため未収金を受け取る権利を消失させないために、時効成立前に中断措置を行う必要があります。
時効が成立し未収金が回収不能になってしまった場合は、倒産時の回収不能と異なり「寄附金扱い」になります。寄附金扱いになると、貸倒損失として経費計上するよりも節税効果が見込めなくなるのです。
- 時効成立前 ⇒ 時効の中断措置を行なう
- 時効成立後 ⇒ 寄附金扱いとなり、法人税の節税効果は「貸倒損失」で経費計上するよりも低い
未収金回収不能は自社に合った方法で対処しよう
未収金が回収不能となってしまう事態は絶対に避けたいことです。未収金は本来の営業以外で発生した収入かもしれませんが、会社にとっては重要な収入であることは確かです。
未収金が回収するのが困難であったとしても諦めるのではなく、「どうすれば回収できるのか」「最悪回収できない場合に、どのように損を最小限にできるか」という観点をもつことも大事です。万が一回収ができなかったとしても、経費に計上することで翌年の法人税を節約できます。
自分の考えだけで回収不能と判断するのではなく、弁護士や回収代行業者などに相談をしてから行動することをオススメします。
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