商工組合中央金庫(商工中金)といえば、公的融資の代表格の1つです。公的融資とは国が経営している会社からお金を借りるといったイメージで良いと思います。そして公的融資の代表格である日本政策金融公庫とは違い、比較的金額の大きな融資を取り扱っているというイメージです。
実際、年商が1億円が最低ラインとも、年商が5億円ほどなければ融資の利用自体が断られてしまうとも言われています。
私個人の認識はこのような物でした。
しかし2020年10月6日に、東京商工リサーチがアップした記事には、私が今まで思っていたこととは異なった内容の記事がアップされていました。私と同じように勘違いをしている事業者もいる可能性があるため、ここに記事として残します。
目次
1億円が最低ラインではない!?緩和された可能性も
今回、商工中金社長の話は以下の通りでした。
8月末時点で申込件数が3万8500件、承諾件数が2万4800件、そして承諾金額は1兆8500億円、実行ベースだと1兆5600億円を超えた。
参照 コロナ禍の危機対応「事業者の資金繰り最優先」 申込件数は約4万件(東京商工リサーチ)
単純計算ではありますが、1兆5600億円を2万4800件で割って、1件当たりの金額を算出してみることにしました。すると1件当たり約6000万円ということになりました。あくまでも平均値です。
すると、「商工中金では年商1億円が最低ライン」という話が誤った情報ということになってしまいます。もしくはコロナウイルス影響により、最低ラインがある程度緩和された可能性はあります。
もし緩和されたということであれば、資金調達しやすくなったということであり、事業者にとっては選択肢が広がったということになります。
商工中金と日本政策金融公庫を比較
商工中金と日本政策金融公庫におけるコロナウイルス関連貸し付けを表にして比べてみました。
※2020年10月6日時点での数字です。
商工中金 | 日本政策金融公庫 | |
---|---|---|
対象者 | ①最近1か月の売上高が前年又は前々年の同期と比較して5%以上減少した方 ②業歴3か月以上1年1か月未満の場合等は、最近1か月の売上高が、次のいずれかと比較して5%以上減少している方 ・過去3か月(最近1か月を含む。)の平均売上高 ・令和元年12月の売上高 ・令和元年10月~12月の売上高平均額 | <国民生活事業> ①最近1ヵ月の売上高が前年または前々年の同期と比較して5%以上減少している方 ②業歴3ヵ月以上1年1ヵ月未満の場合等は、最近1ヵ月の売上高が次のいずれかと比較して5%以上減少している方 ・過去3ヵ月(最近1ヵ月を含みます。)の平均売上高 ・令和元年12月の売上高 ・令和元年10月から12月の平均売上高 <中小企業事業> ①最近1ヵ月の売上高が前年または前々年同期に比し5%以上減少していることまたはこれと同様の状況にあること(注1) ②中長期的にみて、業況が回復し、かつ、発展することが見込まれること |
資金使途 | 運転資金、設備資金 | 運転資金、設備資金 |
担保 | 無担保 | 無担保 |
貸付期間 | 運転15年以内、設備20年以内 | 設備資金 20年以内、運転資金 15年以内 |
据置期間 | 5年以内 | 5年以内 |
融資限度額 | 6億円 | 8000万円(国民生活事業) 6億円(中小企業事業) |
金利 | 当初3年間は基準金利は0.21% 4年目以降は基準金利の1.11% | 当初3年間は基準金利は0.9% 4年目以降は基準金利の1.36~1.65% |
表で比較した限りでは、金利が商工中金の方が低く設定されていることが分かります。その他はほぼ同じといえます。
ただしですが、商工中金を利用する際には、長江中金の株主となっている中小企業の組合に入る必要があります。ただし組合に入っていない状態だったとしても、融資を受けるときに入会すれば融資の対象となります。一方、日本政策金融公庫にはこのような条件はありません。
審査通過率64%の現実 3万8500件の申し込みに対し承諾件数が2万4800件
今回の記事では、商工中金への融資申し込みは3万8500件で承諾件数が2万4800件とのことでした。計算してみると、申し込みをした事業者の64%が融資を受けられたということになります。
一方日本政策金融公庫の発表は以下の通りです。
申込件数:122,086件/決定件数:62,346件⇒決定率:51%〔令和2年4月5日時点〕
申込件数:599,996件/決定件数:499,419件⇒決定率:83%〔令和2年6月25日時点〕
融資開始当初は低かった数字が、2ヶ月ほどして一気に高くなっていることが分かります。結果として数字だけから見ると、商工中金よりも日本政策金融公庫の方が審査通過率が高いです。
周りの経営者からよく聞く話として、日本政策金融公庫の方が圧倒的に融資を受けやすいという話を聞きます。だからこそ知名度が高いです。
受ける融資によっては条件緩和が期待される
年商1億円が利用の最低ラインとも年商が5億円ほどなければ利用できないとされていた商工中金からの融資ですが、危機対応融資として新型コロナウイルス感染症特別貸付が開始されています。この貸付であれば、年商がそれほど高くなくても利用できる可能性がありそうです。
ただしコロナ関連の融資は、時間とともに状況が変化している状態です。そのため貸付の条件も変化していく可能性があります。