2020年10月5日の記事によると、愛媛県の真珠養殖関連団体は新型コロナの影響で財政的な支援を県に対し要望したということです。
県漁協によると、国内外の真珠の販売会が中止となり販売量が例年の2割程度に落ち込んでいるということです。
問題となっている点は、売り上げの減少による運転資金と、水揚げされたが販売されなかった商品を品質を維持したまま保管するための機材についてとのことで、支援を知事に要望したということです。それに対し知事も全面的な支援をする考えを示したということです。
これは愛媛県だけに限った話ではありません。全国の真珠養殖業者に関わる話です。それをこのニュースを見て知ることになりました。
目次
真珠業界の今 苦境に立たされている
このニュースを受け、真珠業界がどのような状態になっているかを調べてみました。
すると2020年5月20日の記事では、「神戸の真珠業界が苦境に立たされている」といった内容の記事を見つけることができました。
参照 神戸の真珠 売り上げ急減 香港で対面商談できず(外部サイト)
神戸の真珠業界の主な卸先は海外となっていて、展示会が行われる場所が香港であるとのことです。香港を中継基地として大きな市場でもある中国へ真珠が流れるということです。
しかしコロナの影響で海外の展示会が行われず、販売する場所を失ってしまったというわけです。影響はコロナだけではありません。香港といえば最近はデモで注目されています。
結果として商品を販売する場所や機会を失ってしまい、固定費はかかり続けている現状が続き、どの真珠業者も経営が苦しいことが容易に想像が付きます。
ある真珠加工貿易業者は、無利子の融資で当面の間しのぐということです。
無利子の融資 聞こえは良いが果たして
コロナの影響により、多くの会社が経営難に陥っています。そしてその影響はこれからもしばらく続くと予想されます。そのため、日本政策金融公庫を筆頭に実質無利子の融資が開始されました。そして民間の金融機関もそれに続いて実質無利子の融資を開始しました。
融資ですから借金をするということです。借金をするということは利息が発生します。実質無利子であるため利息を支払わなくても良いというわけですから、考え方によっては良さそうに思えます。ちなみに「実質無利子」というのは利息が発生しないというわけではありません。利息が発生しているのですが、その分が戻ってくるということであり、プラスマイナスで考えて無利子ということになるわけです。
話を戻しますが、実質無利子であろうと無担保であろうと借金は借金です。数年後には返済をしなければなりません。この数年後の返済が、数年後の経営を圧迫してしまう可能性が考えられます。
経営難が続けばそのうち融資が受けられなくなる可能性がある
たとえば年間の運転資金が5000万円必要な会社が、実質無利子の融資を5000万円受けたとします。このお金を利用することで少なくても1年間は会社の経営を続けていけることでしょう。
しかしあくまでも「1年間」の話です。コロナの影響が今後数年続いたとしたら、同然資金は足りなくなります。
そのとき、同じように融資を受けられるでしょうか?難しくなってくることでしょう。
融資をする側としても限度があります。たとえば銀行であれば、融資をし利息を得ることで利益を上げています。では銀行にある現金をすべて融資として外に出すようなことをするでしょうか?それは考えられません。銀行経営が成り立たなくなってしまいます。
するとどうなるか?融資を希望する事業者に対して、追加融資はできなくなってしまいます。
追加融資を受けられなかった事業者はどうなってしまうか?資金が無くなってしまうわけですので、会社を継続させることができなくなってしまいます。これにより、融資をした銀行としても貸していたお金が戻って来なくなってしまうリスクにさらされてしまうわけです。
資金調達しやすい状況ではある 一応融資を受けておくという考えも
現在は、実質無利子・無担保で資金調達しやすい状態です。これは通常であれば考えられない状態なのです。
この状態の時に、資金調達をしておくというのは1つの経営手段だと思います。
たとえば一般的な金融機関から融資を受ける場合には、担保や保証人が必要となってきます。そして審査は厳しくなります。厳しい審査に通り融資を受けられたとしても、融資を受けた金額に利息を上乗せして返済する必要があります。これが今までの一般的な融資の姿です。
ところが現状では、実質無利子・無担保の融資を受けられやすい状況です。つまり通常であれば受けれない条件で融資を受けやすい状況になっているのです。
たとえばもしコロナが収束した後に、会社の経営が悪化してしまったとしましょう。そのとき金融機関に融資の相談を持ち掛けても良い結果は出にくいように考えます。
理由としては2つあります。
1つ目は金融機関というのはお金のない人に対してはお金を貸しません。返済ができると判断できる人物に対して融資を行うためです。そうでなければ融資したお金が戻ってこない可能性があるためです。
2つ目はコロナの影響で、実質無利子・無担保で多くの融資を行ってきたため、貸し渋りが発生する恐れがあるのです。つまりなるべく融資をしない、融資をするとしたら確実に返済できるレベルの会社にのみということです。
どのような状況になるのかはその時になってみなければ分かりませんが、可能性としては考えられる状況なのです。このような可能性が考えられるのであれば、そして実質無利子であるのなら、無利子となっている対象機関に資金調達をしておき、万が一の時のために手を付けずに置いておくというのも会社経営には必要なことだと思います。
真珠業者が利用できそうな資金調達方法
このニュースを受け、動産担保融資を利用できないのかという考えが浮かびました。動産担保融資とは会社の持つ価値のある資産を担保として融資を受ける方法です。
今回の真珠業者の場合、売る場所が無くなってしまったことが大きな問題となっており、売るものが無くなってしまったわけではないということです。そのため真珠という資産をもっているのです。これを担保にすることで融資を受けられる可能性があります。
ただし動産担保融資で恐れることは、資産を適正な価格で評価してもらえるか分からないという点と、売る場所がないということは価値がないと捉えられる可能性もあるということです。
また動産担保融資は、1年以内に現金化することのできる資産である流動性のある資産を対象としています。今回の場合、「1年以内」という所が上手く該当しない可能性があります。
とはいえ、資金調達する可能性の1つとして、このような資金調達方法が使える可能性があるということを覚えておくとよいかもしれません。