補助金は条件付きで、国や政府から事業者に支払われる「もらえるお金」です。確実に受け取れるお金ではないため年間予算として計画に組み込むのは危険です。
金額が大きいことから、事業者の年間予算に組み込む予定にしている人もいるでしょう。しかし、補助金を年間予算に組み込むのは「危険」です。
事業の売上以外から得られるお金を年間予算に組み込む場合、補助金よりも国が行っている制度融資や売掛金を売却するファクタリング、ビジネスローンやリースバックといった資金調達方法の方を検討すると良いでしょう。
ここでは、なぜ補助金を事業者の年間予算に組み込むのは危険なのか?についてお話しします。
目次
補助金は年間予算計画に組み込んではいけない
補助金は年間予算計画に組み込まないほうが良いでしょう。
事業者が決算期前に作成する「年間予算計画」は、事業の資金繰りの方向性を決める重要な指標です。
その重要な指標の中に、手にすることができるかどうかわからない補助金を組み込むのは危険となります。
補助金で必ず行われる審査
補助金がいくら国からもらえるお金だとしても、ただでもらえることはありません。しかるべき書類を提出し、国がお金をあげても問題ないと判断された上で補助金が振り込まれます。
審査は補助金の目的によって異なります。既存の事業の新規分野開拓が目的の補助金であれば、その新規分野開拓に伴う費用の帳簿や計画表などが審査対象になるでしょう。学生の就労補助が目的の助成金であれば、事業の就労状況(離職率など)が審査対象になります。
このように、補助金には必ずなにかしらの「審査」が行われるのです。
審査結果によっては補助金がもらえない
金融機関の融資審査と同じように、審査に落ちてしまうと、補助金はもらえません。助成金は条件を満たせば原則支給されるのに対し、補助金は条件+審査に左右されてしまうのです。
たとえば、条件が「自然エネルギー推進のための設備投資」というもので、実際に事業所の屋上に太陽光電池設備を作ったとしましょう。条件である自然エネルギーは満たしているのにかかわらず、審査次第で補助金をもらえなくなってしまう可能性もあるのです。
補助金を当てにする危険性
審査次第ではもらえない可能性がある補助金を事業予算計画に組み込むのは危険です。そもそも補助金にしろ助成金にしろ、審査に受かってお金がもらえるタイミングは、条件となる設備投資等をしたあと、つまり「後払い」で支払われるのが基本です。そのため、補助金がもらえるだろうという見通しで予算計画を組み、もし審査落ちしてしまった場合には大幅な予算修正が必要になるでしょう。
高額な設備投資等の場合、補助金がもらえないことによって、事業の財務状況を悪化させてしまう原因にもなりかねません。だからこそ、補助金を事業予算計画に組み込むのは危険なのです。
もし審査に通らなれば補助金は入ってこない。
補助金の審査に通ったらラッキー・・・くらいの気持ちでいたほうが良い。
補助金ありきの事業計画は、もらえなかった時に大きく狂ってしまう可能性があるのだ。
補助金は宝クジのイメージくらいがよいかも
補助金は宝クジが当たるくらいのイメージでいたほうが良いかもしれません。
もちろん、宝クジにくらべると受け取れる可能性は絶対的に高いのですが、イメージとしての話です。
人生設計に当選を入れることはない
宝クジが当たる前提で、物事を進める人はほとんどいないことでしょう。
このような考えで会社を経営している事業者はまずいないでしょう。
あまりにも不確実すぎます。
ここまでとは言わずとも、補助金もそのくらいの気持ちでいたほうが良いでしょう。なぜなら確実に受け取れるお金ではないためです。
先に全額支払うのがポイント
補助金は、はじめは全額事業者が出すのがポイントとなります。
たとえば事業拡大をするためにECサイトを作る計画を立てたとします。金額は300万円です。その際、補助率3分の2の補助金を利用したとします。
補助金を受け取ることができれば、事業者は200万円を受け取ることができます。つまり300万円のECサイトを100万円で手に入れることができるということです。
これが一般的な補助金の仕組みです。
しかしこれはあくまでも補助金の申請に通った場合の話です。そして注意しなければならないのは、はじめに事業者が300万円を支払うことになるのです。
審査が上手く通れば、補助金の200万円を受け取ることができ、実質的には100万円でサイトを手に入れることができたということになります。
審査に通過しないことも
補助金は必ずしも受給することができるとは限りません。
補助金を受け取れれば実質100万円で手に入れることができたECサイトも、補助金が受け取れないことで300万円かかってしまうという状態になってしまうこともあるのです。
補助金にはさまざまなものがあり、受け取れる難易度は異なりますが、非常に申請が細かいといった印象があります。
低リスクで受け取れるお金であるため、条件や審査は厳しくなりがちです。
このようなこともあるため、補助金を当てにしすぎてはならず、一種の宝クジくらいのイメージでいたほうがよいのです。
年間予算計画に組み込みやすい資金調達方法3選
事業の年間予算計画に売上や補助金以外のお金を組み込む場合、以下の3つがオススメです。
それぞれの特徴をお話しします。
ファクタリング
ファクタリングとは、手持ちの売掛金を第三者である専門業者に手数料を支払った上で買い取ってもらい、その差額を資金にする方法です。最近ではTOYOTAやユニクロ、ZOZOTOWNといった大企業がファクタリングで得るお金と手数料を年間予算に組み込むなど、積極的に使われている資金調達方法でもあります。
借金にならず、申し込みから最短で即日には資金調達ができることもあり、中小企業庁からも利用を励行されています。ただし、手数料が発生することや売掛金総額の満額を資金化できるわけではないため、利用する場合には社内で十分に検討してから利用した方が良いでしょう。
日本政策金融公庫の制度融資
日本政策金融公庫とは、政府が管轄している金融機関です。正確には財務省が管轄している特殊会社になります。主に融資を目的にしており、事業者や個人向けにさまざまなタイプの融資商品を扱っているのが特徴です。
民間の銀行や金融会社の融資商品に比べ、審査に通りやすく利率も安いなどのメリットがあります。ただし、融資商品を申込む場合には、補助金のような「条件」があります。条件を満たしていれば審査も通りやすくなるため、事前に日本政策金融公庫に相談の上で申込むと良いでしょう。
最近では市役所や県庁などの行政機関や商工会、商工会議所といった専門機関を通して融資申し込みも可能です。
ビジネスローン
ビジネスローンとは、金融機関や金融会社が提供している融資商品のことです。金融機関が提供している事業性融資に比べて借入れできる金額上限は低いものの、審査基準がゆるいため、緊急時の資金調達に向いています。
事業予算に組み込む資金調達方法としては利率や利用上限額の低さがネックになるものの、調達のしやすさを踏まえれば比較的組み込みやすい方法といえるでしょう。デメリットを踏まえつつ計画的に利用することが重要になります。
参照 優良ビジネスローン3選
補助金がもらえる可能性を高めるならば専門家へ相談しよう
事業予算計画に補助金を組み込むのにはリスクがあるものの、もらえる条件が揃っているならば申請しない手はありません。
補助金がもらえる可能性を高めるためにも「専門家」で相談してみることをオススメします。
資金調達の専門家=経営革新等支援機関
専門家とは税理士や公認会計士、中小企業診断士といった「士業」のほか、商工会や商工会議所といった機関がそれにあたります。専門家の中でも「経営革新等支援機関」(※以下支援機関)の専門家は中小企業庁から認定を受けているスペシャリストです。
支援機関の専門家は補助金の申請サポートを得意にしています。補助金をもらう可能性を高めるためにも一度専門家に相談してみるのも1つの方法でしょう。
相談する支援機関を検索するには、中小企業庁のホームページにある「認定経営革新等支援機関検索システム」を活用すると良いでしょう。
専門家が行う補助金の申請支援の内容
補助金の中には、支援機関のサポートを義務付けている「事業再構築補助金」や「ものづくり補助金」などがあります。専門家が行う補助金の主な申請支援は「経営計画書の作成支援」になります。
補助金を申請する場合、もらったお金をどのように活用するかを計画書にして提出しなくてはなりません。計画書には専門的な知識はもちろんのこと、お金の流れを論理的に説明するための説得力が必要になります。
支援機関の専門家は、税理士や公認会計士といった事業者支援のエキスパートです。財務面を中心に補助金がどのように活用されるのかを論理的に計画書に反映させてくれます。
専門家選びの注意点としては、自分の事業(業界)に詳しい専門家に依頼することです。複雑な計算や事業の流れが特殊なものもあるでしょう。自分の事業に詳しい専門家であれば、スムーズに申請が進むことでしょう。
補助金の本質はあくまでも「補助」である
補助金はあくまでも「補助」です。事業予算計画に組み込むのは「審査」に落ちたときのことを踏まえるとリスクが高いでしょう。
事業予算計画に組み込むのであれば、ファクタリングや日本政策金融公庫の制度融資、ビジネスローンなどを活用した方がベターです。
補助金がもらえるならば、あくまでも補助として考えましょう。もし申請に不安があるならば経営革新等支援機関に申請を支援してもらうことも検討すると良いでしょう。