ファクタリング利用者の多くは、経営基盤の安定や、ビジネスチャンスを掴むためなどに活用しています。しかし、利用者の中には、初めからファクタリング会社を騙して現金を奪うことを目的としたファクタリングを利用する不届き者がいます。また、ルール違反という認識を持たずにファクタリング会社を欺く行為をしてしまう利用者もいるのです。
故意であろうとなかろうと、ファクタリング会社を騙してお金を手に入れている行為には変わりなく、不正にファクタリングを利用すると詐欺罪や横領罪で訴えられてしまいます。ここでは、ファクタリング利用者の詐欺行為について詳しく解説していきます。
ファクタリング会社が詐欺に遭うことはあるのか?
悪質業者によるファクタリング利用者への詐欺被害が後を絶ちません。その一方で、健全な営業をしているファクタリング会社が利用者からの詐欺被害に遭ってしまうことがあるのです。
ファクタリング詐欺は利用者側が仕掛ける場合もある
ファクタリングとは、利用者が売掛債権をファクタリング会社に売却し資金化を図ります。支払期日前の売掛金をお金に変えることができる金融工学で、利用者にとってファクタリングは救世主ともいえる存在です。
しかし、この仕組みを悪用して詐欺行為におよぶ利用者も潜んでいて、大変巧妙な手口で長時間をかけて仕掛けてくる事件も実際に起こっています。
過去に起こったファクタリング会社が被害者になった事件
実際にファクタリング会社が被害者になった詐欺事件がありました。
詐欺集団は、最初300万円〜500万円のファクタリングで実績を重ねていきました。ここから同額程度の取引を数回にわたり続けます。そして、ファクタリング後には期日通り入金を行い、ファクタリング会社に優良顧客であると信用させ、徐々にファクタリングの額を引き上げていきました。
数カ月の取引により信頼させたところで、
「大きな工事が決定した」
といった理由で1度に巨額のファクタリング契約を依頼したのです。今までの取引実績や信用性からファクタリング会社は、数億円規模のファクタリング契約に応じました。
ファクタリングは基本的に償還請求権が発生しないノンリコースでの取引です。償還請求権が無いと、万が一売掛先が倒産した場合、管財人としての権利を得ることができません。損害がそのままファクタリング会社の損になってしまうのです。
詐欺集団はこの仕組みを逆手に取って、大金をファクタリング会社から入金させた後、計画的に売掛先を倒産させたのです。ファクタリング会社が利用者と売掛先が共謀していることに気がつきましたが、時すでに遅く、巨額の現金を奪われてしまったのです。
ファクタリング会社を騙す手口とは?
ファクタリング会社を騙す手口は他にどのようなものがあるのでしょうか。
虚偽の書類で水増しファクタリング申し込む
ファクタリングは、利用者が提出した書類や面談で審査をします。いわゆる信用商売で取引を行いますが、利用者の中には、虚偽の書類を持ち込んでくるものがいます
- 架空の請求書や注文書
- 虚偽の決算書や試算表
- 虚偽の通帳
これらは全て審査の材料です。資金繰りの厳しさから「ついやってしまった…」という気持ちは分からなくもありません。しかし、実際にこのような書類偽造をしてしまうと詐欺罪や私文書偽造罪などが適応されます。売掛債権の偽造や偽装は絶対に行なってはいけません。
計画倒産
計画倒産とは「ファクタリング会社から現金を詐取しようという意思を持って会社を設立し、計画的に倒産させる行為」を指します。
利用者は、売掛債権をファクタリング会社に売却します。支払期日前に売掛先が倒産をすると、ファクタリング会社は回収不能に陥ります。ファクタリングは、償還請求権がなくても取引ができるので、回収不能となれば泣き寝入りするしかないのです。ファクタリングのメリットを悪用した卑劣な行為です。
無自覚で不正ファクタリングをしてしまうケースもある
ファクタリングは、自分でも気づかないうちに詐欺行為をしてしまう利用者もいます。ファクタリング業界でも頭を悩ませている事案です。しかし、不正にファクタリング会社から資金を搾取する行為は「気がついたら詐欺行為に該当していた」では済まされない立派な犯罪なのです。
横領罪に問われても知らなかったでは済まされない
2社間ファクタリングは、利用者とファクタリング会社の2社で取引をするため、売掛先はファクタリングをしたことが知りません。そのため、売掛先は、支払期日がくれば利用者の口座に入金をします。
入金された現金は、期日前に売掛債権としてファクタリング会社に売却したものです。当たり前ですが、ファクタリング会社の現金です。しかし、利用者がファクタリング会社に売掛金の支払いをせず放置すれば、ファクタリング会社から横領されたと訴えられ、横領罪として問われてしまいます。後に支払いすることを知らなかったでは済まされないのです。
二重譲渡は絶対にNG
ファクタリングで、もっとも多いのが二重譲渡での詐欺行為です。
二重譲渡とは、売掛債権を1社目に譲渡した後、さらに別のファクタリング会社に譲渡し、現金を複数回受け取ることをいいます。二重譲渡をされた場合、どちらかのファクタリング会社は回収不能に陥ります。
二重譲渡の例として、
100万円の売掛金を保有する利用者が、
A社というファクタリング会社に売掛債権を手数料10%で譲渡しました。ファクタリング会社は、この利用者に90万円を支払いました。同時にB社というファクタリング会社に、同じ100万円の売掛債権を持ち込み手数料10%で譲渡しました。B社は、ファクタリング後、利用者に90万円を支払いました。
利用者は、100万円の売掛債権で、A社とB社それぞれから90万円ずつ合計180万円を手に入れたことになるのです。
しかし、これはれっきとした犯罪であり、詐欺行為です。悪意を持っていなくても、二重譲渡をおこなった場合は、詐欺罪に訴えられます。
仮に、売掛債権がすでに譲渡されたものと知らずに二重譲渡をしてしまった場合でも例外ではなく、詐欺行為として訴えられる可能性が高いです。
不正利用者にならないためにファクタリングのルールを熟知しておこう
意図的な計画倒産や虚偽の書類での詐欺行為は、組織的に行う大掛かりなものです。その一方、入金された売掛金をファクタリング会社に支払わなかったり、1つの売掛債権を複数社にファクタリングして資金調達をしたりすることは、横領罪や二重譲渡詐欺罪となることも覚えておかなければなりません。
審査の際は、ファクタリング会社を欺く行為をしないように、ファクタリングのルールをよく熟知して臨みましょう。