手形を銀行で現金化できる!手形について日本一わかりやすく解説!

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受け取った手形は銀行で現金化することができます。

しかし手形には、現金化できる期限や規則などが定められています。それを知らないと、せっかく受け取った手形は単なる紙クズになってしまう可能性があるのです。

手形取引で損をしないためには、ある程度、手形に関する知識を身に付けておいた方がよいでしょう。ただし数多くの「専門用語」が出てきます。金融の専門用語は特殊なものばかりで理解するのが大変かと思います。

そこで今回は、手形を銀行で現金化する方法、手形のメリット・デメリット、手形に関する専門用語など、手形の基礎知識を日本一わかりやすく解説していきたいと思います。

 

完璧な資金調達方法は存在しない。ベストは難しいがベターを選ぶことは可能だ。
手形を利用するのなら、ある程度の手形についての知識は身に付けておいた方がよいだろう。
知らないという理由で、詐欺にあってしまったり、現金化できずに資金難に陥ってしまう可能性があるからだ。

 

手形=有価証券=お金と同じ価値のあるもの

会社間での支払いでは、主に以下の4つの方法で行なわれます。

会社間の4つの支払い方法
  • 現金払い
  • 売り掛け・買い掛け
  • 小切手払い
  • 手形払い

このうち、小切手や手形は、株券のような「有価証券」にあたります。

“印紙税法に規定する「有価証券」とは、財産的価値のある権利を表彰する証券であって、その権利の移転、行使が証券をもってなされることを要するものをいいます。”

参照 有価証券の範囲(国税庁)

 

手形と聞くと時代劇などで使われている「通行手形」をイメージするかもしれません。この通行手形は「関所を通過できる権利」をもった券、つまりチケットということになります。つまり価値のあるチケットということになります。

そして手紙を出すときに貼る「切手」ですが、これも切手代金分の価値があります。やはり価値のあるものということになります。

このように価値のある券やチケット、紙などをすべて「有価証券」と表現します。

ビジネスにおける「手形」には2種類あります。

ビジネスにおける2種類の手形
  • 約束手形
  • 為替手形

この2種類が使われます。どちらの手形も支払いを受け取る「権利」をもった有価証券であるという原則を抑えておいてください。

 

ロボ
手形は価値のある紙。切手と同じ。株券と同じ。お金の代わりになるもの。難しく考えなくてもよい。


 

ビジネスで使われる手形は「約束手形」と「為替手形」の2種類

ビジネスで使われている主な手形は「約束手形」と「為替手形」の2種類です。どちらにも共通しているのは商品やサービスを受け取った側の会社が、商品やサービス代金を後払いすることを約束した書面であるという点です。

この「商品やサービスを提供された会社」のことを「支払企業」といい、その反対である「商品やサービスを提供する会社」のことを「納入企業」という表現をします。

一般的には以下のような流れでビジネスは行われることでしょう。

STEP1・支払企業に対して納入企業が商品やサービスを提供する

STEP2・納入企業が支払企業に商品やサービスの代金の請求書を発行する

STEP3・支払企業は請求書の支払期限までに納入企業の指定口座へ代金を支払う

このように商品やサービスが提供されたらすぐに支払いをする、もしくは支払いを受けるわけではなく、ある一定期間を挟んで支払いをしたり、支払いを受けたりするのが会社間での一般的な流れとなります。

請求書の発行から支払いまで、ある一定の期間がある場合の取引のことを「掛け取引」、もしくは「信用取引」と呼んだりします。

支払いをする側は一般的には、相手先の口座に現金を振り込みます。ところが現金で支払わず手形で支払いをしてくる会社も中にはあります。

手形の登場人物

手形のやりとりでは次の4者がやりとりを行なうことで、手形による決済が可能になります。

手形に関わる4者
  • 手形を振り出す会社(振出人)
    現金の代わりに手形で支払おうとする側のこと
  • 手形を受け取る会社(受取人)
    現金の代わりに手形で支払いを受ける側のこと
  • 振出人の取引銀行
    手形(書類)を発行する側の取引銀行のこと
  • 受取人の取引銀行
    手形の金額を受け取る側の取引銀行のこと

 

手形の注意
要注意!
受取人は手形に書かれている金額を受け取るために、受取人の取引銀行に対して手形を「見せる」ことが必要です。

この手形を銀行に見せることを「呈示(ていじ)」と言い、銀行に対して手形に書かれている金額を取り立ててもらうことを「取立依頼(とりたていらい)」と言います。

とくに気をつけなければならないのは、手形に書かれている支払期日を含めた3営業日以内に「呈示」をしなければ、支払いが行なわれないという点です。支払期日を過ぎた手形は紙クズにしかならないため、絶対に支払期日を見落とさないように注意しましょう!

 

取引銀行同士で手形をやりとりするのですが、その手形をやりとりする場所を「手形交換所」といいます。取引銀行は決められている日時に、各都市にある手形交換所へ呈示された手形を持ち寄り、決済の交換処理を行ないます。

この決済交換が行なわれて、ようやく振出人と受取人の取引銀行同士がお金のやりとりをスタートさせるのです。

手形の流れ~手形振出しから金額の受取まで

手形による商取引の流れは次の7つのステップで行なわれます。

手形取引 7つのステップ
  1. 納入企業が商品やサービスを提供する
  2. 支払企業が手形を振り出して納入企業に渡す
    ※この時、納入企業は受取人、支払企業が振出人になります。
  3. 受取人は手形の支払期日に、自社の取引銀行へ手形を呈示する
  4. 受取人の取引銀行と振出人の取引銀行が手形交換所で手形を交換する
  5. 振出人の取引銀行が振出人の当座預金口座から手形の金額を引き落とす
  6. 振出人の取引銀行から受取人の取引銀行へ手形に書かれている金額(代金)が送金される
  7. 受取人の取引銀行から受取人へ手形の金額が支払われる

手形を呈示してから手形に書かれている代金を受け取るまでは上記のステップで、振出人の取引銀行と受取人の取引銀行がやりとりを行ない、手形の現金化がされるのです。

手形を使う理由は振出人と受取人両方のニーズがマッチしているから

会社間の代金のやりとりで手形を使う理由は、振出人と受取人両方のニーズにマッチしているからです。それぞれのニーズとはなんなのか。そして手形はそのニーズをどう満たしてくれるのか見ていきましょう。

振出人は支払い日を遅らせたい

振出人が手形で代金を支払いたいというニーズの本質は「支払い日を遅らせたい」ということです。

振出人企業はさまざまな企業と取引を行なっています。建設業や製造業であれば下請企業などが主な取引相手になります。しかし、肝心のお金が無ければ支払いができません。しかし、下請企業に対して不当に支払期日を長く指定するのは法律違反になってしまいます。

「下請代金支払遅延防止法」がその法律にあたります。

この法律では次のように決められています。

“2条の2.下請代金の支払期日を定める義務
下請事業者との合意の上で、下請代金の支払期日を事前に定めなければならない。この期日は、納品日から60日以内で、かつできるだけ短い期間内でなければならない。”

引用元 下請代金支払遅延防止法(公正取引委員会)

 

この下請法に該当する企業はほとんどが大企業になります。そのため支払う金額も莫大な額が動くため、できるだけ支払期日を延ばしたいというのが本音です。

しかし、下請法で商品やサービスの納品日から60日以内という縛りがあるため、巨額の支払いに充てるためのお金を準備しなければなりません。

そこで利用されるのが「手形」です。手形を使った取引の場合、下請法が適用されないため、振出人のニーズである「支払期日を延ばしたい」にマッチしているのです。ただし、下請法が適用されないと言っても、手形の禁止事項はしっかり定められています。

4条2項2号.割引困難手形の交付

下請代金の支払につき、当該下請代金の支払期日までに一般の金融機関による割引を受けることが困難であると認められる手形を交付することをいう。これによって、下請事業者の利益を不当に害してはならない。なお、割引困難手形とは、繊維業では90日、その他の業種では120日を超える長期の手形をいう。

引用元 下請代金支払遅延防止法公正取引委員会

 

手形で取引さえすれば、際限なく支払期日を延ばせるというわけではないのです。

受取人は確実に支払いをしてもらいたい

受取人サイドが代金の代わりに手形を請求するニーズの本質は「確実に支払いをしてもらいたい」ということ。

手形以外の支払い方法としては「掛け取引」があります。しかし、掛け取引は

  • 代金を支払ってもらえない貸倒れリスクがある
  • 掛け取引をする企業の信用調査などを行なわなければならないため、掛け取引に至るまでの手間やコストがかかる

といったデメリットがあるのです。

その点、手形は銀行が間に入ってくれるため、貸倒れの心配や信用調査の手間やコストがかかりません。もし手形の支払期日になって、手形の呈示を行なったのにかかわらず支払いが無いという場合、手形の不渡りになってしまいます。半年間に2回不渡りを出してしまうと、振出人企業は銀行との取引が強制停止となり、ほぼ確実に倒産する羽目になります。

参照 売掛金と約束手形の違いは支払いの方法

 

手形を利用するには当座預金口座が必要不可欠

手形を利用するためには「当座預金口座」が必要です。

法人名義の普通預金口座しか持ってない場合、手形の振出しはできません。受取人の場合は当座預金口座がなくても、手形に書かれている金額は受け取れます。

しかし、企業として手形を使った取引を今後も行なう予定なのであれば、当座預金口座は持っておいた方が有利です。なぜならば、当座預金口座を開く際、銀行による「審査」があるためです。当座預金口座を持っている=企業として銀行から信頼されている証拠にもなるため、経営状態に問題がないのであれば、当座預金口座開設を検討しましょう。

参照 支払手形と小切手を利用するなら当座預金口座が必要

 

手形のメリットとデメリットは振出人と受取人両方にある

手形は振出人と受取人双方のニーズにマッチした取引方法ではありますが、メリットとデメリットも存在しています。

振出人受取人
メリット
  • 資金繰りが楽になる
  • 金利などは発生しない
  • 社会的信用がある
  • 手形割引・手形譲渡を利用すれば、支払期日前に現金化が可能
  • 「受取人」にとっての手形払い条件が悪いことが前提であるため、他の面で受取人企業側に有利な交渉ができる
  • 確実に支払ってもらえる可能性が高い
デメリット
  • 不渡りを出すと倒産リスクが高くなる
  • 印紙税がかかる
  • 回収できない可能性がゼロではない
  • 支払期日まで長いため資金繰りが悪化しやすい

 

手形取引のメリットとデメリットを把握しておこう
手形での取引をするのなら、表にあるようなメリットとデメリットを知っておくとよいだろう。手形のことを何も知らない状態で取引先から手形で支払いを受けてしまうと、思わぬ損をしてしまうこともあるからな。

 

手形の基本的な見方

手形にはさまざまなことが記載されています。記載されている内容としては以下の通りです。

  • 金額
  • 振出日
  • 支払期日
  • 受取人
  • 振出地の住所・振出人の署名
  • 銀行届出印
  • 10万円以上の場合は印紙を貼り、消印

一般的にはこれら7つでしょう。

これらの内容さえ書かれていれば誰でも手形を発行できるというわけではありません。振出人の取引銀行から発行される専用の用紙である「統一手形用紙」を使用しなければなりません。

手形で取引を行なう際には税金がかかります。税金と言っても税務署に納めるような税金ではありません。手形を発行する際には「印紙税」が必要となります。収入印紙が貼られていない手形も有効ではありますが、脱税の指摘をされてしまう恐れがあります。そのため手形で取引を行なう際には必ず収入印紙も合わせて用意しておくとよいでしょう。

手形に関わる6つのルール

手形を利用して取引をするのであれば、基本的なルールは覚えておくとよいでしょう。

手形のルール1:銀行から交付される統一手形用紙を使うべし

手形用紙は定められた用紙を使用するようにしてください。必要事項がしっかりした文言で書かれていたとしても、自作のものはなるべく使わないほうがよいでしょう。

曖昧にしたのは、自作の手形でも有効性があるからです。しかし確定申告などの実務上では「統一手形用紙」を使用することになっています。手形用紙を持っておらず、やむを得ず自作の手形用紙を発行した場合、後日きちんとした形で振出人側の取引銀行から発行される手形用紙に差し替えてください。

自作の手形用紙は次の「手形要件」を満たしていなければ無効になります。受取人側も自作の手形用紙を受け取った場合は「手形要件」を確認した上で受け取るようにしましょう。

手形要件
  • 為替手形文言・約束手形文言
  • 一定の金額について、条件付きではない単純な支払を委託するとの文言
  • 為替手形の場合は支払人(振出人が支払を委託する引受人)の名前
  • 満期日(支払期日)
  • 支払地・支払い場所
  • 受取人の名前
  • 振出日と振出地
  • 振出人の署名(記名(ゴム印押捺)・捺印で可能)

手形のルール2:「手形」の支払期日は双方合意の上で決定するべし

手形が振り出されてから支払期日までの日数のことを「手形サイト」と呼びます。手形サイトは一般的に以下の通りです。

  • 30日
  • 60日
  • 90日
  • 120日

に設定されます。しかし手形の支払期日には法律がないため

  • 7ヵ月
  • 10ヵ月
  • 12ヵ月(1年)

といった感じで、長期の設定にすることも可能です。

基本的には受取人と振出人の双方が合意した支払期日で設定されます。ですが受取人と振出人の関係上、振出人が一方的に支払期日を設定することがほとんどです。

支払期日が長くなることは受取人にとっては好ましくないことになるため、必ず他の面での交渉を行ないましょう。1年などの長期になる場合は、資金繰りが悪化する可能性が非常に高くなってしまいます。その場合は支払期日の短縮を交渉すべきです。

手形のルール3:「受取人」は支払期日含めて3営業日以内に呈示すべし

手形はただ持っているだけは現金化できません。かならず支払期日を含めた「3営業日以内」に呈示しなければなりません。支払期日を過ぎてから呈示をしても、代金の受取りができなくなるのです。

取引銀行によっては支払期日まで手形を預かってくれるところもあります。紛失や呈示忘れの防止にもなるため、手形を受け取ったら、まずは取引銀行に相談してみるとよいでしょう。

手形のルール4:「振出人」の不渡りは半年に1回まで!

振出人にとって、手形の支払期日が近づくとプレッシャーになります。当座預金口座に支払うためのお金が用意されていれば問題ありませんが、お金を用意できない場合は「不渡り=倒産の可能性」が出てくるのです。

万が一、発行した手形のお金が用意できず、不渡りになってしまうと、銀行からの視線が厳しいものに変わります。新たな融資を受けてもらえなかったり、すでに融資している金額の早期返済を迫られたりと、風当りは厳しいものになるでしょう。

しかも半年間で2回の不渡りを出してしまうと、取引銀行から取引停止を言い渡されてしまいます。銀行から三行半を突きつけられるようなもので、高い確率で資金繰りが立ち行かなくなり、倒産するリスクが高まります。

どうしても不渡りを出してしまう場合は仕方がありませんが、半年間で2回の不渡りは絶対に避けるべきです。

手形のルール5:手形は第三者に「譲渡」できる

受取人が持っている手形は第三者に支払いの代わりとして「譲渡」ができます。譲渡する場合は手形の裏面に

  • 会社名
  • 住所
  • 押印
  • 譲渡する相手(被裏書人)の会社名

上記の内容を記載することで自作での手形取引が可能です。この裏に必要事項を記載して手形を譲渡することを「裏書譲渡」と言います。裏書譲渡された手形は「裏書手形」や「廻り手形」とも呼ばれています。

手形のルール6:振出人の支払がない場合は手形署名者に支払いを請求できる

裏書譲渡した手形は支払いの代わりに使えますが、万が一振出人が支払期日にお金を用意できなければ大きな問題が起こります。最終的に手形を持っている人(手形所持人)が取引銀行に呈示した場合、振出人ではなく、譲渡をしたあなたの企業に手形に書かれている代金を請求されるのです。これは法律で認められている権利で「遡求権」と言います。

手形割引という手形を現金化する資金調達方法がありますが、これも裏書譲渡の遡求権と同じで、手形割引で得た資金を全額返金しなければならないのです。裏書譲渡をする場合は、遡求権のリスクを踏まえて行ないましょう。

参照 手形割引で資金調達 銀行や専門業者で支払期日前に手形は換金可能

 

「約束手形」と「為替手形」の違い 2者間取引 or 3社間取引

手形には「約束手形」と「為替手形」があります。この2つの違いは2者間での取引なのか、それとも3者間での取引なのかという点です。

「約束手形」の仕組み(2者間取引)

約束手形は振出人と受取人の2者間で行なう取引の方法です。

「為替手形」の仕組み(3社間取引)

為替手形は振出人と受取人に第三者である「引受人」が入った取引で使われるのが「為替手形」です。為替手形の定義は「受取人」と「振出人」と「引受人」の3者間で決められた期日に売掛金の支払いを約束した有価証券のことになります。

 

完璧な資金調達方法は存在しない。ベストは難しいがベターを選ぶことは可能だ。
一般的には2者間での取引となる。つまり約束手形を利用することになる。もしややこしくなりそうであれば、手形での支払いを契約の段階で断ることもできる。
そして手形には不渡りというリスクがあるため、手形で問題が発生したら士業に介入してもらうという方法もアリだ。

 

手形の仕組みを知っておけば不利な取引でも資金調達ができる!

手形のメリットやデメリット、そして基本的なルールを覚えておくことは、自社の経営に大きなプラスになります。手形と掛け取引の違いを理解しておけば、自社に有利な交渉も可能です。

手形の仕組みを理解して、不渡りや手形詐欺などから自社を守れるようにしましょう。

金融の知識の中で「約束手形」の仕組みは基本中の基本。手形で取引を行なう場合は事前の予習は必要不可欠と言えるのだ。

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株式会社デキタの代表取締役。資金調達に関する知識を身に付けるために「ファクタリングで資金調達デキタ!」を制作・運営。その延長線上で、事業者の利用する資金調達方法に焦点を当てた当サイトを企画・制作・運営。 資金調達に関する記事執筆は2018年より開始。複数の税理士やファイナンシャルプランナーと交流しながら、記事執筆をつづける。