モアタイムシステムとは、日本国内にある銀行間の送金を「24時間休むことなく利用できる仕組み」です。このシステムがあることで、売掛金の回収スピードが劇的に早くなりました。
今までは金曜日の送金締め時間に間に合わなかった場合には、翌営業日の週明けに入金されていました。しかし会社には、土日祝日でも関係なく稼働しているところもあります。つまり買掛金や経費の支払いは翌営業日まで待ってくれない場合もあるのです。
ところがモアタイムシステムを利用することで、いつでも銀行間の送金が可能となりました。これにより売掛金の受け取り、買掛金の支払いで発生する問題が劇的に解消されたことになります。
少しでも早く売掛金を手に入れたいと考えるのであれば、モアタイムシステムを採用している金融機関の口座を作ることをおススメします。
目次
モアタイムシステムの特徴 24時間365日銀行振込が可能
モアタイムシステムとは、24時間365日銀行振込が可能な仕組みのことです。
2018年10月9日から稼働開始したこのシステムは、全国の銀行や信用金庫などを24時間つないでくれる仕組みとしてスタートしました。
1973年に始まった他銀行間の送信システム「全国銀行通信システム」がベースになっています。このシステム最大の特徴は「24時間365日送金が可能」という点です。
普段何気無く使っている銀行ですが、送金や入金が24時間365日関係なく完了できるのは、代金を後日支払う掛取引においてもメリットが大きいです。
掛け取引とは商品を納めてから商品代金をもらうという、一般的な会社間の取引のスタイルです。この取引のスタイルの弱点は、商品を納品してから商品代金を受け取るまでに時間差が出てしまうということです。この時間差は時に経営にとって致命的になり得ることがあります。
取引先からの売掛金の入金を待って、他の取引先に買掛金の支払いをしている場合、入金のタイミングによっては支払期日を超えてしまう場合もあります。
とくに影響が大きいのは、支払期日が土日祝日前の場合です。本来であれば、支払期日を迎えた瞬間に入金されていなければなりません。ですが、取引先の振込処理方法などによっては即時入金されるというわけではないのです。
モアタイムシステムが稼働したことにより、土日祝日深夜関係なく、送金や入金が可能になりました。スピードが求められる現代日本に必要不可欠な仕組みが完成したのです。
モアタイムシステムが誕生した背景
今までは銀行の営業時間によって、送金や入金のタイミングにずれが生じていました。
銀行の窓口営業時間は、平日のみで朝8:30~15:30(銀行によって異なる)でしか会社間送金に対応していませんでした。そのため金曜日の18時に送金したとしても、入金されるのは翌営業日になるため、月曜日が祝日の場合だと3日間、入金がされなかったのです。
この送金と入金のタイムラグが会社間の取引に悪影響を与えていました。とくに影響を受けたのは、売掛金が資金繰りのベースになっている中小企業です。なぜ、中小企業なのかというと、資金力が大企業に比べて低いことが最大の理由です。
すべての中小企業の資金力が低いというわけではありません。ここで重要なのは「下請け」や「孫請け」それに「ひ孫請け」といった取引形態が中小企業に多いことです。
下請け企業は、自らが窓口となって現金払いによる収入を得ることが難しい企業形態です。たとえば、自働車の部品工場や電子機器のパーツ製造工場などは、小売店を併設している企業もあります。しかしそのほとんどが、大企業の下請け企業であるケースが多いです。元請けである会社からの支払いに、企業収入の大部分を依存しているともいえます。
原材料を自社で賄っているならまだしも、他社から購入している場合、たった一度の買掛金の支払い遅れが、購入先の企業を倒産させる可能性もあるのです。ほかにも銀行の営業時間外に送金手続きが行なわれることで、入金にタイムラグが生じてしまい、資金ショートに陥るケースもあります。
その他の理由としては、社会的な生産稼働時間が長くなったこともモアタイムシステムが誕生した背景にあります。コンビニや24時間営業のレストラン、深夜営業を行なっている大型小売店などは、平日のみの入金では対応できなくなっていたことも影響しています。
土日祝日でも支払いが発生する業界として、製造業などは材料の購入や材料を購入している企業への支払いが発生することもあります。自分の会社だけではなく、材料を購入している取引先の資金繰りにも銀行のタイムラグは影響します。
ひ孫請企業までピラミッド型展開している業界では、とくに支払いのタイムラグによる資金繰り悪化が顕著とされています。
モアタイムシステムは日本国内のみ
アタイムシステムは日本国内のみで利用されているシステムです。輸出入業に関してはモアタイムシステムの効力が及びません。モアタイムシステムは日本国内の銀行に限られて運用されているため、海外の取引先が利用している銀行が日本ではない場合、モアタイムシステムの恩恵は受けられないのです。
輸出入業は取引先企業の時差なども影響するため、それこそ必要な業界ではありますが、まだ日本国内の銀行間送入金しか対応していないのが現状です。
モアタイムシステムが売掛金回収に与える恩恵
モアタイムシステムが与える恩恵は、リアルタイムでの資金運用をしやすくなったことです。
売掛金が銀行の営業時間に関係なく入金されることで、中小企業が持っている買掛金などの支払いも遅延しなくなりました。
結果的に、売掛金入金のタイムラグによる資金ショートが少なくなり、銀行の営業時間問題による中小企業の資金繰りトラブルの発生頻度が減ったとされています。
売掛金回収にともなうモアタイムシステムの2つの注意点
売掛金が回収しやすくなったモアタイムシステムですが、いくつかの注意点もあります。
日本国内すべての金融機関で活用されているわけではない
モアタイムシステムに加入している金融機関は日本国内すべての金融機関ではありません。
ほとんどすべての金融機関が加入していますが、中には加入していない金融機関もあるのです。
2020年4月1日の時点で、モアタイムシステムに加入している金融機関は1173あります。
加入していない金融機関の特徴として、特殊な金融機関が多いことが挙げられます。医師信用組合や農林中央金庫、新しく設立されたローソン銀行などもモアタイムシステムに加入していません。
今後加入する可能性もありますが、現状では加入していないため、取引先の主要取引銀行がモアタイムシステムに加入していない場合は、銀行の営業時間のみでしか入金してもらえません。
自分が買掛金を支払う場合に猶予がない
自社が買掛金を支払う立場の場合、モアタイムシステムがあることによって、支払いの猶予が無くなります。
というのも、モアタイムシステム稼働前は金曜日の支払期日として契約しても、入金のタイミングなどで自働的に翌営業日が期日として認められているケースがありました。
つまり買掛金の支払いが遅れそうなときの言い訳となっていたわけです。
ところがモアタイムシステムが稼働したことによって、この支払期日の猶予が無くなってしまったのです。支払いが遅れそうな場合には、早めに取引先と交渉をしなくてはならなくなったのです。
売掛金回収だけではなく売掛金売却にも効果的なモアタイムシステム
売掛金の回収、買掛金の支払いに影響を与えるモアタイムシステムですが、売掛金を売却して資金を得る「ファクタリング」にも影響を与えています。
ファクタリングとは、売掛金をファクタリング会社に売却して資金を得る資金調達方法です。
ファクタリングは申し込んだ当日中に売却したお金を手に入れられます。モアタイムシステムがあることで、営業時間外であっても売掛金の売却益を手に入れられるのです。買掛金支払いなどの期日が目前に迫っていたとしても、売掛金さえあればすぐに資金を調達できるのです。
だから事前にモアタイムシステムを導入している銀行の口座を開設しておきたいところだ。
参照 ファクタリング
モアタイムシステムで売掛金回収・売掛金の資金化がスムーズにできる!
売掛金の回収はもちろん、売掛金の資金化もスピーディーにできるモアタイムシステムは、取引先からの入金タイミングが遅くなったとしても、当日中に資金を入金さえしてもらえれば、すぐに自社の口座にお金が届きます。
今の日本経済は取引のスピードが浮き沈みを決めていることがあります。モアタイムシステムを理解し、効率的な売り上げ回収、資金調達を行いましょう。