銀行融資における証書貸付とは、融資を受ける際に証書を交わして契約を行なう融資方法ことです。
難しい話ではなく、銀行からお金を借りる際に契約書を結んで借りるという、一般的な融資のことです。ただし多くの場合は住宅ローンや自動車ローン、教育ローンなど、大きめの金額の融資を受ける際、そしてそれに伴い、長期返済する場合に利用されることの多い仕組みとなります。
今回は銀行融資における証書貸付について詳しくご紹介します。
目次
証書貸付は普通の融資契約とは違う?
証書貸付とはそもそも銀行融資における1つの融資方法です。銀行融資には大きく分けると4つの融資方法があります。
- 手形割引
- 手形貸付
- 当座貸越
- 証書貸付
手形割引や手形貸付は、自分の会社が持っている「手形」が無ければ融資の申し込みができません。当座貸越は個別に契約されている融資枠の中で繰り返し利用可能な融資です。クレジットカードのキャッシングサービスのように、決められた融資枠の中で自由に借入れができるサービスです。
証書貸付は、一般的に「銀行融資」と言われている融資方法になります。つまり、手形でもなく当座貸越でもない、普通の融資が「証書貸付」になるのです。
参照 手形割引で資金調達 銀行や専門業者で支払期日前に手形は換金可能
参照 手形貸付で資金調達 借入用の手形で銀行から融資を受ける方法
証書貸付の定義と書かれている内容
証書貸付とは「契約書を交わしてお金を借りる融資方法の1つ」です。つまり一般的にお金を借りるときの話です。
「銀行からお金を借りる方法」にあたり、手形を利用した融資商品や当座口座を利用した融資商品ではない資金調達方法のことです。
証書貸付の定義 契約書にサインをしてお金を借りること
証書貸付を辞書で調べると
”金融機関が融資するにあたって,借主から貸付金額,弁済期日,利率,担保物件などの貸付条件を表示した借用証書 (金銭消費貸付契約証書) を差入れさせて行う貸付。主として設備資金,長期運転資金などの貸付に利用される。消費者ローンも通常この形態をとる。貸付期間が長期にわたる関係から,当初に最終弁済期日,分割弁済の時期と金額,利率および利息の支払期日など詳細に取決められ,通常は不動産を担保に取るのが原則となっている。”
参照 証書貸付(コトバンク)
このように定義されています。つまり証書貸付とは
です。
住宅ローンや自動車ローン、教育ローンなど、比較的まとまった金額であり、長期返済する場合に利用される仕組みだ。
証書貸付の契約書に書かれている内容
証書貸付の契約書の例文を見てみましょう。
[金銭消費貸借契約証書] 借主は、株式会社広島銀行(以下「銀行」といいます。)から、以下の規定を承認のうえ、
下記借入要項のとおり金銭を借り受けます。
記
1.借入金額
[お申込みに際してのご同意・ご了承事項]に記載のとおり銀行が定めるものとします。
2.借入利率
(1)当初借入利率
[お申込みに際してのご同意・ご了承事項]に記載のとおり銀行が定めるものとします。
(2)借入後の金利変動ルール
変動金利型1
以後は選択された金利変動方式にもとづき、後記「借入利率・元利金返済の変更」の
定めによる変動利率によります。
3.最終回返済日
[お申込みに際してのご同意・ご了承事項]に記載のとおり銀行が定めるものとします。
4.借入金使途
借主が、お申込画面「ローンのお申込み」の「ローンのお使いみちをお選びください」
で選択されたものを借入金使途とします。
5.借入金の受領方法
[お申込みに際してのご同意・ご了承事項]に記載のとおり銀行が定めるものとします。
6.元利金の返済方法
[お申込みに際してのご同意・ご了承事項]に記載のとおり銀行が定めるものとします。
(1)利息は、各返済日に後払いします。
融資を申し込む金融機関によって契約書の内容や文言が異なりますが、銀行との証書貸付では上記のような契約書(証書)で証書貸付が行なわれます。
書かれている主な内容は以下の通りです。
- 契約日
- 借入金額
- 借入利率
- 遅延損害金
- 返済方法
- 返済期間(返済回数)
これらが一般的な融資条件となります。
内容を確認したら会社の署名や実印、連帯保証人の署名と捺印を行なった上で銀行側に提出(差入れ)し融資契約完了になります。
差入れ形式の証書貸付の意味 一方通行の取引
差し入れ形式というのは一方通行という意味です。
つまり契約するときに、一方的に契約書を渡されるタイプの契約ということです。
このような差入れ形式の証書貸付の場合、差し入れた側に都合の良い内容となっています。そのため契約書の内容を熟読ししっかりと理解しておいた方がよいでしょう。
もう少し詳しく差し入れ形式の契約についてお話ししたいと思います。
貸付先(金融機関など)が一方的に差し入れる
そもそも「差入れ形式とは?」となるかと思います。
契約というのは通常、2社間での契約となります。
その際、「片方が契約の内容を決める」、もしくは「双方で契約書の内容を決めるのか」となります。金融機関からお金を借りるときには、金融機関のルールに従って作られた契約書にサインすることになります。
もし契約内容に疑問を感じたり問題があると感じても、契約書の内容を変更することはできません。これが「差入れ形式」となります。
差入れ形式 | 契約書形式 |
---|---|
事業者 お金を借りたいのですが・・・。 業者 わかった。はい、これ契約書。 事業者 契約書の内容を修正してもらいたいのですが・・・ 業者 この契約の内容、私たちのルール。この内容で嫌ならお金貸さない。 契約内容はお金を貸す側のルールとなっている。 | 事業者 お金を借りたいのですが・・・。 業者 わかった。はい、これ契約書。 事業者 契約書の内容を修正してもらいたいのですが・・・ 業者 分かった。お互いの都合の良いように話し合おう。 契約内容は双方の話し合いで決める。 |
このように契約書には双方がサインを行う「契約書形式」と、どちらか片方がサインを行う「差入れ形式」があります。
融資を受ける際には差入れ形式の契約が一般的でしょう。
もっと端的にいうと、
というものです。
貸し手の都合の良い条件が書かれている
証書貸付には融資商品の種類に応じて異なる証書(金銭賃貸契約書)が必要になります。
まずお金を貸す側である銀行が証書を提示してきます。内容に問題がなければ、この証書にサインをし融資元である銀行へ「差入れて」融資を受けるのですが、この「差入れ形式」の証書貸付には注意点があります。
差入れ形式の契約書の場合、融資を依頼する側の義務しか書かれていません。つまりお金を借りる側が守らなければならない注意事項しか書かれていないのです。お金を貸す側である(金融機関)の義務については書かれていないのです。
つまりお金を貸す側の都合の良い条件が書かれており、それをお金を借りる側が了承しなければ借りることができないのです。
これが「差入れ形式」の契約となります。
少し乱暴な言い方をしてしまうと、一方的に条件を出されている状態です。条件を飲めないのならお金は貸すことはできないということなのです。
ただこれは乱暴でもなんでもなく、モノを購入する際にも提示されている価格があります。この価格は一方的に決められている価格です。そしてその金額を出さなければ購入すことはできません。それと同じです。
契約書が同じとは限らない
注意したい点としては、契約書が同じとは限らないという点です。
銀行で融資を受ける場合、すべての融資商品で契約書が発生します。同じ銀行で違う種類の融資を受けた場合、それぞれで契約書の内容が異なるのです。
同じ銀行だからといって、契約書を読まないでいると、万が一返済が滞った場合などに担保を急に引きあげられてしまうなどの不都合が発生してしまいます。
このようなこともあるため、同じ銀行で融資を受けるとしても、そしてどんな融資を受けるとしても、契約書に書かれている内容をしっかりと理解する必要があります。
どれも同じ・・・というわけではない。
契約のたびに1つ1つチェックすることが必要だ。
融資商品によって利率や返済期間が異なるように、契約書の内容そのものも違う。返済遅延時の措置などは必ずチェックしておこう。
融資商品によって利率や返済期間が異なるように、契約書の内容そのものも違う。返済遅延時の措置などは必ずチェックしておこう。
証書貸付の特徴
証書貸付の特徴としては以下の3つが挙げられます。
1つずつ、詳細に触れていきたいと思います。
高額・長期の融資のケースが多い
証書貸付融資は、高額で返済期間が長いケースで利用されることが多いです。
設備資金や長期的な運転資金などで利用する会社がほとんど。急場しのぎの資金調達方法としてはあまり向いていません。なぜなら、審査から融資決定までの期間が長くなる場合が多いためです。
急場しのぎ、つなぎ資金としては証書貸付以外のビジネスローンなどを利用したほうがよいでしょう。
参照 ビジネスローン・事業者ローンは審査が緩めでスピード融資
元金均等返済型が多い
証書貸付の返済方法では「元金均等返済型」が多く使われています。
元金均等返済とは、元金を返済期間まで毎月均等な金額にして、その金額に利息を上乗せして返済する方法です。メリットは返済必要額が徐々に少なくなっていく点で、デメリットは返済当初の金額が大きいという点です。
参照 元利均等返済
元金均等返済以外の返済方法としては以下の2つが主となります。
それぞれにメリットとデメリットがありますが、証書貸付では「元金均等返済型」がほとんどでしょう。
途中で返済方式を変更することも
ただし証書貸付は、途中で元利均等返済や残高スライドリボルビング返済に変更することも可能というケースもあります。その際には銀行側との合意が必要になりますが、返済のメドがたっていたり、返済が厳しいかもしれないという状況の場合には、一度銀行側と交渉して返済方法の変更をしてみるのも1つの金策手段でしょう。
お金を貸した銀行側としては「貸したお金が返済されない」ということを一番避けたいと考えています。そのため、返済側が返済に苦労していると判断すれば、返済しやすい条件に変更することはあり得る話です。
参照 返済方法の種類と違いを解説!「元利均等返済」「元金均等返済」「残高スライドリボルビング」の違いとは
融資審査が厳しい
銀行融資にはいろいろな種類がありますが、その中でも証書貸付はもっとも審査が厳しいといわれています。
高額&長期な貸付になるため、銀行側としても貸倒れのリスクを検討した上で融資決定を判断します。審査基準は銀行によっても異なりますが、基本は
ということです。
事業歴や過去の決算状況、利益の推移などが審査で注目されるポイントとなります。
参照 銀行融資で資金調達 金利の低い銀行から賢く資金調達する方法
証書貸付融資以外の資金調達方法も同時に検討しておくとGood!
証書貸付融資は言葉としては難しく感じますが、要するに「銀行の法人融資のこと」です。
ただし証書貸付の場合、手形や不動産などが担保にならないため、審査が厳しいといった注意点もあります。
証書貸付融資を検討する際には、証書貸付融資以外の資金調達方法も検討しておくとよいでしょう。売掛金を資金化する「ファクタリング」や「手形割引・手形貸付」などがあります。
資金調達方法=融資という固定観念に縛られず、自社の資金繰りでもっともメリットの多い資金調達方法を選択するようにしましょう。