本ページは「資金が一時的に足りないときの対処」と「その後の立て直しの進め方」をやさしく整理します。
企業の資金調達手段の一つとして「ファクタリング」が注目されています。
まず、ふだんの資金繰り目的のファクタリングと、事業再生の場面で使うファクタリングを分けて考えます。
しかし同じファクタリングという言葉を使っていたとしても、若干内容が異なることがあります。
方式は大きく2社間と3社間があります。2社間は取引先に知らせず進めやすい一方、費用が高めになりやすい傾向があります。3社間は通知を前提にしますが、その分おさえやすいことがあります。
たとえば「事業再生ファクタリング」です。
ここでは、事業再生の流れの中でファクタリングをどう位置づけるかを説明します。
まず事業再生ファクタリングですが、経営状況が苦しい事業者から売掛債権を買い取るだけではなく、その後の経営のサポートを行うとされています。ただし実際、そういったサービスを行っている会社は多くはないでしょう。
- 通知の有無(取引先に知らせるか)
- 費用の合計(手数料や事務手数料を含む)
- 万一のときの負担(償還の有無)
- 資金化の早さ:即日~数日
- 費用の目安:2社間 10%〜30%/3社間 1%〜10%
- 手続きの重さ:軽い(書類中心)
※実際の条件は会社や取引先で変わります。
- 今の資金の持ち日数を出す
- 必要金額と必要日数を決める
- 条件を2~3社で比べる
- 同時に立て直しの計画を作る
- 毎月、数字を見直す
ここでは事業再生ファクタリングと一般的なファクタリングの違い、メリット・デメリット、適した活用シーンについて触れていきたいと思います。
目次
ファクタリングとは?
事業再生ファクタリングの話をする前に、まずはファクタリングの基本概念をお伝えする必要があるかと思います。
参照 ファクタリングについて
ファクタリングの基本概念
ファクタリングとは、企業が持つ売掛債権(取引先への未回収の請求書)をファクタリング会社に売却し、資金を早期に回収する仕組みです。
通常、売掛金の回収には30日〜90日かかることが多いです。つまり時間がかかるわけです。しかしファクタリングサービスを利用することで早ければ即日で売掛金を現金にすることができるため資金繰りを改善する手段として活用されています。
ファクタリングの種類
ファクタリングには大きく分けて以下の2種類の契約形態があります。それが2社間ファクタリングと3社間ファクタリングです。
2社間ファクタリング
- 売掛金を売却する企業とファクタリング会社の2社間で取引が完結する。
- 取引先にファクタリングの利用を知られない。
- 手数料が高め(10〜30%程度)。
3社間ファクタリング
- 売掛金を売却する企業、取引先、ファクタリング会社の3社間で取引を行う。
- 取引先に承認を得る必要があるが、手数料が低め(1〜10%程度)。
比べてみるとわかりますが、同じファクタリングでも契約形態によってかなり違いがあることがわかると思います。
ファクタリングのメリット・デメリット
メリット
- 銀行融資やビジネスローンなど、さまざまな資金調達方法の中でもトップクラスに早く資金を調達できる。(最短即日)
- 売掛金を現金化するため、借入ではなく負債を増やさずに資金調達可能。
- 取引先の信用力が重視されるため、自社の財務状況が悪くても利用しやすい。
デメリット
- 手数料が発生するため、実質的な回収額が減ってしまう。
- 取引先にファクタリングの利用を知られる可能性がある(3社間ファクタリングの場合)。
以上が一般的なファクタリングの概要です。
これを踏まえた上で、事業再生ファクタリングとの違いをお話ししていきたいと思います。
事業再生ファクタリングとは?
事業再生ファクタリングとは、経営難に陥った企業が資金調達しながら経営再建を進めるために特化したファクタリングとされています。
とされている・・・と言葉を濁しているのは、あくまでも各ファクタリング会社のサービスの一環であり、ハッキリしない部分があるためです。
事業再生を謳っていながら実際はファクタリング業務だけを行っているケースも考えられます。これは実際に利用してみないとわからないことです。
事業再生を謳っているファクタリング会社のサイトから情報を集めてみると、以下のことが掲載されています。
事業再生ファクタリングの特徴
- 債権譲渡により即時資金調達が可能。
- 一般のファクタリングと同様に、売掛債権を売却して資金を得ることができる。
- 経営改善サポートがセット。
- ファクタリング会社や事業再生コンサルタントが経営改善のアドバイスを提供。
- 金融機関との協力も視野に入れる。
事業再生ファクタリングのメリット・デメリット
メリット
- 資金調達と経営改善の両面で支援を受けられる。
- 銀行融資が受けられない企業でも利用しやすい。
- 事業再生計画の一環として活用できるため、長期的な企業の存続に貢献。
デメリット
- 一般のファクタリングよりも手数料が高くなる可能性がある。
- 事業再生計画に基づいた運用が求められるため、経営陣の協力が不可欠。
ファクタリングと事業再生ファクタリングの違いまとめ
事業再生ファクタリングは、資金化(売掛金買取)に加えて再建サポートを伴う点が特徴です。
3社間は1%〜10%、2社間は5%〜20%が一般的な手数料の目安となります。
この2つの契約形態の違いと使い分け、銀行・公的枠組みとの並走による再建フローを、表とFAQで整理していきます。
| 項目 | 一般的なファクタリング | 事業再生ファクタリング |
|---|---|---|
| 主な目的 | 資金繰り改善 | 経営再建と資金繰り改善 |
| 利用企業 | 黒字または軽度の資金不足 | 経営難に陥った企業 |
| 提供サービス | 売掛金の買取 | 売掛金買取+経営再建サポート |
| 手数料 | 1%〜10%(3社間)/10%〜30%(2社間) | 1%〜10%(3社間)/10%〜30%(2社間) |
| 取引形態 | 2社間・3社間 | 2社間・3社間+事業再生支援 |
| 銀行との連携 | 基本なし | あり(ケースによる) |
手数料は会社やお客によって異なる
上記の表ですが、あくまでも一般論です。
とくに手数料ですが、利用者の会社の経営状況や、取引先など、さまざまな要因によって左右されます。そもそも貸金業ではないため利息制限法というものが適応されません。
そのため手数料はファクタリング会社によって異なります。
一般的なファクタリング会社のサイトを見ると、表示上0.5%~と表示しているケースが最近では目立ってきています。しかし実際問題、その数字で経営をしているところはほとんどないでしょう。
それはファクタリングという商売のリスクが高く、リスクと手数料が見合わないためです。手数料は与信やスキームで変動しますが、目安は「2社間 10%〜30%/3社間 1%〜10%」です。
これは事業再生ファクタリングサービスを提供している場合でも同じことがいえると思います。もしかしたら事業再生のサポートをする分、手数料が高くなる、もしくは違うところでお金が発生する可能性もあります。
事業再生を表立ってする会社は少ない気がする
ファクタリング会社はあくまでも売掛債権を買い取る会社です。事業再生サービスを行っているとするならば、利用者の事業がよほど魅力的である場合でなければ事業再生の提案をしないことでしょう。
なぜならファクタリングを利用する時点で、銀行融資が利用できない状況である事業者が多いです。
資金調達の最後の手段でファクタリングを利用するケースがあり、そういった事業者に対してお金であったりサービスを提供するのは非常にリスクが高くなるのです。
もちろん事業内容に将来性があるのであれば話は別です。ファクタリング会社自体が資金注入を行い事業を立て直し、利益の一部をもらうという手法も考えられないことはありません。
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事業再生ファクタリングとファクタリングの違い どちらを選ぶべきか?
事業再生ファクタリングと一般的なファクタリングはどちらを選んだ方がよいのかは、経営状況によります。
通常のファクタリングが適している企業
- 一時的な資金ショートを防ぎたい。
- 売掛債権の早期回収を目的としている。
- 事業自体は健全であり、今後の成長見込みがある。
事業再生ファクタリングが適している企業
- 経営難に陥っており、資金調達と経営改善が必要。
- 銀行融資が難しく、他の資金調達手段を探している。
- 事業の再建を目指し、専門家のサポートを受けながら立て直したい。
まとめ
ファクタリングは資金繰りの改善に役立つ手段です。
そして一般的なファクタリングと事業再生ファクタリングでは目的や活用方法が異なります。
単なる資金調達を目的とするなら一般的なファクタリングが適しているかとは思いますが、経営再建を視野に入れるなら事業再生ファクタリングが適しているかと思います。
ハッキリ断言できないのは、会社によって状況が異なるためです。
おススメとしては、事業状況をしっかりと数字で把握している税理士などに一度相談してみるとよいかもしれません。
ただ言えることは、ファクタリングを利用すること自体、それまでの経営を考え直した方がよいかもしれないということです。
そしてファクタリングを利用したら安心というわけではありません。本来入ってくるはずの売掛金が手数料が引かれて入ってくるようなものです。
たとえば100万円の売掛金である場合、ファクタリングを利用しなければ100万円が入ってくるのに対し、利用した場合、手数料(約20%前後)が引かれた約80万円しか入ってこなくなります。
どこかでうまい解決策を見つけなければ、経営が行き詰ってしまう可能性があるのです。
よくある質問
売掛金の資金化に加えて、在庫圧縮・回収強化・固定費削減・金融機関連携などの「再建施策」を並走する点が違いです。短期の資金ショート回避と、中期の収支改善を同時に進めます。
資金化の目安は「3社間 1%〜10%/2社間 5%〜20%」。これに加え、再生支援として月額の伴走費(例:固定または準成功報酬)や、初期の簡易デューデリ(DD)費用が発生することがあります。契約前に内訳(資金化手数料/伴走費/DD費用)を必ず分解提示で確認してください。
資金化は即日〜数日が一般的です。一方、再建支援(在庫・回収・固定費・金融機関連携など)は数週〜数か月の継続伴走が前提です。初動は「13週の資金繰り表」で山谷と必要額を可視化します。
2社間は原則通知なし、3社間は債務者(取引先)へ通知します。秘匿性を重視する場合は2社間を検討しますが、条件面(費用や審査)とのバランスで選択してください。
契約条件次第です。償還の有無・範囲、回収不能時の取扱い、二重譲渡の禁止、債権譲渡登記の有無等をあらかじめ確認し、過度なリスクを避けます。
ケースにより併用します。短期の資金ショートはファクタリングで回避しつつ、債権者横断の条件変更や抜本策は公的枠組みで進める等、工程を分けるのが一般的です。弁護士・税理士・金融機関と連携できる体制かを確認してください。
継続赤字や資金繰り逼迫でも可。ただし「売掛の健全性(実在・検収・支払実績)」「反社排除」「粉飾の不存在」「債権の二重譲渡なし」等の基本要件が必要です。
請求書・発注書・納品/検収資料、入出金明細、売掛金台帳、主要取引先の与信資料、直近の試算表、13週の資金繰り表、再建方針の概要(改善KPI案)などです。揃っているほど審査が早く進みます。
運転資金日数(CCC)短縮、在庫回転、回収遅延の解消、固定費削減額、月次の営業CF改善、金融機関連携の進捗(条件変更・借換等)をKPIでモニタリングします。
①資金化と再建支援のチームが分業ではなく連携している、②費用内訳が明確(資金化/伴走/DD)、③公的枠組み・金融機関と連携実績がある、④守秘義務・コンプラ体制、⑤月次KPIでの伴走管理、を確認してください。
































