緊急時に有効な資金調達方法として「ビジネスローン」、「売掛債権担保融資」、「ファクタリング」の3つが有効とされています。
ビジネスローンは銀行系とノンバンク系の2つに分かれていますが、ノンバンク系であれば即日で資金調達可能です。
売掛債権(売掛金)を持っている状態であれば、それを担保にして融資を受ける「売掛債権担保融資」や、それ自体を売却して資金調達する「ファクタリング」という方法があります。ファクタリングであれば即日で資金調達も可能です。
目次
緊急時の資金調達方法その1 ビジネスローン
ビジネスローンとは「法人や個人事業主が、事業で必要とする資金を無担保で借りることのできるサービス」です。
ビジネスローンを利用することができるのは事業者のみです。そして事業での利用目的のみでしか利用することはできません。ここでいう事業者というのは、法人の経営者や個人事業主ということになります。つまり一般のサラリーマンは利用することはできません。
ビジネスローンと混同されてしまうのが、銀行による「事業性融資」です。ビジネスローンと事業性融資は「借金」という意味では同じですが、若干性質が異なります。最も大きな違いは「審査方法」と「調達できる金額の上限」にあります。
事業性資金といえば「設備資金+運転資金」と考えてよいかと思います。つまりかなり大きな金額になりえます。大きな金額となるため審査も十分に行うこととなります。
事業性融資の審査方法 審査時間が長い
銀行の事業性融資とビジネスローンの大きな違いの1つとして審査方法が挙げられます。
事業性融資の場合、決算書をもとに融資を申し込んだ会社の財務状況の健全性が格付けされ融資の可否が決定します。
格付けは6つのランクに分類されます。
- 正常先
- 要注意先
- 要管理先
- 破綻懸念先
- 実質破綻先
- 破綻先
正常先であれば基本的には審査に通過するとされています。要注意先や要管理先の場合には、融資額上限が引き下げられるなどの「条件付き」で審査通過するとされます。破綻懸念先以下の格付けでは、審査通過はかなり難しいでしょう。
事業性融資の審査は、銀行スタッフによる会社訪問、経営者との面談など、銀行側としての情報集めが行われます。その結果、担当者が融資は大丈夫だと判断すると「稟議書(りんぎしょ)」と呼ばれている融資決定権をもつ役職に提出するためのレポートが作成されます。
稟議書は銀行支店内で回覧され、支店長が中間決済を行ない、銀行本部の部長や役員が最終決裁して融資が決まるという流れです。複数の工程を経るため、融資が決まるまでは約1ヶ月程度必要となります。
事業性資金、金額大きい。お金、返す能力のある会社にしか貸さない。その能力の判断するのに時間かかる。
ビジネスローンの審査方法 審査時間が短い
事業性融資に対してビジネスローンの審査は非常に短いです。
システムには「スコアリングシステム」という仕組みが使われているため、審査に必要なコストを大幅に削減しており、早ければ即日で資金調達可能となります。
事業性融資の場合は、稟議書を作成するまでに調査や面談など一定の時間を必要とします。ロボットではなく人間がチェックすることになるため、人件費や調査費などのコストがかかるのです。スコアリングシステムは、調査コストの削減を可能にした画期的な審査システムなのです。
スコアリングシステムは決算書データなどを担当者がパソコンに入力します。その入力されたデータを元にコンピューターが過去の同業種や同じ経営規模の企業、現在の経営状況に似た他の会社の融資データを元に、自動的に審査の可否が決定されます。
こうした膨大なデータは「ビッグデータ」と呼ばれており、日本でIT革命が起こった頃に話題にもなりました。このスコアリングシステムを活用したのが「ビジネスローン」なのです。
ビッグデータはさまざまなサービスに利用されています。ビジネスローンの審査では一定の成果をあげていると日本政府に判断されています。スコアリングシステムでは銀行やノンバンクにもよりますが、数分で金利や融資限度額を算出して、スムーズな融資サービスの提供に効果をあげているとされています。
事業性融資に最低でも数週間~1ヶ月以上かかるという点を踏まえても、ビジネスローンは緊急の資金調達には適した金融サービスといえます。
もちろんデメリットもあります。たとえば世間をアッと言わせるような新商品の開発をしようとしても、その新商品の価値まではスコアリングシステムでは判断できません。あくまでも、これまでの実績値から導き出される融資額であるという点は覚えておきましょう。
資金調達する際には、数字では測れないものもある。
緊急時の資金調達方法その2 売掛金担保融資
ビジネスローン以外で、短時間で資金調達する方法として挙げられるのが「売掛債権担保融資」です。支払日がまだ来ていない売掛金を担保としてローンすることです。通称「ABL」といわれています。
売掛債権担保融資(ABL)とは?
売掛債権とは取引先から商品代金をもらう権利のことを言います。商品代金に限ったことではないのですが、取引先に商品やサービスを提供したのちに、対価として提供した商品やサービスの代金をもらいます。その権利を売掛債権といいます。
売掛金という言葉を聞いたことがあるかもしれませんが、これは売掛債権のことです。
つまり売掛債権(売掛金)は商品代金を受け取る権利であるため、その商品代金分の価値があるということです。
売掛債権担保融資では、その価値のある売掛債権を担保として、融資を受けることです。言い方を変えると、売掛債権がなければこのサービスを利用することはできません。
その他、価値のある商品在庫や不動産、農産物なども担保にすることができます。
参照 動産担保融資
売掛債権担保融資のメリット
売掛債権担保融資にはメリットとデメリットがあります。
1.固定資産が無くても資金調達ができる
担保融資の代表格といえば不動産担保融資が有名です。不動産という資産価値があってこそ成り立つ担保融資ですが、不動産を持っていなければ利用できません。売掛債権担保融資は売掛金さえあれば利用可能であるため、容易に資金調達ができます。
2.自社の資産や在庫管理のシステム化ができる
売掛債権担保融資の特徴として、担保にしている商品などの管理と報告が必須という点が挙げられます。これまで管理システムを活用していなかったとしても、売掛債権担保融資を利用することでシステムの構築と運用が促され、結果的に経営がシステム化されてプラスに働くという点もメリットです。
3.金融機関との取引実績が作られ将来的な事業性融資で優位になる
売掛債権担保融資は事業性融資よりも審査のハードルが低いです。売掛金が不渡りにならず、融資先の企業の財務状況も問題が無ければ融資を受けられます。将来的に事業性融資をしてもらうためにも、売掛債権担保融資で取引実績を作り、将来の審査に優位性を持たせることも可能です。
売掛債権担保融資のデメリット
一方でデメリットもあります。
1.審査次第で利用不可になる可能性もある
売掛債権担保融資の審査ハードルが低いからといっても、審査落ちする可能性もあります。売掛先の企業の経営状況や申込みを行なった企業の経営状況に問題があれば、売掛金の不渡りになるリスクも高くなるため、審査落ちする可能性もあるのです。
2.取引先が倒産した場合、自分自身で返済が必要になる
担保融資で返済遅延や返済不可の状態になると、担保にしている売掛金は不良債権化します。本来であれば、期日に支払ってもらえるはずの代金が手に入らないため、売掛債権担保融資の返済ができなくなってしまいます。
返済資金として見込んでいたはずのお金が手に入らなくなるため、自分自身で返済を行なわなくてはいけません。資金力のない会社の場合は、返済が負担になって倒産する可能性もあるのです。
3.融資元次第では会社を乗っ取られる可能性がある
融資元が金融機関ではなくノンバンクだった場合、返済遅延などを理由に会社を乗っ取られてしまう可能性もあります。融資元の会社が悪質な場合に起こりえます。実は融資元の会社が反社会的勢力の子会社だったというケースもあるのです。
違法な取り立て方法(暴力など)で返済を迫ってくるなど、実害が起こる前に警察や弁護士に相談してください。
緊急時の資金調達方法その3 ファクタリング
ビジネスローンや売掛債権担保融資と同じように、短時間で資金調達する方法として注目を集めているのが「ファクタリング」です。
売掛債権担保融資では、売掛債権を担保として融資を受けることができます。一方ファクタリングの場合は、売掛債権を売却して資金調達することができます。早ければその日のうちに資金調達することができ、数ある資金調達方法の中でもトップクラスにスピード感があります。
借金ではなく売却しての資金調達となるため、返済が発生しないというメリットがあります。
他の資金調達方法との違い
ファクタリングは融資やビジネスローンと大きく違い、将来的な借金になりません。売掛債権(売掛金)を売却して、その売却益を事業資金として活用できるのが最大の特徴です。
資金が必要、しかし売掛債権しか手元にない、融資やビジネスローンのように借金になるのは避けたいと考えている経営者に向いている金融サービスです。また、自分の会社が赤字経営で融資審査やビジネスローンの審査に合格する可能性が低い場合でも、資金調達が可能な点も大きな違いといえます。
それは「売掛先の支払い能力が審査の大きなポイントとなるため」です。
売掛債権を持っているということは、売掛先から将来的にお金を支払ってもらえるということです。つまり売掛先がお金を支払う能力を持っていれば、対象となる売掛債権の価値は維持できるのです。
極端な話ですが、売掛債権を持っている会社が潰れそうだったとします。でも売掛先の経営は全く問題なかったとします。通常の融資であれば、潰れそうな会社へ融資をするということはありません。なぜなら返済される可能性が低いためです。
しかしファクタリングの場合は、お金を支払う側の会社の経営が安定している、もしくは安定しているだろうと推測ができればよいのです。
ファクタリング利用時の注意点
メリットが多いファクタリングではありますが、注意点もあります。
- 手数料が発生する
- 取引先との関係性
手数料が発生する
ファクタリングは融資ではないため、月々の返済はありません。しかし利用の際には、買取手数料が発生します。
契約形態にもよりますが、売掛金総額の5%~30%程度を手数料として、売却先であるファクタリング会社に支払うことになります。その手数料がファクタリング会社の利益となるためです。
そして手数料ですが、他の資金調達と比べると高めに設定されています。
取引先との関係性
資金が不足している会社との取引を敬遠する会社も少なくありません。そのため、ファクタリングを利用したことが取引先に分かってしまうと、今後の取り引きに何かしらの影響を与えてしまう可能性があります。
ファクタリングには2種類の契約形態があります。2社間ファクタリングと3社間ファクタリングです。
2社間ファクタリングでの契約をすると、取引先にファクタリングを利用したことは知られません。しかし手数料が高くなります。
3社間ファクタリングでの契約をすると、取引先にファクタリングを利用したことが知られてしまいます。しかし手数料は低くなります。
ちなみにファクタリングを利用する事業者の9割以上が2社間ファクタリングでの契約とされています。
参照 ファクタリング
経営状況に合わせた資金調達方法を選ぶのが大事
ビジネスローンや事業性融資、売掛債権担保融資にファクタリング。企業の資金不足を解消する方法は色々あります。売掛金を活用した資金調達方法は中小企業庁も推奨しています。
銀行だけではなくノンバンクのビジネスローンも計画的に利用すれば、資金不足を解決してくれる方法です。自分の会社に合った資金調達方法を選択して、財務状況の改善や事業運営を行ないましょう。
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