銀行融資を受ける際、とくに重要視されるのが「稟議書」です。稟議書は、銀行側が行う審査の際に必須な書類です。銀行融資の担当者が銀行内の複数の人に稟議書を閲覧してもらい、一時的な合否をそれぞれ決めます。その結果を踏まえて、銀行内にいる最終決定者が融資の判断をします。

そのため、稟議書の内容や記載の仕方によって、審査の合否が大きく変わる可能性もあるのです。銀行融資に必要な稟議書の内容は、主に下記のような項目を記載します。

  • 貸主に対して融資しようとしている額
  • 銀行側の融資条件
  • 貸主が返済する期日

今回は銀行融資の審査がどのような流れで行われて審査の判断がされるのか、また稟議書を作成してもらう際に気をつけたいポイントについてお話ししていきます。

銀行融資の担当者が稟議書を作成

稟議書は融資を申し込む会社が作成するのではなく、銀行内での融資担当者が作成します。稟議書とは、組織において会議の時間を減らすため、担当者が書類を作成して関係者に回覧してもらい、同意のための捺印と承認をそれぞれもらうことです。

つまり銀行融資においては、稟議書を閲覧した複数人の融資担当者が「融資をしてもいい」という捺印と承認がなければ、稟議は通らず審査に落ちてしまうのです。

銀行の規模が大きければ、それだけ融資の数が多く見込まれます。その都度会議を開いていては、他業務に差し支えることが予想されます。そのため、銀行融資では稟議書を用いて融資審査の合否を決めているのです。

稟議書のクオリティで決まることがある銀行融資

稟議書の作成は、融資担当者が行います。事業者との面談や提出書類などの情報などを基に内容を記載していきます。銀行融資は稟議書の内容から合否が決まるので、ここで記された情報が融資に直結すると言っても過言ではありません。

そこで重要となるのが、銀行融資担当者の稟議書を作成するレベルです。書類作成のレベルは「銀行融資に携わってきた期間がどれぐらいか」によって異なります。経験豊富な担当者ほど、多くの稟議書を作成しているため、審査に通りやすい稟議書が作られやすくなります。審査に通りやすい稟議書とは、記載する必要情報が細かく精査されている稟議書のことです。

しかし、事業者側から銀行融資の担当者を選ぶことはできません。だからこそ事業者は担当者の稟議書作成レベルに左右されないようにするためにも、稟議書作成に必要な情報を嘘偽りなく提示することが大切です。また、銀行融資のための稟議書にはどのような情報を提示すればいいのか、専門家に意見を求めるのもいいでしょう。

稟議書の社内決裁がおりるまで

銀行融資を受ける際、必ず審査が行われます。審査対象となるのが「稟議書」です。審査を行う銀行の担当者を納得させるためのデータや数字を提出する必要があります。

それだけ重要な稟議書が銀行でどのような流れを通り決裁に至るのでしょうか。

  1. 稟議書を銀行融資の担当者が作成をする
  2. 稟議書が銀行内で回覧され、銀行融資の別担当者複数人で一次判断
  3. 一次判断を基に支店長が決裁判断を行う
  4. 決裁判断が妥当かどうか、本部部長や役員が最終的な判断をする

おおよそこのような流れで進み、場合によってはメインバンクの本店まで稟議書が回覧されることになります。同様の流れで回覧された稟議書は、内容を確認した上で最終責任者(支店長や本店融資担当責任者)が決裁の判断をします。

審査に通りやすい稟議書を作成してもらうために事業者側ができること・注意点

融資審査に必要な稟議書は事業者側が作成する書類ではありません。融資を申し込んだ金融機関の担当者が稟議書を作成して、その作成した稟議書をベースに審査が行われます。だからといって事業者側はなにもしなくてもよいというわけではありません。

融資担当者に審査に通りやすくなる稟議書を作成してもらうためのサポートをする必要があるでしょう。ここでは、審査に通りやすい稟議書を作成してもらうために「事業者側ができること」や「注意点」についてお話ししていきたいと思います。

SWOT分析表を会社の基本情報に記載する

稟議書に絶対必要になるのが基本情報です。とくに会社の提供価値は経営戦略を練る上で重要な指標となります。事業主は銀行融資の担当者にしっかりと伝えられるよう、会社の強みや弱みを把握して言語化できる準備をしておくことが大切です。

あらためて今の事業に対しての方向性や脅威を把握する際には「SWOT分析」という、経済分析のひとつが利用されます。

SWOT分析とは「Strength(強み)」「Weakness(弱み)」「Opportunity(機会)」「Threat(脅威)」といった4つの要素から分析をする方法です。

競合他社と自社のSWOT分析を作成して、自社は今後どのような戦略で展開していくのかを融資担当者に伝えられれば、稟議書に具体性が生まれやすくなるでしょう。融資する銀行側も申し込んだ事業者が具体性を持って融資を希望していることがわかるので、審査時のポイントが高くなると予想されます。

返済計画表を添付して長期的でも確実に返済できるイメージをもたせる

銀行融資で申し込む際は「長期的な返済ができるかもしれない事業者だ」と銀行側に印象づけることが重要です。融資のためのヒアリングを受ける場合には、返済計画も一緒に銀行側に渡すといいです。

「希望する融資額」や「返済期間はどれぐらいの期間をイメージしているか」を計画書に記載します。借りたのちに、何に資金を充てるかも一緒に記載しましょう。返済方法についてアバウトな数値で答えるよりも、自社のデータを利用しながら返済計画書を提出することで、信憑性が上がります。

できるだけ中期〜長期で試算した返済金額や理由もお話しすると、稟議担当者が稟議書を作成する際により具体的に準備がしやすくなると言えます。

推移グラフを用いた年度別の決算数値を出す

「賃借対照表」や「損益計算書」は、事業の主な数値が年度ごとに、そして推移グラフで比較して書かれていると融資担当者に伝わりやすいでしょう。直近の年度別試算表や今期の決算見込みなどもあるとよいです。

返済計画書と一緒に提出する際は、年間のキャッシュフローが返済額より高いことが重要です。年間を通じて赤字が続いている場合、返済見込みがないように見えてしまうため審査通過率が低くなってしまいます。

万が一赤字が続き、返済見込みがなく感じる計画になりそうな場合は「融資を受けた場合の打開策」を記入するのがオススメです。少しでも「返済ができる」計画を立てて、融資に臨みましょう。

担保とする資産に問題はないか

銀行融資の際に「担保」とする資産は「返済が滞った場合に融資金を回収するためのもの」です。融資した段階では月々の返済ができていても、将来確実に経営状態がキープか上り調子になるとは限らないからです。

経営状態が悪くなり、最悪の場合倒産してしまうと融資金の返済はできません。その保険として銀行側は「お金」の代わりに「資産」を回収して融資金に充てます。そのため、銀行では担保の保全状況をチェックし、担保とした現金化できる資産なのかどうかを確認する必要があるのです。

他行の「融資残高や支払い遅延があるかどうか」もチェック対象

他の銀行からすでに銀行融資を受けている場合、その返済状況などもチェック対象となります。延滞や残高が多く残っている場合、今回新しく融資しても返済できなくなる可能性があるからです。

チェック対象は銀行だけではなく、事業用のクレジットカードなども対象になります。日頃からうっかりミスで支払い金滞納をしないように心がけましょう。

稟議書は最終的に稟議担当者の評価がすべて

融資担当者は事業者からの情報を元にして作成します。担当者から見て「融資しても問題ないか」「上司に判断を仰いで合否の判断を決めた方がいいのか」などの意見も記載されるのです。つまり融資担当者との最初の面談は、稟議書作成においていちばん最初に突破しなくてはならない関門です。

融資担当者は日々の融資に携わっているわけですから、他社の融資内容や資料もたくさん見てきています。事業者の資料は他社と比較されることは当然あります。クオリティの低い資料を提出すると、すぐに気づかれるでしょう。期待通りの結果にするためにも、しっかりとしたデータを持ち込む必要があると言えます。

審査を通す前に他の銀行融資の商品と予定金利を比較する

適用される予定金利を判断するのは銀行融資の担当者です。基本情報や決算数値、希望の融資条件などを考慮したうえで仮の予定金利が設定されます。融資商品や銀行の規模にも左右され「固定金利」か「変動金利」かが変わってきます。

稟議書作成前に提示された金利を確認したうえで、他の銀行融資商品と比較しながらより安い融資商品を検討するのもいいでしょう。

銀行融資を確実に受けたいなら、稟議書の内容を明るく計画的なものに

銀行融資の審査を確実に通したいならば、融資の返済内容が計画的で先行きの明るいものにする必要があります。銀行融資の担当者と交渉しつつ、金融のプロ、専門家からサポートを受けつつ銀行と話し合うのも1つの方法でしょう。

銀行はボランティアで融資をおこなっているわけではありません。また融資審査は何度も受けられないので、審査に落ちた時のために複数の資金繰りの方法を考えておく必要もあります。

売掛金があるならばファクタリングや売掛債権担保融資、不動産があるならば不動産担保融資やハウスリースバックといった具合に、複数の資金調達方法を検討しておくとよいでしょう。