悪質なのはファクタリング業者だけではない!ファクタリング利用者にも悪質な手口が存在する!

ファクタリングをこれから利用しようと考えている人に、先にお伝えしておきたいことがあります。

普通にファクタリングを利用するつもりであれば何の問題もありませんので、このページを読む必要はありません。

ところが1つの売掛債権を複数のファクタリング会社に譲渡しようと考えている人は、その行為自体が「詐欺行為」に該当する可能性がありますので、このページをしっかりと読み進めることをおススメします。

ファクタリングの仕組みを巧みに利用する悪質利用者の存在

近年では、銀行融資に代わる資金調達方法として、認知度が高まっているファクタリング。ただファクタリングの法整備は、いまだ完全とは言えず、欧米諸国のファクタリングに比べると、安全性という意味では後れを取っている状況です。ファクタリング業者の中にも、闇金業者からファクタリング業者に鞍替えして、悪質な詐欺行為をしている業者もあります。

その中で今回注目するのは、ファクタリングを利用する側、利用者についてです。ファクタリングを管理する法律がきちんと定まっていないということは、それだけ法の抜け穴があり、その抜け穴を利用して詐欺行為を働く利用者もいます。

もちろんファクタリング会社も十分に悪質利用者の存在を理解しています。そのため何かしらの問題があると感じたときには、契約自体を行いませんし、万が一問題が発生した場合には徹底的に法的手段を講じてきます。

今回は、悪質なファクタリング利用者の手口について詳しく解説していきます。ファクタリングの歴史についても解説していきますので合わせてお読みください。

ファクタリングの歴史と導入の背景

ファクタリングという資金調達方法の歴史は古く、15世紀にイギリスでその取引が始まりました。欧米諸国では、手形取引や融資、不動産担保ローンよりも身近な資金調達方法として認識されています。日本に入ってきたのは、高度成長期からバブル期になる1970年代に導入されました。

ですが導入当時はバブルの真最中ということもあり、手形による決済が主流でした。バブル崩壊後、下請け法が改正されたことで、手形ではなく、現金による決済に移り変わります。しかし現金決済による事業運営は、資産を可視化できるというメリットがある反面、運転資金に限界があるというデメリットがあります。

運転資金ありきの事業となってしまい、新商品の開発や販売といった企業を成長させることができないという負のスパイラルに陥り、不況の波が押し寄せてきました。そこで登場したのが「売掛債権」、いわば企業間の「ツケ払い」です。法的拘束力のない取引方法で、手形と違い、将来的にお金を受け取ることが出来なくなっても買い手が罰せられることはありません。

しかしその売掛債権により、資金繰りが厳しくなって経営が悪化したり、倒産したりするといったケースが多くなりました。倒産した企業のほとんどは、資金繰りが苦しい中小零細企業です。手形と違って法的拘束力がないため、支払い期日を過ぎても罰則がない売掛債権は、多くの中小零細企業の経営を圧迫していきます。

そこで見直されたのがファクタリング取引です。売掛債権を「モノ」として扱い、第三者に買い取ってもらう取引が中小零細企業の経営者から広まっていきます。現在では都内や大都市に本社を構えるファクタリング業者も増え、世間の認知度も高くなってきました。

しかしそのファクタリングも盛んになればなるほど、悪質な詐欺行為の温床となっていくのは、法整備が不十分だという以外にも原因があります。

それは業者、利用者双方に悪質な詐欺師がはびこっているという現実です。次の項からは、悪質なファクタリング利用者の詐欺手口について説明していきます。

悪質なファクタリング詐欺手口とは?

悪質なファクタリング詐欺の手口は大きく分けると以下の3つが代表的です。

  1. 架空債権
  2. 二重譲渡
  3. 組織ぐるみの計画倒産

この3つの手口について解説していきます。

架空債権

ファクタリングは、売掛債権を「モノ」として取り扱い、その「モノ」を買い取ってもらい資金化する方法です。その「モノ」が偽造したものであったら、その取引は立派な詐欺行為となります。存在しない売掛債権をねつ造し、その売掛債権をファクタリング業者に買い取らせる手口です。

ここで偽造、ねつ造されるのは以下の3つです。

  1. 請求書や契約書(売掛債権の)の偽造
  2. 銀行通帳の入出金履歴の偽造
  3. 売掛先との取引履歴のねつ造

この3つが架空債権で使われる偽造、ねつ造される書類関係です。さまざまな偽造行為を織り交ぜて、架空の売掛債権を創り、ファクタリング業者に買い取らせるのが手口です。もちろん詐欺罪が成立しますし、ファクタリング業者を狙った犯罪集団が存在している可能性も高いでしょう。

またこの架空債権詐欺は、悪気が無くてもしてしまう経営者がいるということが問題になっています。架空債権詐欺は犯罪行為ですし、それを擁護する気はありませんが、銀行融資やビジネスローンの申請の現場では、これらの偽造書類が当たり前に使われているという現実が、ファクタリングにそのまま当てはめて考えられてしまい、結果的に詐欺として告発されるケースもあります。

資金繰りが厳しい中小零細企業の経営者は、毎月、毎日が資金繰りとの闘いです。銀行の融資や不動産などを担保にして、事業の運転資金を捻出しているのが現状でしょう。銀行融資や不動産担保ローンを利用する際には、審査時に友人や知人、家族から現金を借り、一時的に口座残高をカサ増しした「操作された見た目だけの資産」を作ることもあります。その見た目だけの資産で融資審査をしている銀行側にも、問題があります。

ファクタリングは銀行の融資と違い、将来の借金にはなりません。期限がいまだ来ていない売掛金を、期限前に資金化することで、事業資金を得る方法です。簡単にいうと、手数料を支払って、売掛金の入金を早めてもらうのが目的です。その本質を理解せずに、銀行融資や、不動産担保ローンと同じ感覚で売掛債権をねつ造することは、悪気が無くても立派な詐欺行為になるということです。

資金繰りが厳しくで、首が回らないからやむなくという理由も理解できますが、刑法上では「詐欺罪」になり、刑事事件として告発される可能性が高い手口です。いくら経営が厳しかったとしても、架空債権は許されません。

ファクタリング業者側も、ファクタリング審査の際には売掛先の経営状況だけでなく、その債権が実在していて、きちんと債権額が入金されるのかという点についても厳しく審査を行う必要があります。あまりに架空債権による詐欺が流行すると、本来審査されない申し込み者(売掛元)の審査が行なわなければいけなくなってしまい、ファクタリング利用が難しくなるということを、利用者とファクタリング業者の双方が肝に銘じておくべきでしょう。

二重譲渡

二重譲渡とは、一つの売掛債権を複数のファクタリング業者に売却する詐欺行為です。二重譲渡の本来の意味は「ある物や権利を他者(第一譲受人)に譲渡した譲受人が、同一物を第三者(第二譲受人)へ譲渡すること」です。

ファクタリングにおける二重譲渡は少し意味が変わり、「一度ファクタリングで資金化された売掛債権を別のファクタリング業者へ持ち込み、一つの売掛債権を2回ファクタリングで資金化する行為」を指します。

これも、先ほどの架空債権同様、悪意がある場合と、悪意が無い場合の2パターンがあります。

悪意がある場合(詐欺目的の場合)

悪意がある場合、ファクタリング業者を複数社選んで、売掛債権を買い取ってもらい、そのまま逃走するというケースがほとんどです。最初から騙すつもりで、ファクタリング業者にコンタクトを取ります。とくに注意しなくてはならないのが、2社間ファクタリングで、債権譲渡登記が必要ない場合です。

3社間ファクタリングであれば、債権譲渡登記が必要な為、二重譲渡が発生することはありませんが、2社間ファクタリングの場合には、この債権譲渡登記が必要ないという条件でファクタリングを行なっている業者が多いため、詐欺被害に遭ってしまうという背景があります。

また2社間ファクタリングは、100%詐欺であるということを見抜くのは難しいという側面があります。それは、売掛先に債権譲渡の通知がされないためです。そういったリスクを避けるために、2社間ファクタリングの手数料は、3社間ファクタリングよりも割高になっています。

他にも、先ほど挙げた架空債権を使った二重譲渡詐欺もある為、ファクタリング業者は細心の注意を払って利用者を見極める必要があります。

悪意が無い場合(詐欺目的ではない場合)

悪意のない二重譲渡とは、自転車操業による意図しない二重譲渡の事です。ファクタリング業者複数社と継続的な取引を行なっている経営者に見られるエラーで、ファクタリング業者への入金を行なうために、結果的に二重譲渡になっていたというケースがあります。

意図しない二重譲渡であったとしても、結果的には二重譲渡になってしまっているため、ファクタリング業者から告発されれば、刑事事件として立件される可能性が高いです。ファクタリング業者を複数社利用して、事業資金のやりくりを自転車操業で捻出している経営者の方は充分注意すべき事案です。

二重譲渡で刑事事件として立件された場合、詐欺罪、私文書偽造罪などで、初犯であっても執行猶予なしの懲役刑が科せられることもあります。

組織ぐるみの計画倒産

前述した二つのファクタリング詐欺は、被害額が数十万~数百万という単位ですが、この組織ぐるみの計画倒産は、被害額が大きいもっとも悪質な詐欺行為と言えます。ひどい場合には、数千万~数億円という規模の被害額になることもあります。

計画倒産によるファクタリング詐欺の手口は以下です。

  1. 少額取引で取引実績を作り、ファクタリング業者と信頼関係を築く
  2. 3ヶ月~4カ月間、ファクタリング取引を繰り返し、期日通りに入金を行なう優良顧客を装う
  3. 高額の売掛債権取引を持ち掛ける(2社間ファクタリングで)
  4. ファクタリングによる入金後に売掛先の会社が倒産する

この流れが組織ぐるみの計画倒産の手口となるのです。なぜこのような手口がまかり通るのかというと、ファクタリングが行なわれた際、ファクタリング業者には「還付請求権」が無いためです。還付請求権とは「一旦支払った代金を返却してもらう権利」のことで、ファクタリング業者の「弁慶の泣き所」というべきところです。

ファクタリング契約が成立すると、売掛債権の持主は売掛元ではなく、売掛債権を買い取ったファクタリング業者となります。そのため万が一、売掛先が倒産してしまって売掛債権が入金されなくても、ファクタリング利用者に、資金化したお金を返却してくれとは言えません。

ファクタリング業者は、そのリスクを踏まえてファクタリング業を行なっているため、数億円の損害はそのままファクタリング業者の損害になってしまうのです。

またこの事案は実際に巨額詐欺事案として警察の捜査もありましたが、警察は基本的に民事不介入の原則により、捜査に消極的で利用者と倒産した売掛先の会社との関係を立証できず、全貌を暴くことが出来ないまま現在にいたっています。

現在ではこうした前例を踏まえて、高額な2社間ファクタリングは行われていません。数千万単位、数億円のファクタリングは基本的に3社間ファクタリングによって行われています。今後、法整備がされることで、2社間ファクタリングでも高額な売掛債権を買い取ることが出来るようになる可能性はあります。

しかしこうした巨額詐欺事件の影響で、ファクタリング業者が高額な2社間ファクタリングを行なうようになる可能性は限りなく低いと言えるでしょう。売掛債権額が大きい、建設業界などにとっては大きな痛手となっているのが現状です。

ファクタリング業者が詐欺師を見分けることは出来ないのか?

金融機関の融資であれば、日本の与信情報機関からデータや融資を申し込む企業の決算情報などの経営状況を元にして審査が行われます。

しかしファクタリング業者の場合、利用者よりも、売掛先の審査の比重が高いため、利用者が詐欺を目論んでいることを見抜くのはかなり難しいと言えます。そしてファクタリングの法整備がされるまでは、同業者間の情報共有なども、他の業界に比べると関係が希薄な点も詐欺を見抜けない要因の一つです。

手数料は業者ごとに異なりますし、事務手数料なども法律できちんと定められているわけではありません。いわば自社以外はすべてライバルであり、ファクタリング利用者という「利益」の奪い合いが現在のファクタリング業界とも言えます。

そうした「ファクタリング戦国時代」に、その法律の抜け穴を通じて詐欺を働く利用者は、今後も増え続ける可能性が高いです。法整備がされるまで、ファクタリング業者は常に詐欺師と戦わなければいけないのです。

もしこのまま法整備がされないようであれば、先ほども述べましたが、本来必要のない利用者の審査も厳しく行われることになるのは必至です。ファクタリング詐欺師たちによる行為が、真っ当な商売をしている人達にとっての障害になってしまうのです。

今後は、利用者側、ファクタリング業者側の双方から行政に働きかけることが多くなるでしょう。それまでは、双方とも詐欺利用者、詐欺業者に遭わないように自己防衛することがもっとも重要だということです。

弊社では、詐欺利用者、二重譲渡目的の利用者を見抜くために金融のプロを現場に配置しております。また、コンサルティング業も同時に行っているため、「あれ?おかしいな?」と思った場合にはファクタリング利用をお断りさせていただくケースもございます。

二重譲渡や架空債権は、私どもえんナビはもちろん、申し込む企業様をも苦しめてしまう行為です。二重譲渡や架空債権などをする前に、まずは資金調達の相談をしてみることをおすすめします。双方にとって利益のある資金調達取引ができるように、弊社も粉骨砕身でサポートしてまいりますので、ぜひ気軽にご相談くださいませ。