補助金と助成金は、時間に余裕のあるのであれば活用したい資金調達方法です。なぜならどちらも基本的には返済義務がないためです。
条件を満たしたり審査に通過することができれば、返済する必要のないお金をもらえるのです。この点が数ある資金調達方法の中でも最大の魅力です。
まず補助金ですが、世の中には数多くの補助金があります。常に応募しているというわけではなく、特定の期間に応募が始まることが多いです。そのタイミングで応募し、審査に通ることができれば補助金を手にすることができます。
あくまでも「補助」なので、補助率が定められていることが多いです。たとえば「補助上限が100万円であり、そのうちの2/3を補助します」といった内容です。
次に助成金は、定められた条件を満たすことができれば返済義務のないお金をもらうことができます。審査は定められた条件を満たしていれば基本的には通ります。
ただ気を付けたいことは「不正受給は絶対にしてはならない」ということです。判明すれば大きなペナルティが課せられる可能性があるためです。
目次
補助金・助成金の違い 似ているようで全く違う
補助金と助成金は似ているようで違うものです。
そして補助金の場合、非常に数多くの種類があります。
まず大まかですが、補助金と助成金の違いを紹介します。
補助金 | 助成金 | |
---|---|---|
返済の義務 | なし | なし |
申請期間 | 短い | 長い |
支給のタイミング | 後払い | 後払い |
支給条件 | 条件を満たしていても審査に左右される | 条件を満たせば原則支給 |
使途証明 | 報告書などで報告 | 必要なし |
財源 | 法人税 | 雇用保険料 |
どちらも返済の義務がありません。つまり借金ではありません。
そして補助金は申請期間が短い傾向があり、助成金の申請期間は長い傾向があります。とはいえ、内容によって変わってくるためあくまでも目安です。
支給のタイミングが後払い
次に支給されるタイミングが、基本的には後払いです。そのため支給されない可能性もあるため、それを頭に入れて事業を進めなければなりません。
支給条件は助成金は条件さえ満たしていれば支給されます。しかし補助金の場合、通常審査が行われますので、それによって条件を満たしているのにもかかわらず審査に落ちてしまうことがあります。
補助金と助成金、両方に言えることですが、不正に受給をした場合にはかなり重いペナルティを課せられます。不正とは何を指すかというと、条件に当てはまっていないのに虚偽の申請をしたとか、虚偽の報告書を提出したとかです。
補助金は利用予定の一部をもらえるものだ。たとえば100万円必要であれば60万円もらえるが40万円は自腹を切るといった感じだ。
助成金は条件さえクリアしてしまえばもらえる対象となる。
ただしどちらも不正に受給したときには大きなペナルティを課せられる可能性がある。
補助金・助成金を利用する条件
事業者向けの補助金・助成金を利用する条件は、事業者であることです。事業者というのは、法人の経営者であったり個人事業主のことを指します。
そしてそれぞれの応募条件を満たしている必要があります。これはそれぞれの応募内容が異なるため一概にどの条件を満たしていなければならないということは言い切れません。
たとえば補助金や助成金と似ている性質を持っている給付金を例に挙げて紹介したいと思います。
2020年に発表された「持続化給付金」の場合は、事業者(法人・個人事業)であることがまず第一条件となります。そして次に、事業による収入が前年同月と比べ50%以上減少していることが第二条件となります。この条件に当てはまらなければ1円ももらうことはできません。
また条件に当てはまったとしても、法人は最大で200万円まで。個人事業は最大で100万円までの給付となっています。「最大で」のため、事業者によってはもらえる金額が変わってきます。さらにたとえば法人では最大200万円の給付となりますが、200万円という金額が、事業規模によっては全然少ないという場合もありますし、逆に十分すぎるケースもあるのです。
補助金
ここからは補助金の一例を紹介します。補助金は国、県、各市町村単位で設置されており、非常に多くあります。
IT導入補助金
たとえば「IT導入補助金」の場合。「小規模事業者が生産性向上をするためにITツールを導入するための費用を一部負担する」といった内容のものです。
条件は以下の通りとなります。
- 事業者であること(飲食、宿泊、小売・卸、運輸、医療、介護、保育等)
- 対象物はITソフトウェアやITサービスなどであること※ただしハードウェアは対象外
この補助金の活用例は、たとえば飲食店などでクレジットカード決済を導入したい場合であったり、在庫管理をタブレット内のソフトで行ったりするためのツールを導入するための費用を補助するといった内容です。補助率は1/2。条件は450万円であり下限は30万円です。
つまり導入費用が100万円のITツールを導入したいと考えたとします。この補助金を利用すれば補助率が1/2であるため、自分の会社からは50万円出せば100万円のITツールを導入することができるということになります。
このIT導入補助金は、2020年6月8日の段階では募集期間が未定の状態となっていました。いつ終了してもおかしくないということです。
ものづくり補助金
たとえば「ものづくり補助金」の場合。「新製品やサービス開発、生産プロセス改善等のための設備投資等を支援する」といった内容となっています。
条件は以下の通りです。
- 事業者であること
この補助金の活用例としては、外部からの部品調達していたのを、自社で内製化するための設備投資であったり、新規取引先からの注文に応えるために生産ラインを新設・増設したりする場合などに活用することができます。
補助の上限は原則1000万円。補助率は中小企業の場合は1/2であり、小規模事業であれば2/3となっています。また特別枠として3/4の補助率となる場合もあります。
ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金(特別枠)
2020年の新型コロナによって影響を受けた事業者に対し、特別枠が設けられました。それが「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金(特別枠)」です。
今までは宣伝広告費や販売促進費といったものは補助金の対象とならなかったのですが、特別枠の場合は、それらが対象に含まれることになりました。
最大で1000万円の補助を受けることができます。
補助金であるため、受給するためにはまず、以下のいずれかの利用目的でなければなりません。
- A.顧客への製品供給を継続するために必要な設備投資や製品開発(2/3)
- B.非対面・遠隔でサービスを提供するビジネスモデルへ転換するための設備・システム投資(3/4)
- C.テレワーク環境の整備(3/4)
これらを目的としていることが1つ目の条件となります。※カッコ内の数字は補助率です。
次に以下の3つの要件を満たす必要があります。
- 付加価値額 +3%以上/年
- 給与支給総額 +1.5%以上/年
- 事業場内最低賃金が地域別最低賃金+30万円
付加価値額というのは、補助金を利用して設備した結果、毎年3%以上利益を上げるということになります。給与支給総額というのは、従業員に支払う給与額が1年で1.5%増やすということとなります。
利用できる事業
この補助金はどのような事業で利用することができるのかを紹介したいと思います。
製造業の場合
今まで製品を製造するために、海外から部品を取り寄せていたとします。
しかし海外から部品を取り寄せることが困難となり、自社で部品を製造したいと考えたとします。その部品を製造するための設備を設ける費用が対象となります。
宿泊業の場合
ホテルや旅館など、チェックインが必要となるサービスを提供していたとします。感染拡大を防止するため自動チェックインシステムを導入したいと考えたとしましょう。
その際のシステム導入費や、システム導入に関わる支出、さらにはシステム導入を対外的に宣伝する際の宣伝費が対象となります。
助成金
ここからは助成金の一例を紹介します。助成金は補助金に比べると数は少ないです。
人材確保等支援助成金
たとえば「人材確保等支援助成金」の場合。「事業者が雇用管理を改善するためや、生産性向上を目的とする場合」に利用できる助成金です。
条件は以下の通りとなっています。
- 従業員の処遇や労働環境の改善のための雇用管理制度を新たに導入した事業主
- 介護福祉機器の導入を行った介護事業主
- 賃金制度を整備した介護事業主又は保育事業主
- 人事評価制度と賃金制度を整備した事業主
- 生産性向上に資する設備等への投資を通じて雇用管理改善を行った事業主
- 働き方改革のために新たに労働者を雇い入れ、一定の雇用管理改善を達成した事業主
- 外国人特有の事情に配慮した就労環境の整備を行った事業主
そしてこの助成金にはさまざまなコースが設定されています。
- 雇用管理制度助成コース
- 介護福祉機器助成コース
- 介護・保育労働者雇用管理制度助成コース
- 人事評価改善等助成コース
- 設備改善等支援コース
- 働き方改革支援コース
- 外国人労働者就労環境整備助成コース
どのコースを選ぶかにより、助成金額が変わってきます。
もし興味があるのなら「ミラサポplus」を参照してみるとよいだろう。
補助金・助成金の仕組み 財源が異なる
補助金の財源は「法人税」です。そのため法人税を支払っていなかったり、滞納していたりする場合は、申請が難しくなってきます。
助成金の財源は「雇用保険料」です。失業手当にも使用されたりします。
このことからも分かるように、補助金は会社が税金とした払ったお金、助成金は労働者が支払ったお金がそれぞれ財源となっているのです。
そしてこれらの目的は「会社を良くしてね。会社で働く人たちを良くしてね。つまり社会を良くしてね。」といったものです。
補助金・助成金を利用するときに必要な書類
補助金・助成金を得るために必要な書類はそれぞれ異なります。ここでは補助金や助成金と性質が似ている「持続化給付金」を例にして紹介したいと思います。
当ページでも簡単に説明はしますが、詳しくは持続化給付金の専用ページを参照してください。また税理士に会計作業をお願いしている事業者は、税理士に依頼することで必要書類を揃えて送ってくれます。
持続化給付金の場合、電子申請と書類申請の2つの方法があります。そして必要となる書類は以下の通りです。
- 前年度の確定申告書類
- 対象月の売上台帳
- 通帳のコピー
- 本人確認書類
電子申請で行う場合には、提出する必要な書類をデジタルデータ(PDF・JPG・PNG)で用意する必要があります。
前年度の確定申告書類
確定申告書別表一と法人事業概況説明書ですが、通常、税理士にお願いすればもらうことができます。
確定申告書別表一は以下のような書類です。多少用紙が異なる場合もあります。
法人事業概況説明書は以下のような書類です。
それぞれ必要項目を記述します。顧問税理士がいるのであれば依頼することで、必要項目を記入した書類をもらうことができるでしょう。また顧問税理士がいなくても、スポット的に書類作成業務を行ってくれる税理士もいます。
対象月の売上台帳
持続化給付金の場合、前年度の対象月と比較し、50%以上売り上げが減少していることが条件で得られる給付金です。
そのための証明となる50%以上売り上げが減少した月の売上台帳、つまり売り上げを証明することのできる書類を提出する必要があります。
「売り上げを証明することのできる書類」といっても難しそうに聞こえますが、たとえば経理ソフトから抽出したデータであったり、自作でのエクセルデータ、手書きの売上帳でもよいとされています。
ただし給与明細、通帳の写し、レシート、請求書等は認められないとのことです。
通帳のコピー
法人名義の通帳のコピーが必要となります。通帳のオモテ面と通帳を開いた1・2ページ目をコピーします。
つまり、銀行名・支店番号・支店名・口座種別・口座番号・名義人が確認できる情報をコピーできればよいとのことです。
本人確認書類
運転免許証や個人番号カードなどです。
たとえば補助金の場合、申請する補助金にもよりますが、応募申請書、事業計画書、経費明細書、事業要請書、補助金交付規定、交付申請書、実績報告書などといった多くの書類を提出することもあります。正直、書類の内容が難しく、何て書いてあるのか、何を書いてよいのか分からないといったことも多々あります。
補助金・助成金の審査基準 補助金の審査は厳しい
補助金や助成金の審査基準の難易度は、どの補助金や助成金を受けるのかによって異なってきます。また審査に携わる担当者によって若干の違いがあります。
基本的に助成金の場合は、応募条件を満たしていれば受給することができます。
問題は補助金です。基本的には後払いでの受給となります。はじめにお金を出して、その後申請し、申請に通ったらお金がもらえるといったものが多いです。そのため、補助金を頼りにしてお金を使ったけど審査に通らなかった・・・ということも可能性としては考えられるのです。
後払いには要注意
もう一度お話ししますが、補助金というのは後払いとなります。
つまり補助金をもらう予定でお金を使って設備を設置したのにもかかわらず、結果として補助金の申請が下りないということもあるのです。
たとえば、2/3の補助率の補助金で1000万円の補助金を得る場合、1500万円の設備投資をするということになります。
もう少し分かりやすく説明します。1500万円の設備を設置しようと考えたとします。その際、2/3を補助してくれる補助金の申請を行ったとします。1500万円の2/3ですので1000万円の補助してくれるということになります。
申請が通れば1500万円使っても1000万円が補助金としてもらえるということなのです。そのため会社としては1500万円分の買い物を500万円でできたということになるのです。
ただし違う見方をすると、1000万円の補助金をもらうためには1500万円を会社として準備しなければならないのです。500万円であれば用意できるかもしれないが、1500万円は用意することができないというケースもあることでしょう。
それでも補助金を利用して設備を整えたいと考えるのであれば、金融機関などで融資を受けるなどして資金調達する会社も少なくありません。
補助金の審査は厳しい
補助金の審査は比較的厳しいとされています。
まず大前提として、補助金の利用目的が公募内容に合致していなければなりません。次に審査する人ですが、税理士や中小企業診断士なども「士業」が担当します。彼らに対し、「これは補助金が必要だ」と思われるような資料を提出することが重要となります。
つまり必要事項が書かれていても、字が汚くて読みづらいというのはNGです。さらに審査員は多くの申請書類を審査します。その中には審査員の持つ知識では理解が難しい分野の事業者からの申請も入っています。士業は幅広い知識を持っていますが万能というわけではありません。
申請書類が難しい内容、専門用語を多用して作成されてしまうと、審査員が理解することが十分に理解することができません。審査に通過できない原因ともなってしまいます。そのため誰でもわかりやすいような内容にしたり、注釈を付けたり、表やグラフを使用したりすることが有効とされています。
補助金・助成金のメリット・デメリット
補助金・助成金のメリット・デメリットを紹介します。
補助金のメリット・デメリット
補助金のメリットは、数の多さです。
非常に多くの補助金が存在します。また補助金額の大きなものも見つけることができます。
これにより新たな挑戦がしやすくなったり、今までの経営を安定させることができます。
補助金のデメリットは締め切りまでの時間と締め切りのタイミング、支給までの時間でしょう。
募集が始まってから締め切るまでの時間が比較的短いことが多いです。
また予算が決まっているため、上限に達してしまえば助成金を得ることができません。
さらには支給されるまでに数ヶ月単位の時間が必要となることも珍しくありません。そして補助金の場合、全額が支給されるわけではなく一部が支給されるのです。
助成金のメリット・デメリット
助成金のメリットは、条件が整っていて申請すれば、基本的に満額もらうことができます。ただ中には補助金のように割合の場合もあります。返済義務はないため、もらえるということとなります。
助成金のデメリットは期間限定であるケースと、条件が定められていることです。
まず応募期間が過ぎてしまえば助成金を受け取ることはできません。
次に条件に当てはまっていなければ受け取ることができません。
意外と知られていない補助金・助成金の手数料 資金調達額の10%〜25%
助成金や補助金の申請を代理人に依頼する場合、手数料は調達金額の10%〜25%とかなり高額になるケースが多いです。
補助金や助成金の申請は意外と大変です。そもそもたくさん種類があって、どれが自分に適しているのか分からない・・・というところから始まり、提出する書類の数、さらには適切な記入が必要となってきます。
書類を見るとわかると思いますが、専門用語で書かれているため、書かれている日本語自体を理解することが難しい・・・なんてことも。
専門家に依頼したいところだが
このようなこともあるため、補助金や助成金を受けたいと考えた時には代理人にお願いする事業者も少なくありません。
税理士や社労士といった代理人に依頼をすれば、基本的には申請に関わる全ての作業をお願いすることができます。
ところがです。この代理人の費用が意外と高額なのです。
着手金を取る場合とそうではない場合とがあったりするのですが、資金調達額の10%~25%を成功報酬として支払うケースが多いです。
100万円を資金調達できたとしたら10万円~25万円を支払うということです。
資金調達の中でも手数料が高いとされるファクタリングと同じくらいの手数料、もしくはそれ以上となる可能性もあるのです。
専門家全員が高額というわけではない
全ての代理人がこの報酬額というわけではありません。そのため少しでも手数料が安くなる代理人を探すことを検討してもよいでしょう。
ただしいくら手数料が安くても、実力や実績のない専門家に依頼して資金調達できなければ意味がありません。
そのため多少報酬額が高くなったとしても、実績のある代理人に依頼した方が良いのは言うまでもありません。
代理人の実績、そしてそこに支払う報酬のバランスを見極めるのが大事と言えるでしょう。まずは顧問税理士に尋ねてみることをおススメします。
補助金・助成金を利用するときに気を付けるべきこと
補助金や助成金を申請したということは、何かしら特定の目的に利用する予定があるからだと思います。その利用目的以外で使うことはできません。不正受給と判断されることもあります。
不正受給と判断されれば、会社の信用は落ちてしまい、その後の経営に悪影響を及ぼす可能性もあります。さらには返還しなければならなくなることもあります。
さらに、たとえば補助金の場合、補助率が1/2とか3/4という内容が多いです。たとえば多くの補助金をもらうために、100万円で済む内容を、200万円と水増しして申請するのも不正受給となります。
不正受給をした場合のペナルティは以下の通りです。
- 補助金の返還+加算金の支払い
- 管轄官公庁のホームページに事業所名などが掲載される
- 信用の低下
- 刑事告発の可能性
事業を行う上でこれらのペナルティはあまりにも大きいと言えます。そのため申請するのであれば慎重に行うことが重要でしょう。
補助金や助成金に頼った事業計画は危険!?
補助金や助成金に頼った事業計画は避けた方がよいでしょう。
そもそも補助金や助成金は後払いが基本です。審査に通らない、通ったのに不備により受給できないなどの可能性も出てくるのです。
「確実に手元にあるお金ではない」ため、「多分、恐らく補助金や助成金が入ってくるだろうから」という思いで事業を進めてしまうのは大変危険な行為です。
「会社の資産状況でもできるけど、補助金や助成金が入ってくれば会社としては助かる」といった内容であれば、利用を考えてみてもよいでしょう。
上手く活用することができれば、事業者にとって武器となるのは間違いない。