一般のファクタリング平均利用額は約250万円です。多くのファクタリング会社は、上限額を5000万円~億単位に設定していますが、実際に利用されている金額は5000万円の10分の1にも満たないのです。ではどうして500万円以下の少額取引が多いのでしょうか?
ここでは、ファクタリングの平均利用額と少額取引が多い理由、そして少額取引時の注意点について解説していきます。

平均利用額は業種によって異なる?

平均利用額は約250万円ですが、これは全てのファクタリング取引の平均値です。平均利用額は業種によって異なるのが一般的です。ここでは、ファクタリングの平均利用額の違いについて解説していきます。

小売業と建設業では売掛金も桁が違う

業種によって売掛金の額は大きく異なります。そもそも何が違うかというと、一人(一社)ごとの仕事の単価です。レストランを一人当たり1000円の単価客単価だとすれば、大きなビルを建てる建設業は数十億円です。

もちろん比較できるものではありませんが、売掛債権は一人(一社)につき1つが原則です。そのため、顧客単価の違いは、ファクタリングできる売掛債権額の違いに直結します。ファクタリング可能な業種の中では、建設業や製造業など、売掛債権額が大きい業種は、上限額を目安にしてファクタリング会社を検討しているケースが多いようです。

逆に、小売業のような顧客単価が低い業種は、買取下限額を目安にしています。もちろん取引額が逆転する場合もありますが、業種によって平均利用額が異なる理由は顧客単価の違いにあるということですね。

業種よりも企業規模で異なることが多い

業種はもちろんですが、企業の規模で異なる場合も多いです。ファクタリング取引が数千万円~数億円規模であることは稀です。ほとんどが数十万円~数百万円の債権ではありますが、債権額は企業規模や顧客毎の単価にも左右されます。

一概に、債権額が大きいのはこの業種、債権額が小さいのはこの企業という風にならないため、平均利用金額が小さく計算されてしまうのです。

少額取引が多い理由とは?

少額取引が多くなってきた理由の1つとして、ファクタリングを利用する企業が、ファクタリング取引の知識を向上させてきたという理由と、少額の債権が原因で、倒産の危機に陥る企業が多くなってきたことが挙げられます。

ファクタリングは国も推進している資金調達方法である

ファクタリング取引による資金調達は、日本政府も推奨している金策です。

ファクタリング自体はそれほど新しい資金調達方法ではありません。日本には、1970年代初頭に登場しました。しかし、当時は高度経済成長期ということもあり、手形取引や現金取引が主流であったため、それほど話題にもなりませんでした。

しかし、近年になって中小企業の資金繰りの悪化や、金融機関の貸し渋りなどの日本経済の停滞により、負債にならない資金調達方法として注目され始めました。特にここ2,3年ではファクタリング取引が盛んに行なわれ、ファクタリング業者数も右肩上がりで増加しています。

ファクタリングが一般化したことにより、効果的にファクタリングをする企業が増えてきました。つなぎ資金としてだけではなく、企業の財務状況を改善させるためのファクタリング利用も徐々に増えてきています。それに伴って、ファクタリング業者も、ファクタリング取引だけではなく、コンサルティング業などを同時に行ない、顧客の資金調達をサポートするようになってきたのです。

そのため、大口の投資などにはファクタリングによる資金調達ではなく、銀行融資などを利用し、少額のつなぎ資金などにはファクタリングという具合に使い分けをしているのです。それが結果的にファクタリングの平均利用額を下げる要因になっているのです。

少額の売掛債権で倒産するケースも

企業にとって、売掛債権の入金遅れや回収不能は黒字倒産のリスクになります。

中小零細企業や個人事業主ほど、企業の体力といえる流動資産が少なく、ギリギリの状態で営業している現状があります。そのため、売掛債権の未回収があると、支払わなければならない経費などが支払えず、少額であっても倒産してしまうリスクがあるのです。

売掛債権は帳簿上、黒字で計上されます。しかし実際には手元に流動資産が無いため、経費などの支払いは売掛債権の入金を待って行なわれるのが一般的です。しかし、売掛先の都合(経営難など)によって本来の入金日に遅れてしまうケースがあります。売掛元は、債権の入金を頼りに資金計画を立てますから、入金自体が無ければ計画そのものが狂ってしまいます。

だからこそ、少額でも対応できるファクタリングを利用して、入金日までのつなぎ資金を確保しなくてはいけないのです。

平均利用額はあくまでも目安?最大と最小限度額はいくら?

ファクタリングの平均利用額はあくまでも目安です。業種や企業規模によっても異なります。では最大上限と最小限度額はいくらなのでしょうか?また、ファクタリング利用額に伴う注意点には何があるのでしょうか?

最大は億。しかし額が大きいほど審査通過率は下がる

ファクタリングの最大上限額は、ファクタリング会社によっても異なりますが、3億円~5億円までファクタリングできる業者もあります。高額なファクタリング取引は、メガバンクや旧財閥グループなどが親会社になっている業者が行なっています。

しかし、ファクタリング利用額が大きいほど、審査が厳しくなり、場合によっては審査通過できなくなる可能性もあります。対策としては、売掛債権全額をファクタリングするのではなく、一部だけのファクタリングや少額の売掛債権を複数ファクタリングして資金を調達する方法が効果的です。

債権額が大きければ大きいほど、手数料で差し引かれる売上は目減りします。少額債権であれば、手数料が発生しても、確実に資金調達ができるわけですから、つなぎ資金としては充分な額を確保できるのです。

ファクタリングで得る資金の大きさも重要ですが、確実に資金化できる債権をファクタリングすることも同じように重要だということを覚えておきましょう。

最小の場合は手数料に注意

最小の場合も、ファクタリング会社で異なりますが、5万円程度の債権を資金化できる業者が存在します。2020年4月から施行される債権法改正によって、今以上にファクタリング業者が増えることが予想されています。

中には、給与ファクタリングや、フリーライター専用のファクタリングなど、これまでのファクタリング対象業種以外の債権の買取にも対応しはじめているのです。

少額のファクタリングの注意点は、手数料です。手数料は債権総額にかかるもので、100万円の債権で手数料が10%であれば、90万円(実際は掛け目もあるため、さらに下がる)がファクタリングを利用して得る資金ということになります。

また、少額債権の場合は、ファクタリング業者も利益を出しにくいため、通常の手数料よりも高めに設定されていることが多いです。ファクタリングを申し込む前に、検討しているファクタリング業者に確認を取って、概算でどれぐらいの資金が手元に残るのかを確認してから利用しましょう。

少額取引を活用して効果的な資金繰りを

ただ闇雲にファクタリングを利用して資金調達をすればいいという訳ではありません。ファクタリングには手数料が発生するため、本来手元に残る利益は大幅に下がります。少額であれば業者の手数料に気を配る必要もあります。

計画的なファクタリング取引を行なうことで、ファクタリングに依存しない財務体力を向上できます。少額取引を利用する場合には、きちんと経営計画を見直した上で、会社の将来的な利益確保につながるように行なうことが重要なのです。効果的な資金繰りは、柔軟性のある財務計画と、効率的なファクタリングを併用することで、最大限の結果を生むことにも繋がるのです。