金融機関などからの融資以外の資金調達方法として「事業の売却」という方法があります。それを「M&A」と言います。
「M&A」は敷居の高いものと思われがちですが、現在ではマッチングサイトがあり以前よりもハードルは下がっています。
今回は資金調達を目的とした「事業の売却」がスムーズにできる「M&Aマッチングサイト」について解説していきます。
目次
M&Aマッチングサイトを活用して事業の売却を行ない運転資金を調達する
会社の運転資金を調達する方法の1つとして「事業の売却」があります。
自分の会社が手がけている事業を売却して資金を調達する方法です。
間違いやすいポイントですが、会社売却と事業売却は違います。事業売却とは会社が行っている事業のうちの一部を売却するといったものです。
- 会社売却
会社の所有権をすべて売却して引き渡すこと - 事業売却
会社や組織として行っている事業の一部もしくはすべてを第三者に売却譲渡すること
会社を売却するとなると、会社の所有権、つまり「経営権」を渡すことになります。しかし事業売却は、会社で行なっている事業の一部もしくはすべてを第三者に売却して資金を調達する方法です。
ここで重要なのが「事業の一部もしくはすべて」という点です。事業売却では、事業そのものだけでなく、仕入先や取引先、営業網や運営組織、技術などの無形資産など売却できる範囲を選べるという利点があります。
事業売却の注意点として、売却した事業で利益を得たとしても、利益はすべて売却した相手のものになるという点があります。この辺りは契約次第となりますが、基本的には事業を売却してしまったら、売却した事業から発生する利益を得ることはできません。
ちなみに、中小企業庁でも資金繰りのためのM&Aは推奨されています。
そのような時、「B」の事業を売却するケースがある。もちろん買い手がいればの話だ。
利益を得られると考えるから購入する
たとえば会社の中で効果が見込めないと判断した事業があったとします。それを事業売却しようと考えたとしましょう。
それに対し事業を購入希望の会社が現れたとします。事業を購入しようと考えた会社は、購入しようと考えている事業に将来性を感じなければ購入はしません。
事業を行う会社が変わるだけで、その事業が生きることも死ぬこともあります。
たとえば欧米ではM&Aが頻繁に行われている印象があります。
有名な話でいうと、検索エンジン大手のGoogleは非常に多くのM&Aを手掛けてきました。その中にはAndroidやYoutubeがあります。Googleの資本や知名度が入ることによって、世界中に知られるサービスに成長しました。もちろんこれらのサービスはGoogleが入らなかったとしてもそれなりのサービスにはなっていたかと思うのですが、Googleが主導権を握り経営することで大きな成長を遂げたのです。
つまりGoogleからすると利益の上げられるサービスと判断していたのです。
M&Aマッチングサイトの選び方
M&Aマッチングサイトを選ぶ際、次の4つを基準にして比較検討をするとよいでしょう。
利用者数
利用者数が多いということは、それだけ注目されているサイトということになります。
そして利用者数が多いということは、売り手も買い手も多い確率が高いということになります。
事業売却で資金調達をするにしても、買い手がいなければできません。サイト内の利用者数を強みとして公表しているM&Aマッチングサイトには、それだけ多くの買い手がいる可能性があるということになります。
M&A案件数
M&Aマッチングサイトの中にはM&Aマッチング以外のサービスを行なっているところもあります。
サイト売買や店舗売買などの案件も扱っているM&Aマッチングサイトもあるため「案件数〇〇!」や「安心の案件数!」といったキャッチコピーを鵜呑みにしてはいけません。
あくまでも目的である「事業売却=M&A案件」の数が重要になります。案件数が多ければ、それだけ事業売却がスムーズに進み、資金調達もしやすいということになります。
売り手側:買い手側の手数料
M&Aマッチングサイトでは買い手側に手数料が発生することが多いです。
売り手側は無料で事業売却ができるサイトがほとんどです。買い手側の手数料が安いM&Aマッチングサイトに買い手が集まりやすい傾向があります。
勘違いしてほしくないのが、買い手側の手数料が安いからといって、そのサイトのサービスが悪いということではないという点です。マッチングサイトの目的は、あくまでも売り手と買い手のマッチングです。高い手数料だとしても魅力的な買収ができなければ、利用するメリットがありません。買い手側の手数料が安い=買い手側が集まりやすいと考えるとよいでしょう。
また、マッチングサイトへの手数料の他、売り手や買り手を掲載しているM&A仲介会社等への手数料が発生することにも注意が必要です。
中には高額な手数料が発生するM&A仲介会社もありますので、売り手や買り手と直接交渉しないのであれば、どのような手数料がいくらかかるのか確認しましょう。
参照 「M&A仲介会社の手数料一覧表」決定版!!(外部サイト)
過去実績
M&Aマッチングサイトにも公開されている「マッチング実績」ですが、これは事業売却の成立数の件数ではありません。「買い手側と売り手側が交渉をスタートした回数」になります。
M&Aマッチングはあくまでも「マッチング=お見合い」が目的です。買い手側のニーズと売り手側のニーズそれぞれが合致しなければ、交渉すらスタートしません。また、交渉がはじまっても、売却の条件や買収の条件が合わなければ、M&Aの成功にはならないのです。
交渉をスタートした回数が多ければ多いほど、買い手が多いということになります。より好条件で事業を売却したいのであれば、この交渉がスタートした回数=過去実績が多いM&Aマッチングサイトを選ぶとよいでしょう。
M&Aマッチングサイト7選
ここではM&Aマッチングが可能なサイトを紹介していきます。サービス内容や特徴についても解説していきます。この7つのサイトから、自社の事業売却がしやすいマッチングサイトを比較検討するとよいでしょう。
1.M&Aナビ
運営会社 | 株式会社M&Aナビ |
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URL | https://ma-navigator.com/ |
利用者数 | 非公開 |
M&A案件数 | 非公開 |
買い手の手数料 | 低額 20万円・税別 |
売り手の手数料 | 無料 |
過去実績 | 非公開 |
株式会社M&Aナビが提供する事業承継・M&Aマッチングプラットフォームです。
全業種に対応していますが、ECサイトやYoutubeチャンネルといった業種に強みがあります。
2024年8月現在、掲載案件数が1,000件を超えており業界トップレベルのマッチングプラットフォームと言えるでしょう。
株式会社M&Aナビは、地方銀行や信用金庫といった地域金融との連携を強化しています。
本人確認や反社チェックを必須化しており、安心安全のM&A取引を実現しやすいサイトであるといえるでしょう。
2.事業承継総合センター
運営会社 | 株式会社リクルート |
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URL | https://rbsp.jp/ |
利用者数 | 1万社以上 |
M&A案件数 | 21件(2020年12月30日現在)他非公開有 |
買い手の手数料 | 公式ページから要問合せ |
売り手の手数料 | 5億円以下の場合、M&A取引価格の5% |
過去実績 | 掲載無し |
株式会社リクルートが運営しているM&Aマッチングサイトが事業承継総合センターです。大企業であるメリットを生かした、豊富な買い手数が魅力です。手数料は着手金無料、5億円以下のM&Aの場合は取引価格の5%が必要になります。他社であれば、承継した事業の総資産をベースにした手数料にしています。総資産になると、負債も総資産にカウントされてしまうため、手数料が同じ5%でも高くなってしまうのです。事業承継総合センターでは、M&A取引価格をベースにしているため、負債がカウントされないため業界最低水準の手数料で事業承継が可能になります。
3.Batonz(バトンズ)
運営会社 | 株式会社バトンズ |
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URL | https://batonz.jp/ |
利用者数 | 93,794名(2020年12月30日時点) |
M&A案件数 | 8,727件 |
買い手の手数料 | 成約時に2% |
売り手の手数料 | 無料 |
過去実績 | 55,140件 |
スピードと安い手数料が特徴のM&Aマッチングサイトです。他社ではM&A事業承継の完了までに最低でも数ヶ月がかかります。Batonzでは、最短で1週間、平均で5ヶ月というハイスピードでの事業承継が可能です。手数料も安く、取引価格の2%が買い手側にのみ発生します。事業承継で資金を得たい売り手側としては、かなり便利なサイトといえます。
4.ビズリーチ・サクシード
運営会社 | ビジョナル・インキュベーション株式会社 |
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URL | https://br-succeed.jp/ |
利用者数 | 8,935社(売り手:2879社、買い手:6,056社:2020年12月30日現在) |
M&A案件数 | 2,000件以上 |
買い手の手数料 | 69,800円+成約金額の1.5%~ |
売り手の手数料 | 無料 |
過去実績 | 非公開 |
利用者に審査が行なわれる完全会員制のM&Aマッチングサイトです。M&Aがはじめての方にも利用しやすいようにサポートもついています。サイト外部に会社の情報なども公開されません。完全会員制であるため、買い手は優良企業ばかりというのもメリットです。
5.FUNDBOOK
運営会社 | 株式会社FUNDBOOK |
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URL | https://fundbook.co.jp/ |
利用者数 | 4,000社以上 |
M&A案件数 | 非公開 |
買い手の手数料 | 非公開 |
売り手の手数料 | 5億円以下の場合、M&A取引価格の5% |
過去実績 | 非公開 |
最短で52日での成約実績があるM&Aマッチングサイトです。マッチングするためのプラットフォームと、M&Aアドバイザーのサポートを組み合わせたハイブリッド型の仲介サービスです。はじめての利用でも専門家のアドバイスを受けながら事業承継ができるサイトになります。
6.M&Aクラウド
運営会社 | 株式会社M&Aクラウド |
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URL | https://macloud.jp/ |
利用者数 | 3,358社 |
M&A案件数 | 482件(2020年12月30日時点) |
買い手の手数料 | 非公開(最低手数料は無し)要問合せ |
売り手の手数料 | 無料 |
過去実績 | 件数の公開はなし(1,000万円~5億円の実績あり) |
売り手側の利用が完全無料のM&Aマッチングサイトです。M&Aクラウドの特徴はなんといっても、サイトを介さずに直接買い手や投資家とコミュニケーションがとれる点です。IT系の案件が多いため、事業承継を行なうサービスによっては比較的早いタイミングで買い手が見つかる可能性が高いでしょう。
7.TRANBI(トランビ)
運営会社 | 株式会社トランビ |
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URL | https://www.tranbi.com/ |
利用者数 | 75,530名(2020年12月30日現在) |
M&A案件数 | 常時2,000件以上 |
買い手の手数料 | 成約金額の3%か30万円のいずれか高い方の額 |
売り手の手数料 | 無料 |
過去実績 | 6,871件(2020年12月30日現在) |
日本最大級のM&AマッチングプラットフォームがTRANBIです。買い手が見つかるまで、平均10日前後というスピード、そして売り手側の手数料は完全無料という利用しやすさが特徴です。事業承継で手早く資金調達がしたいが、コストはなるべくかけたくないという会社向けのサイトといえます。
M&Aマッチングサイトを上手に活用して資金調達をしよう
今回紹介したサイトはあくまでも一例です。M&Aマッチングサイトは数多くありますが、もっとも重要なのは、あなたの会社の事業をきちんと評価して買い取ってくれる会社を探すことです。M&Aサイトの選び方を参考にして、資金調達がスムーズに済むようなM&Aマッチングサイトを探すとよいでしょう。
M&Aによる事業承継は、資金調達方法としては時間がかかるものの、高額な資金を得られる方法です。資金繰りが悪化する前に事業承継による資金調達を検討しておくとよいでしょう。