ファクタリングは古い歴史を持っている 遠い昔から金融施策としてのシステムは確立されていた

経済産業省も推奨する資金調達の方法で注目されているのがファクタリングです。

しかし、日本における一般的な資金調達の方法は融資やビジネスローンが主流で、いまだファクタリングの知名度は低い傾向にあります。多くの企業が、売掛債権を休眠状態の財源として保管しているのが現状です。

売掛債権を現金に変える画期的な資金調達方法であるファクタリングですが、実は、権利や金銭の流通を促す金融サービスとして、遠い昔の紀元前より確立された金融施策なのです。

ファクタリングの歴史?いつから行われている?

ファクタリングの歴史?いつから行われている?

ファクタリングは、売掛債権を扱う金融サービスです。数ヵ月先でなければ資金化できない売掛債権を、速やかに現金として受け取ることができるありがたいサービスですが、いつ頃からはじまったのでしょうか。

最古は16世紀のイギリスから

ファクタリングが誕生したのは、16世紀のイギリスといわれています。イギリスの商人がアメリカ大陸の植民地との交易に用いたことが最初のファクタリング取引なのだとか。当時のイギリスでは、植民地のアメリカへ移住する人が多くいました。そのため、植民地で必要な物資を購入するために、イギリスと貿易を行っていたのです。

貿易をスムーズに行うために利用していたのが、イギリスのファクタリング仲介人であるファクターと呼ばれる人たちです。移住者たちはファクターを通して商売を行い、アメリカの毛皮や材木などをイギリスで販売する権利を与ました。その代わりとしてイギリスの小麦や布などを提供してもらうといった仕組みを確立しました。

しかし、当時のイギリスでは、支払の保証という名目でファクタリングが使われていたので、資金調達方法としての意味合いはありませんでした。

アメリカが現在の形を作った

20世紀になると、イギリスからアメリカへの輸出が低迷していきました。それに伴い、アメリカのファクターは、販売代行の仕事から資金提供や信用調査の仕事へと特化するようになりました。それが現在のファクタリング会社に近い形態になっていったのです。

そして1965年頃には、ファクターがイギリス、西ドイツ、フランスなどに支店を開設し、再びファクタリングがヨーロッパに展開されるようになります。 その後、東アジアの主要国やオーストラリアなどの地域を拡大し、世界中に現在のファクタリングが広がっていきました。

初期のアメリカのファクターは独立して業務を行っていましたが、1970年代に入ると多くのファクターが銀行に吸収され、ファクタリングを含む、融資などの金融サービスを提供する大規模な金融機関に成長したのです。

日本ではいつからファクタリングが利用され始めた?

日本ではいつからファクタリングが利用され始めた?

長い歴史の中で培われてきたファクタリングですが、日本ではいつから資金調達の方法として用いられるようになったのでしょうか。

実は高度経済成長期から

日本におけるファクタリングの歴史は浅いです。とはいえ、実は高度成長期に売掛債権を売却して資金化する金融サービスとして確立されていました。ファクタリングは、一部の事業者で認知され、ファクタリング会社も存在していたのです。

しかし広まらなかったのには日本人特有の習慣が影響していた

ファクタリングがこの時代にあったにも関わらず、日本では広まらなかったのには理由がありました。

手形決済が主流

1970年代の日本は、都市銀行系子会社を中心とした債権回収や信用調査などを兼ねたコンサル業で主に活用されてきました。当時の日本では、現金取引より手形での契約が主な決済方法であり、また手形割引も一般的に行われていたのです。手形割引は、ファクタリングと資金調達の目的が被ることから、ファクタリングそのものが注目されていなかったのです。

信頼関係を重んじる習慣

日本での商取引で昔から重きをおいてきたのが、売掛元と売掛先の信頼関係です。日本は約束を守る、時間を守る、といった誠実さや信頼を重んじる風潮が根強くあります。

高度成長期の頃のファクタリングは3社間ファクタリングが主流でした。この3社間とは、利用者とファクタリング会社、そして売掛先の承諾の上で取引が行われます。ファクタリングは正当な資金調達の方法ですが、売掛先に期日前の売掛債権を資金化することが知られると、企業間の信頼関係を揺るがすことになりかねないと躊躇されてきたのです。

ファクタリングは今後さらに広まる?

ファクタリングは今後さらに広まる?

1991年をピークにバブル経済が崩壊すると、金融機関による企業への融資は厳しくなり、手形決済が減少していったことで日本経済は不況になりました。また、倒産する企業が増加したことで売掛債権の回収不能も増大しました。

この売掛債権の未回収、回収不能は現在でも実際に起こっている問題です。そこで、売掛債権を売却して資金化を図る画期的な方法としてファクタリングを日本政府が推進するようになったのです。

債権法改正が行われ2020年4月から施行される

現行の債権法は、債権譲渡禁止特約が設定されている債権は売却譲渡ができません。これが、ファクタリング会社にとって取引のハードルとなっていたのです。売掛先はファクタリングをされると、

  • 支払先が煩雑になる恐れがある
  • 譲渡先の信ぴょう性を確認することができない

これらのリスクを背負う可能性がでてきます。そのため、大手企業を中心に売掛債権に債権譲渡禁止特約をつけたがる傾向がありましたが、今回、120年ぶりとなる民法の大幅改正が行われ、2020年4月1日から施行されることで、ファクタリングの取引におけるハードルが低くなるのです。

ニッチなファクタリング業者も徐々に増え始めている

債権法の改正により、ファクタリング業者は増加傾向にあります。ファクタリン会社は、売掛債権を買取り後に現金を回収するため、少しでもリスクの少ない信用性のある企業のみの買取りをしていました。

しかし、ファクタリングに対する認知度や法規制のハードルが低くなったことで、給与ファクタリングやフリーランス専用ファクタリングといった、新しいジャンルでの取引を行う業者が徐々に増え始めたのです。

ファクタリングの一般化で経済成長が起こる可能性大

ファクタリングの一般化で経済成長が起こる可能性大

ファクタリングは、長い歴史を経て現在の形を確立しました。しかし、日本では売掛債権が流動化されることなく、休眠状態が続いていたのです。しかし、ここへきて債権の電子化に伴い、以前にも増して債権の流動は活発になってきました。

今後、ファクタリングが一般化されれば、中小企業にとって、なくてはならないメインの資金調達方法として発展していくでしょう。また、フリーランスや個人資産である給与もファクタリングが可能となることで、ファクタリングによる資金化が一般化され、経済成長が起こる可能性がさらに大きくなるのです。