ファクタリングは、融資やビジネスローンに比べ、知名度の低い資金調達の方法です。利用者は、ファクタリング会社に売掛債権を売却し資金化を図ります。あくまでも売掛債権の売却なので、利息や返済義務はなく、審査も融資などに比べると緩めです。
しかし、全ての審査が通るわけではありません。ファクタリング業も金融業なので、信用情報機関で照会を行います。
ここでは、ファクタリング審査の際に照会される3つの信用情報機関である、登記・帝国データ・東京商工を徹底解説していきます。
このような話題を上げると心配される人もいるかと思うのですが、多くのファクタリング会社は登記を行わないようにしています。理由は単純でお客様が嫌がるためです。それにより他社を利用されては利益を得られないためです。
ただし審査をする際には、お客様から購入しようと考えている債権が登記されていないかをチェックするケースがほとんどです。なぜなら登記されている売掛債権は購入しても意味がないためです。
登記とは?債権の権利を保護するもの
登記とは、個人、法人をはじめとする動産や不動産、物権、債権などの権利や義務を不動産登記法や商業登記法などの手続法により保護するとともに、円滑な取引を実現するための法制度のひとつです。
つまりファクタリングの場合、事業者から譲渡された売掛債権を、ファクタリング会社が登記することで、その売掛債権はファクタリング会社が持っているものと定めるものです。
ファクタリングの法的エビデンス
ファクタリングを始めるためには許認可の必要がなく、誰でも参入することができてしまいます。中には悪徳業者が介入するといった噂も。ファクタリング会社を装った業者から被害を受けたという話も時折耳にします。
しかし中には反対に、ファクタリング会社が利用者によって詐欺に合うケースも少なくありません。売掛先や売掛債権の信用性を重視するだけでは、ファクタリング会社にとって不利益な状況に立たされる場合があるのです。
そこで法的エビデンスとして用いられるのが売掛債権の登記です。ファクタリング契約の登記とは、債権譲渡したという事実を指し、ファクタリング利用者の有する売掛債権をファクタリング会社へ譲渡することを法的に証明します。ファクタリングにおける債権譲渡登記のメリットは、
- 二重譲渡の防止
- 焦げ付きへの対抗策
が挙げられます。債権譲渡登記をすることで、ファクタリング会社はトラブルが起きた際に、売掛元に対して権利を主張できるのです。
ファクタリング会社によっては、登記なしでもファクタリングが可能なところもあります。しかし、手数料が割高になったり、買取金額に制限があったりする場合が大半です。
法務局でチェックされる
ファクタリングの法的エビデンスでもある登記は、ファクタリング会社にとってデメリットは一切ありません。一方、利用者側からみれば、ファクタリング会社へ債権譲渡を行ったことが開示され、法務局へ行けば誰でもチェックすることが可能です。
2社間ファクタリングは、売掛先の承諾が不要なファクタリングです。売掛先に売掛債権を譲渡したことが知られたくないために、手数料が割高でも2社間を選択する利用者もいますが、売掛債権登記をすれば、売掛先にファクタリングをしたことが発覚する可能性が高くなるのです。
照会情報機関とは?
法的エビデンスの登記は、ファクタリング会社への保険といった要素が高いですが、もう1つファクタリングにとって大きな要素は信用性の高さです。それを見極める材料として利用されるものが、信用情報機関です。
照会情報機関とは、会社の創立年月日や住所、代表者名といった項目から取引銀行や年商といった細部の情報が登録されている機関のことです。
何を照会されるのか?
ファクタリングは基本、利用者の情報は審査対象にはなりません。売掛債権を買い取るため売掛先の信用性に重点的に審査します。
会社概要や代表者の情報
最近では、個人事情主向けのファクタリングも増加しています。しかし原則ファクタリングは、法人向けの売掛債権でなければ資金化ができません。照会される情報は、売掛先の経営状態はどうなのか、代表者は会社の経営状態を把握できているか、個人事業主ではないか、といった内容です。
回収できるかを判断するための情報
ファクタリングは、緊急の資金調達をすることで財務基盤の安定化を図る方法です。効率の良い資金化が可能ですが、頻繁に活用するものではありません。例えば、頻繁にファクタリングをしていれば、借入の返済状況や、口座の情報などから経営状態をチェックし、ファクタリングをする売掛債権が回収できるものであるのかを判断します。
照会内容によっては審査に通らない場合もある
ファクタリング審査の重点は売掛債権であり、利用者の情報ではありません。利用者が負債を抱えていたり、財務基盤の微弱さゆえ、融資を断られたりしているような状況にあっても、売掛債権の内容次第ではファクタリングで資金調達ができる可能性はあります。
帝国データと東京商工
ファクタリング審査の軸となる信用情報機関は、どれだけ信憑性のある情報を得ることが可能なのか、日本を代表する信用情報機関である帝国データバンク(帝国データ)と東京商工リサーチ(東京商工)の役割について解説していきます。
帝国データの役割
帝国データの役割は、企業の信用情報の調査とデータの保管です。 信用情報とは、物やサービスを販売した時に「買い手企業に支払能力があるか判断する情報」のことです。
例えば、製造業を営むA社が、売掛先であるB社に商品を納品し請求したとします。しかし、B社には支払能力がなく倒産しました。これによりA社は、不良債権を抱えることになり、材料費や人件費などの支払ができなくなります。この影響でA社は連鎖倒産に追い込まれてしまったというケースです。
このとき、A社がファクタリング会社にB社の売掛債権を売却していたら、ファクタリング会社が売掛金の回収不能を被ってしまいます。ファクタリングを行なった売掛債権の金額によっては、ファクタリング会社が倒産の危機に追い込まれてしまう危険性もあるのです。
このようなリスクを防止するために、売掛先の信用情報が必要です。それを調査してくれる役割を持つ機関が帝国データなのです。
東京商工の役割
東京商工の役割は、与信管理のための調査です。与信管理は、聞きなれない言葉ですがファクタリング審査の重要なポイントです。
販売したものやサービスが現金化するまでにはいくつかの工程があります。
- 販売により発生する売掛金
- 売掛金回収により発生する小切手や受取手形
- 小切手や受取手形の取立により入手する現金や預金
この1~3の工程が与信であり、物やサービスを提供してから代金回収をするまでの間を【信用の供与=与信】といいます。与信金額が増大すれば、不良債権や焦げ付き発生のリスクが高まります。売掛債権は増大しても損害の発生は抑制しようとするのが与信管理なのです。
与信管理は、相手先の「信用調査」と与信金額に限度を設定する「与信限度の設定・運用」の2大業務があり、東京商工は、その業務を担う役割をしています。
照会データ次第でファクタリング通過率が変わる
ファクタリングで最も重要とされるのは売掛先と売掛債権の信頼度です。一見すると安定した経営を続けているようにみえる企業でも、情報機関から入手した情報と相反することも考えられます。ファクタリング会社にとって売掛債権の回収不能を避けるために、照会データ次第ではファクタリング審査に通過しない場合があることを念頭に入れておきましょう。