ファクタリングは、経済産業省も推奨している画期的な資金調達方法です。売掛債権をファクタリング会社に売却して、支払期日の前に資金化することが可能です。負債ではないため経営状態を安定させる効果が期待できます。
その一方で、金融業界に潜む闇金業者は、いち早くファクタリングに目をつけ、正体がばれないように人々の弱みに付け込み、お金を貸し付けようと目論んでいます。ファクタリング業者の中に潜む闇金業者がいることを念頭に置いてファクタリング業者の選定をしなくてはいけないのです。
闇金業者とは?悪質な手口で金銭を回収する業者
闇金業者とは、貸金業の登録を行わず違法な高金利を取り立て、さらには悪質な手口で利用者から金銭の回収を行う業者のことをいいます。
法外な利率で融資し違法な取り立てを行う金融業者
カードローンを含めた融資の金利は、貸金業法で定められており、最高でも20%までとなっています。しかし、闇金は、その基準を超えた金利で貸付をします。闇金業者の金利は、10日で1割や10日で5割などが主流です。この金利は「トイチ」「トゴ」と呼ばれています。
金利が10日で1割ということは1ヶ月で3割ということです。法定金利の20%を完全に超えています。ここまでくれば、もはや映画やドラマの世界です。しかし、こうした闇金業者が実際に存在しているのです。
貸金業法の改正で摘発されたものの…
違法な取り立てをする貸金業者によって、多重債務問題は深刻化していきました。政府は、この事態を改善させるべく2006年12月、貸金業法を改正しました。これにより、闇金への罰則強化(2007年1月)、取り立て規制の強化(同12月)、貸金業者の新規参入の要件厳格化(2009年6月)などが段階的に施行されたのです。
この法改正により闇金業者は、続々と摘発されました。
なぜ闇金業者がファクタリング業界にいるのか?
貸金業法の改正により闇金業者は、 金融業界から排除されたようにみえました。しかし、金融業の穴をすばやく見つけたのです。その穴こそがファクタリングでした。
法規制がきちんとできていないから
ファクタリングは、貸金業ではないため、貸金業法に基づく法規制がないのです。この法規制の緩さを悪用し、審査の段階でさまざまな理由をつけて手数料を引き上げてきます。確かに止むを得ず手数料が上がる場合はあります。20~30%であれば、手数料の許容範囲です。しかし、手数料がそれ以上高くなるのであれば、その会社も利用はやめた方が無難です。
正当なファクタリング会社の手数料は、3社間ファクタリングで5%〜10%、2社間ファクタリングだと10~30%が相場です。2社間ファクタリングを扱っているのに、5%前後の手数料を宣伝している会社は、明らかに怪しいです。
リスクが高い2社間ファクタリングは、正規の業者でさえ手数料を高く設定し、リスクヘッジを行なっています。また、手数料が5%ではファクタリング会社の利益にも貢献できません。現実問題として5%の手数料で2社間契約をするのは、ボランティアでしかないのです。そのような会社は、安い手数料を餌に集客をし、後になってから法外な手数料や経費を要求してくるのです。
場合によっては、2社間ファクタリングのメリットである、売掛先への売却譲渡通知が不要という点を脅しの材料に使って、違法に金銭を要求してくる業者もいます。安い=怪しいというスタンスで、契約内容の確認や業者の検討を行なうべきです。
個人ではなく法人がターゲットになり旨味が増えるから
闇金業者は、返済に困っている人や多重債務者といった個人を狙っていました。しかし、ファクタリングはファクタリング会社に売掛債権を売却して資金調達をする方法なので、法人との取引がメインです。
ファクタリングは、手数料こそ暗黙の了解で決められていますが、ファクタリングにかかる費用も含まれるため、なにかしらの理由をつけて、法外な手数料を搾取することが可能です。また、ファクタリングの金額は、数百万単位での取引が多く、手数料も高額になってきます。
闇金業者にとっては、個人より法人をターゲットにするほうが旨味の増す結果となったのです。
債権法の改正は闇金業者の摘発につながるのか?
法律の隙間を狙って法外な手数料を搾取している闇金業者ですが、2020年4月から、ファクタリング取引の法規制が改正されました。債権法と呼ばれる民法466条が120年振りに改正になったのです。これにより、闇金業者の摘発につながるのでしょうか。
債権法の改正内容
民法が制定されてから120年、変わることはありませんでした。しかし、2017年5月に債権法を含む民法そのものが改正されたのです。今回の改正は、一部の規定を除き,2020年4月1日から施行されます。債権法の改正内容については法務省のホームページにも記載されています。
「債権は原則として譲り渡すことができる(第466条1項本文)指名債権の譲渡は、諾成・不要式の契約であり、新旧債権者間の合意(意思表示)のみによって成立し効力が生ずる。ただし次の例外がある。」
債権の性質がこれを許さないとき(第466条1項但書)
当事者が反対の意思を表示した場合(第466条2項)
出典:法務省「民法の一部を改正する法律(債権法改正)」について
http://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_001070000.html
考察:債権法の改正は悪徳業者の締め出しになるのか?
ここで、債権法の改正が悪徳業者の締め出しになるのかについて解説していきます。売掛債権には、債権譲渡禁止特約というものがあります。これは、売掛先が債権を譲渡するのを禁止するための特約で、この特約がついている売掛債権はファクタリングができませんが、債権法の改正により一部例外を除き、譲渡禁止ではなく譲渡制限と形を変えてファクタリング取引が可能になります。
これにより、売掛債権の流動化や売掛債権の価値が高くなりますが、あくまでファクタリング利用者目線でのメリットであり「債権法の改正が悪徳業者の締め出しになるのか?」と問われると疑問が残りますね。
知識で最大限の防御を 弁護士に同席してもらう方法もあり
ファクタリングは、国からも認められており、利用者にとって安心できる資金調達の方法です。しかし、認知度の低さと、法規制の緩さが闇金業者のターゲットにもなってしまうのです。
債権法の改正は、まだまだ発展途上といえます。ファクタリングの利用を検討しているのであれば、ファクタリングについての知識を得ることが大切です。もし、ファクタリング取引で、悪徳業者とわかり、自分でどうしようもなくなった時は、悩まず弁護士に相談し、取引の場に同席してもらうことをオススメします。