売掛金を銀行で現金化 売掛債権を担保にして融資を受けるABLと4つの金融商品

「売掛金×銀行」約束手形取引以外の資金調達方法はABLだけではない!
 
 
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売掛金を銀行で現金化することが可能です。売掛金を担保として融資を受ける売掛債権担保融資を利用するのです。

今までは売掛金に比べると約束手形をメインに扱ってきた銀行ですが、時代の流れにより徐々に変わりつつあり、企業が行なってきた売掛金回収業務や売掛金を元手にした融資商品などが展開されています。

約束手形を振り出せるのは、ある一定の与信力や資金力をもつ会社が多いです。そのため多くの場合、手形ではなく現金での支払いを行う「掛取引」を行なっています。

掛取引で発生する「売掛金」は、支払期日にならないと取引先から振り込まれません。つまりそれまでは現金が手に入らないことになります。資金繰りが慢性的に悪化している中小企業にとって、売掛金の入金日は資金繰りを回すための重要な日付になるのです。

ところが、売掛金が取引先より入金される前に緊急な支払いが発生した場合にはどうなるでしょうか。なるべく早く支払いに必要なお金を集めることになります。つまりスピーディーな資金調達が求められるのです。その場合、資金調達の定番の「銀行の融資」や「行政の助成金」は到底間に合いません。

そんなときに便利なのが、手元にある売掛金を使った資金調達方法です。

たとえば銀行の場合であれば「売掛債権担保融資(ABL)」が候補となることでしょう。それ以外にも「でんさい」といったな売掛金管理業務代行も利用できるでしょう。

これらの資金調達方法は比較的早く資金調達できますが、さらに早い資金調達方法も存在します。それがファクタリングであったりビジネスローンとなるのです。

銀行が売掛金関連の金融サービスを積極的に扱うようになった理由

売掛金を銀行で現金化

銀行では売掛金を利用した金融サービスを積極的に扱うようになりました。

以前は、事業性融資や手形割引などをメインに扱っていましたが、近年では売掛金を利用した売掛債権担保融資「でんさい」なども積極的に取り扱うようになってきました。

売掛債権担保融資でんさい
通称「ABL」と呼ばれ、売掛金を受け取る権利である「売掛債権」を担保として借り入れを行うこと。「電子記録債権を管理するシステムのこと」であり、電子記録された債権を譲渡し資金調達する方法。

そもそも、どうして銀行がここまで売掛金にスポットをあてた金融サービスを行なっているのか。それには日本経済の流れが影響していました。

売掛金不良債権が増加したバブル崩壊

1991年3月~1993年10月までの景気後退期はバブル崩壊期間とも呼ばれています。現在まで尾を引く不景気の始まりです。バブル崩壊では信用収縮や土地や株の投機意欲の減退などが起こりました。

銀行が融資を行なっていた企業の業績が悪化して、融資返済が滞るようになってしまったのです。

銀行は返済がされない融資を「不良債権」に切り替えたり「リスケジュール」を行なったりするなどして対応してきました。しかしこの対応が、経営上の自由を奪うという指摘と他の取引先に対する信用を落としてしまうと嫌われてしまったのです。

銀行側は経営が健全ではない企業に対して、さも健全な取引を行なっていると見せかけ、審査などに手心を加えるようになりました。その裏には銀行側が予想する「景気はすぐに回復する」という甘い見通しがあったとされています。しかし実際の景気は予想以上に混迷化し、不良債権は多くの企業や銀行を倒産・破綻させるきっかけになったのです。

こうした混乱が「貸し渋り」や「貸し剥がし」といった状況を生み出し、資金力のない中小企業の倒産が相次ぎました。

政府主導の金融緩和などで積極的な融資を行なうことになったため

21世紀になっても金融機関による貸し渋りは続いていました。手形が落とせずに倒産する中小企業や、債務超過となって倒産する企業が相次ぎ、不景気からの脱出口が見えなくなっていたのです。

バブル崩壊から手形の取り扱いが急激に減り、代わりに会社間で扱われる売掛金が台頭してきます。

1999年の発表では、中小企業が保有する売掛金総額は68兆円、受取手形総額は19兆円と、当時まで主流だった手形取引総額を売掛金総額が上回る結果になったのです。

そこで日本政府は2001年に「中小企業信用保険法改正」を行ない「売掛債権担保融資保証制度」を創設しました。「売掛金を担保として融資を行うようになった」のです。

売掛金を担保にした融資が行なわれる際、その債務を信用保証協会が保証することで融資をしやすくさせるために制定されました。

その後、2007年の同法改正により「ABL保証」まで拡充され、2015年の金融緩和が起こったことで積極的なABLの活用が始まったのです。

売掛金を銀行で現金化 銀行が扱う売掛金関連の金融サービス

銀行が扱う売掛金関連の金融サービスとは?

銀行が扱っている売掛金を利用した金融サービスにはいくつかの種類があります。

銀行の売掛金関連サービス
  • 売掛債権担保融資(ABL)
  • でんさい
  • 売掛金回収業務
  • 売掛金の消し込み業務
  • 回収業務全体の効率化

それぞれどのような内容の金融サービスなのか見ていきましょう。

売掛債権担保融資(ABL)

売掛債権担保融資とはABLと呼ばれ、売掛金や商品在庫などを担保にした融資商品となります。

この商品が登場した頃は売掛金のみを対象にしていました。2007年の法改正で商品在庫なども担保の対象になりました。現在では「動産担保融資」として扱われています。

元々はアメリカで発達した融資サービスです。日本で行なわれているABLは売掛金や商品在庫の他に「商標」「特許」などの知的財産権も担保にできます。

でんさい

でんさいとは、債権を電子記録する仕組みのことであり、電子記録された債権は譲渡しやすい特徴を持っています。

電子記録債権とは、電子債権記録機関である「株式会社でんさい」のサービス利用を条件として取り扱い銀行で提供されているサービスです。

売掛金を電子記録することで、安全・簡単・迅速に電子債権の発生や譲渡が可能になります。手形割引なども可能ですが、本来の手形割引にはない分割割引や分割譲渡ができるメリットもあります。

参照 でんさい(外部サイト)

 

売掛金回収代行業務

売掛金回収代行業務は行なっている銀行が限られますが、銀行側が取引先の口座から自分の代わりに回収してくれるサービスです。

回収不能になった売掛金の取り立てなどは行なっていません。売掛金回収業務を完全委託できるため、回収業務の効率化が図れます。

売掛金の消し込み業務

売掛金の消し込み業務とは、経理上の業務になります。

売掛金の支払いがあった時点で入金額を確認し、入金消し込みを行なわなければなりません。経理業務の中でも重要度が高い業務です。取引先や顧客からの入金確認作業は、取引件数が多いほど時間がかかる作業です。

消し込み業務を銀行が行なってくれることで、経理関連の業務効率化が図れます。

回収業務全体の効率化

回収業務の効率化を包括して行ないます。

請求書の発行から代金の回収、データ照合や消し込みなど、全体的な作業を効率化できます。

 

A社長
売掛債権担保融資だけだと思っていたら、色々な経理業務も委託できるんですね。

B社長
中小企業は大企業と違い、社長や社長の家族が経理業務を行なっていることも多い。個人ができる経理業務となると限られてくる。売掛金回収のような複雑な作業を銀行が代わりに行なうことで、ABLの利用をもっとしてもらおうという銀行側のニーズもある。

 

銀行で売掛金関連の融資を受けられない場合は民間で対応

銀行で売掛金関連の融資サービスを受けられない場合はどうする?

銀行で売掛金関連の融資を受けられない場合には、民間で対応する方法があります。

銀行の場合、利用する会社の信用度などによって利用の有無が決まります。売掛金そのものに価値があるのですが、それでも慢性的な赤字経営の場合には審査に通るか怪しいところです。

ところがそのような場合でもスピーディーに資金調達ができる可能性は残っています。それが以下の2つとなります。

2つの資金調達方法
  • ビジネスローンの利用
  • 売掛金売却(ファクタリング)の利用

銀行のABLに近いものはファクタリングとなります。

ビジネスローンもファクタリングも全く別のサービスではありますが、どちらも最短即日で資金調達できるといった強みがあります。

ビジネスローンを検討する

ビジネスローンとは、簡易的な審査で運転資金を調達できる融資サービスです。

銀行以外にもノンバンクでも扱っていることが特徴です。ビジネスローンは銀行の事業性融資と違い、審査に膨大な時間を要しません。

スコアリングシステムという方法を使って、簡易的に貸出限度額や審査の可否を算出します。メリットとしては、申し込んでから融資決定、入金までのスピードが早いという点です。緊急で資金が必要な場合に素早く資金調達できます。

デメリットとしては事業性融資よりも利率が高く、融資額上限が低い点です。事業性融資よりも利率が高いため、場合によっては返済遅延を起こすこともありえます。

事業性融資の場合は、会社の商流などを総合的に判断して融資額が決定されます。ビジネスローンの場合は、決算書などの数字を元に融資額が決定されるのです。事業性融資では1000万円の融資が可能であっても、ビジネスローンでは100万円しか融資されないケースもあるのです。

参照 ビジネスローン

 

売掛金を民間業者に売却するファクタリング

売掛金を民間業者に売却しその売却益を得る資金調達方法をファクタリングと言います。

融資というのは借金です。それに対し、ファクタリングは売掛金を売却して資金を調達する方法であるため借金にはなりません。銀行でもファクタリングを行なっていますが、民間に比べると審査が厳しく時間もかかります。

一方、民間のファクタリング会社の場合、銀行の審査に比べると緩く設定されてい安いです。

ファクタリングで資金調達する際の良い点としては、申込企業の財務状況よりも売掛先である取引先企業の財務状況が重要視されます。つまり赤字経営の企業であっても、確実に入金される売掛金さえあれば、資金調達が可能なのです。

ただしデメリットもあります。売掛金を売却する際には買取手数料が発生します。手数料は売掛金総額の5%~30%が相場となります。そして法的な手数料上限が決まっていないため、30%以上の手数料を請求されても違法ではないのです。

また取引先に、売掛金の売却譲渡が知られると「経営状況が悪い」というマイナスのイメージを持たれてしまい、将来的な取引額が縮小してしまうなどのデメリットもあります。取引先にファクタリングの事実を伏せた上で資金調達がしたいのであれば、ファクタリング会社から取引先に債権譲渡通知義務がない「2社間ファクタリング」を活用しましょう。

参照 ファクタリング

 

売掛金管理や資金調達方法に不安ならまずは相談

売掛金管理や資金調達方法に不安ならまずは相談

売掛金の管理や資金調達方法に困ったら、まずはお付き合いのある銀行や税理士、ファイナンシャルプランナーなどに相談してみましょう。

もし資金調達までの時間に余裕があるのなら、銀行のABLを利用してみるとよいでしょう。ただしすぐにでも売掛金を利用して資金調達をしたいと考えているのであれば、ファクタリングが有効だと考えます。

また、もし銀行でABLなどのサービスが利用できないのであれば、売掛金買取以外の金融サービスを行なっているファクタリング会社に相談してみるという方法もあります。

 

B社長
自己判断、自己完結をするのではなく、その道の専門家に助言を求めるのも経営判断だ。

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株式会社デキタ
株式会社デキタの代表取締役。資金調達に関する知識を身に付けるために「ファクタリングで資金調達デキタ!」を制作・運営。その延長線上で、事業者の利用する資金調達方法に焦点を当てた当サイトを企画・制作・運営。 資金調達に関する記事執筆は2018年より開始。複数の税理士やファイナンシャルプランナーと交流しながら、記事執筆をつづける。