売掛債権を売却して資金を調達するファクタリング。融資と違い、借金にならないということや、資金化に至るまでの審査が緩いとも言われています。しかし、いくら緩いといっても、審査で落とされてしまうことも少なくありません。
ファクタリングの審査が緩いというのはウソなのでしょうか。ここではファクタリングの審査に落ちる理由について詳しく解説していきます。
ファクタリング審査に落ちる理由は?
ファクタリングの審査に落ちる最大の理由は、「売掛先の問題」と「売掛債権の問題」です。それぞれの問題とは一体何なのでしょうか。
売掛先の問題
売掛先の問題として真っ先に挙げられるのが、「経営状況」です。ファクタリング会社は、売掛債権を買い取り、後日入金される売掛金から収益を得るのが目的です。もし万が一、ファクタリング取引後に売掛先の経営状況が悪化して、破産や債権回収不可という状態になったらファクタリング会社が大損をしてしまいますよね。
ファクタリングは償還請求権無し、ノンリコースの取引が基本です。償還請求権とは、ファクタリングした売掛債権が回収不能になった場合、ファクタリングで資金を得た売掛元に損害金を請求できる権利のことです。ファクタリングの強みとして、償還請求権無し=リスクヘッジが挙げられます。
売掛先を十分に審査しないままファクタリングを行なってしまうと、売掛債権が回収できなくなった場合のリスクが大きく上がってしまいます。売掛金の回収ができなくなったからといって、売掛元に請求することができないのがノンリコース、つまり償還請求権の無いファクタリングです。今では、ノンリコースのファクタリング取引が一般的ですから、売掛先の経営状況に問題があれば、審査落ちしてしまう可能性がかなり高くなってしまうのです。
売掛債権の問題
売掛先はもちろんですが、売掛債権そのものの問題もあります。ファクタリング会社の懸念材料として、
- ねつ造された売掛債権ではないか?
- 存在しない売掛債権ではないか?
- グループ会社などの実際のサービスや商品の対価でないもの売掛債権ではないか?
- 提供役務が不明瞭な売掛債権ではないか?
- 一過性の売掛債権ではないか?
などが挙げられます。どんなに、高額な売掛債権だとしても、その存在が悪用されて資金調達を申し込まれてしまうと、リスクどころか詐欺被害に遭ってします可能性もあります。
そこでチェックされるのが、売掛債権の成因資料、エビデンスです。売掛債権の基本契約書や発注書、請求書など売掛債権が発生したことを証明するエビデンス資料が少ないほど、ファクタリング通過率が下がってしまうのです。
利用者は審査されないと思っていると痛い目を見る?
ファクタリングの審査は基本的に利用者である売掛元は審査対象になりません。銀行系ファクタリング会社ならまだしも、民間ファクタリング会社は売掛先と売掛債権が審査されます。しかし、売掛先や売掛債権に問題がなくとも審査落ちすることもまれにあるのです。
意外に見られている人柄や誠実さ
ファクタリング審査は売掛先と売掛債権が対象ですが、やはり人と人との交渉です。人柄や誠実さも見られています。最近ではネットの口コミなどもチェック対象になる場合もあるんだとか。
契約の相談時など、ファクタリング会社の担当と顔を合わせるときに、横柄な態度を取っていないか、資金調達で焦るあまり暴力的な言葉遣いになっていないかなど、基本的なマナーを守ることが重要です。特に後者は、反社会勢力や暴力団と誤解されてしまう可能性もあります。
絶対に言葉遣いには注意してください。
個人事業主はそもそも利用できない
個人事業主は基本的にファクタリングを利用できません。結構勘違いされていますが、法律上、売掛債権の譲渡は法人格のみが行なえる金融取引です。ただし、3社間ファクタリングであれば、実質的に売掛先とファクタリング会社という法人格同士のやり取りの中で資金調達を行なうため、個人事業主でも利用できます。
2社間ファクタリングで、申込企業が個人事業主の場合は、ファクタリング取引そのものができませんので、審査落ちどころか、審査さえしてもらえないのです。
債権法の改正で審査通過率がアップ?
2020年4月から施行される債権法(民法466条)の改正に伴い、ファクタリングの審査通過率が大幅に向上すると予想されています。この債権法の改正がいかにしてファクタリングの審査率アップにつながるのでしょうか。
債権譲渡禁止特約付きでも売却譲渡が可能になった
これまでのファクタリングで買取対象になっている売掛債権は、債権譲渡禁止特約が無いものに限定されていました。債権譲渡禁止特約がある売掛債権に関しては、民間のファクタリング会社はもちろん、銀行系ファクタリング会社でさえも買取ができませんでした。
しかし、債権法の改正によって、債権譲渡禁止特約がある売掛債権でも、第三者へ譲渡できるようになります。これにより、売掛債権を早期資金化したくて困っている中小企業の経営者は、今まで以上にファクタリングによる資金調達がしやすくなりました。
ただし対抗措置もある
債権譲渡禁止特約のある売掛債権を第三者に譲渡する場合は、売掛先にその旨を通知することで譲渡が可能です。譲渡の事実を売掛先が知らなければ、譲渡先(ファクタリング会社)への支払いを拒否し、当初の譲渡人(売掛元)へ支払うことで対抗できます。
どうしてこのような対抗措置が作られたのかというと、売掛債権の譲渡先が全うなファクタリング会社であれば問題ありませんが、暴力団や闇金、反社会的勢力が運営するファクタリング会社の場合は、債権譲渡によってコンプライアンス的な問題も生じてしまうためです。
もう一つの対抗措置は、ファクタリング会社に有益な措置です。これまでのファクタリング取引では、売掛債権が回収不能になってしまった場合、登記をしない限りは債権額の取り立てなどの回収ができませんでした。債権法の回収により、このファクタリング会社が丸損してしまう仕組みが改善されたのです。
売掛先が期日通りに売上金を入金しなかった場合、最初に売掛元から売掛先に入金の催促が行なわれます。その催促で入金に応じれば問題ありませんが、応じなかった場合、譲渡されたファクタリング会社から直接売掛先企業に支払いを求めることが可能です。
売掛元と売掛先の信用関係により、売掛元が泣き寝入りするしかなかった状況が、ファクタリング会社の介入によって、泣き寝入りしなくても良くなります。第三者であるファクタリング会社が売上金の入金催促を行なっても支払いに応じない場合には、遠慮なく法的措置を取ることができるのです。
ファクタリングの審査が通らないのは売掛先と売掛元に問題があるから!
ファクタリングの審査が通らない理由は、主に売掛先と売掛債権に問題があるからです。ファクタリングの審査は融資審査よりも緩く、資金調達がしやすいと言われていますが、審査が緩いのではなく、審査対象そのものが違う為、申込者である売掛元の財政状況が審査に影響しないことを指しています。
売掛先や売掛債権に問題があれば、審査通過はかなり難しくなります。資金調達をするのは重要なことですが、ファクタリング申込時には、審査落ちする可能性もあることを覚えておくべきなのです。