売掛金と未収金の違いはメインの業務に関係のある売上であるのか否かです。
この違いを把握しておかないと、決算の時期にこれらの計上方法で悩んでしまうことになり、誤った計上を行なってしまう可能性があります。
正しく計上しておかなければ決算書評価に不利に働く可能性があり、将来的に融資を受けたいと考えた時に受けられなくなってしまう可能性があるのです。
本来であれば売掛金も未収金も、取引が発生したタイミングである「発生主義」で行う必要があります。発生したタイミングで計上しておかなければ、資産を売却したときの利益がいくらなのか、売却先へいくら債権残高があるのかを把握しづらくなってしまうためです。
決算書の評価を高めて融資を受けやすくするためにも、これらの計上方法に関する次の3つのポイントを理解しておく必要があることでしょう。
- 売掛金と未収金の性質は似ているが異なる
- 正しい計上方法
- 現金主義ではなく、発生主義で計上することの重要性
目次
売掛金と未収金の違い 性質は似ているが異なる
売掛金と未収金は性質が似ていますが異なったものです。取引先に販売提供した商品やサービスが、本来の事業と関係あるのかないのかという点です。
売掛金と未収金に共通していることは「売上は立ったけど、相手からお金がまだ支払われていない状態」です。
たとえば1月1日に商品を販売して10,000円の売上が立ち、相手からの支払いが2月25日にあるとしましょう。この場合、2月24日までは代金を受け取れません。
代金をまだ受け取れていないが、将来的にもらえる状態のお金のことを売掛金や未収金といいます。つまりまだ手元には入ってきていないお金のため、未確定の利益ということになります。このとき、相手に「何を販売提供したか」によって、売掛金として計上すべきか、それとも未収金で計上すべきかなのかが決まるのです。
売掛金 | 未収金 |
---|---|
事業と関係のあるものを販売したとき | 事業と関係のないものを販売したとき |
もう一度言いますが、これらの違いは販売提供した商品やサービスが事業と関係あるのかないのかという点です。
例を挙げますと、ハンバーガー屋さんがハンバーガーを売り上げたら売掛金となり、ハンバーガー屋さんで不要になった機械や持っていた株を売却した場合には未収金として計上するということです。両方ともお金が入ってきますが、入ってくるお金の発生の仕方が違うことがわかると思います。
売掛金や未収金に似ている「未収収益」も覚えておくべき
売掛金や未収金と勘違いしやすいものに、未収収益というものがあります。
ややこしいことに、未収収益も売掛金や未収金と同じように「売上は立ったけど、相手からお金がまだ支払われていない状態」を指す言葉です。未収収益は、継続して相手にサービスを提供する場合に計上することがルールになります。
未収収益の対象になるものは主に次の3つが挙げられます。
- 家賃収入の未収分
- 債権や定期預金の受取利息の未収分
- 保険料の未収分
未収収益は決算締日をまたぐかどうかで計上処理方法が変わることも「違い」です。売掛金や未収金は決算期をまたいでも問題ないのですが、未収収益は決算日までに回収しないといけません。
未収収益で計上する際の条件
未収集積で計上する際には、次の3つの条件がに当てはまっていなければなりません。
- 売上は立ったけどまだお金を回収していないもの
- 継続して発生する売上であること
- 期間内に回収する必要があるお金であること
販売する商品 | |
---|---|
売掛金 | 事業と関係のある商品 |
未収金 | 事業と関係のない商品 |
未収収益 | 事業と関係のないサービス |
売掛金や未収金、未収収益はどれも売上がすでに立っている状態です。後からお金が入ってくる状態のため資産として扱われます。言葉や意味が似ているようで、実は3つとも異なる勘定科目になるため、混同しないように正しく計上しましょう。
決算上の留意点
売掛金や未収金は、発生した段階で計上することで、お金の流れを把握しておく必要があります。
売掛金と未収金を発生主義で計上する重要性
会計処理には、計上するタイミングによって発生主義と現金主義の2つの方法があります。
- お金が入ってくること、もしくは出ていくことが確定した時点で計上すること。
例:1月1日に商品を提供して2月25日にお金が入ってくるものは、売上の発生が確定した1月1日に計上する。
- 実際にお金が入ってきた、もしくは出たときに計上すること。
例:1月1日に商品を提供して2月25日にお金が入ってくるものは、実際にお金が入ってくる2月25日に計上する。
企業が会計処理をする場合、現金主義ではなく発生主義で計上することが基本です。現金主義で計上すると、お金の流れを正しく把握できないからです。
たとえば1月1日に販売したのに2月25日に計上してしまうと、売上が1月ではなく2月に立ったことになります。このズレが正しい会計処理を妨げることになってしまうのです。
計上日がズレることで、決算期内での正しい売上や利益などを把握できなくなります。把握していない状況で金融機関の融資審査(融資調査)が行なわれると、決算書の不備を指摘されてしまい、結果として融資審査に不利に働く可能性も高いのです。
もしも今までの会計処理で、売掛金や未収金の科目を使っていない場合、発生主義ではなく現金主義で計上している可能性があります。今一度、自分の会社の経理状況を確認してみましょう。
回収予定の売掛金・未収金残高と相手の信用を要確認
売掛金や未収金の科目を使って、正しく計上することはもちろん大切です。しかし計上するだけで安心してはいけません。
売掛金や未収金は相手からまだお金を貰っていない状態なので、お金をしっかり受け取るところまで管理することが非常に重要です。
取引先の勘違いや支払い忘れによって、お金を受け取れていない可能性がゼロではありません。実際にお金が振り込まれるはずの回収予定日を過ぎたのに、まだお金が入ってこないという状態で放置してしまうと、次の3つのようなデメリットが発生する可能性があります。
お金の管理がきちんとされていないと見なされる
お金の管理ができない企業は、対外的な信頼度が落ちてしまいます。金融機関はもちろんのこと、買掛金がある取引先から与信調査を受けた場合に取引限度額を制限されてしまう場合もあります。
自社の資金繰りに影響が出る
営業を続けていくためにはどうしても資金が必要です。資金不足や資金繰りの悪化は今後の営業にも大きな影響を与えるので、絶対に避けなければいけません。最悪の場合、倒産を招いてしまう可能性もあるのです。
取引先との関係性に影響が出る
取引先からの支払いが遅れてしまうことで、取引先との関係性に影響が出ることも考えられます。取引先企業からの支払いが遅れる原因としては、取引先企業の経営悪化などが影響しています。取引先の財務状況を無視して高額な掛取引を行なってしまうと、取引先の支払いもおぼつかなくなり、回収不能になった場合の損害額も高額になってしまうのです。
結果的には取引先を失うばかりか、自社の売上にも影響を与えてしまいます。売掛金や未収金が回収不能とならないように、取引先の与信情報調査や与信限度額の設定などの「与信管理業務」が重要になるのです。
未収収益は経過勘定の処理も忘れずに
未収収益は経過勘定の1つです。経過勘定とは、すでにサービスを提供しているのに、まだお金のやりとりがされていないときに使います。継続した営業外サービスを提供したのにお金を貰っていないときは、未収金ではなく未収収益として計上しなくてはいけません。
未収収益は、決算日をまたがずに代金を回収しなければなりませんが、回収できないケースもあります。そのようなときは、損失や利益を当期ではなく次期に繰り越して貸借対照表に表示させましょう。
このように次期に繰り越した代金の授受を見越しと呼びます。もし決算日を過ぎてから入金や支払いがある場合は、こういった経過勘定特有の処理も忘れずに行いましょう。
売掛金と未収金の計上は発生主義が基本
発生主義で計上していくためには、売掛金や未収金の科目は経理上では必ず発生します。
売掛金は事業と関係のある商品を提供したとき、未収金は事業と関係ない商品を提供したときに使う科目です。間違えて計上することがないよう、しっかりと違いを理解しておきましょう。
ちなみにこれらの違いを理解しておかないと、決算書の評価にマイナスに響いてしまうことがあります。
「売掛金が多い=たくさん売っている」と取れるので、売掛金が多いことは事業がうまくいっている証拠です。しかし未収金は、いくら多くても事業の評価がプラスになることはありません。
なぜなら事業とは関係のない商品を売っているからです。決算書の評価のためにも次の2つの企業会計ルールを守りましょう。
- 現金主義ではなく発生主義で計上する
- 違いを理解して正しく計上する
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