自己資金ゼロの状態でも起業することはできます。
起業する業種にもよってくるのですが、多くの場合、会社を起こした後には会社を運営していくための運転資金が必要となるものです。そのため自己資金ゼロで起業する場合には、将来的に資金調達をする必要性が出てくることでしょう。ただし繰り返しますが、自己資金ゼロで起業すること自体はそれほど難しいことではありません。そして起業してから運転資金を調達することも可能です。
1つの意見としては、「起業の直前や直後のほうが資金調達しやすい」ともされています。
今回は自己資金ゼロで起業する方法、そして起業後に必要となる運転資金、会社設立準備費用の調達方法を紹介していきます。
そのほかにも資金調達方法は数多くあるが、必ず選択肢の1つに入れるべきだろう。
目次
自己資金ゼロでも起業は可能!しかし運転資金は必要不可欠
結論から言いますと、「自己資金ゼロでも起業はできます」。
しかし、自己資金ゼロよりは多少なりとも運転資金や事業資金はあった方がいいです。冒頭でもお伝えしたように、会社を立ち上げて実際に経営を行っていく上で、事業に必要な資金「運転資金」が必要になるからです。
このように考える事業者もいますが、かなり危険な考えだと言わざるを得ません。
たしかに起業してすぐに利益が得られるならば、自己資金ゼロでの起業でも大きな問題には直結しないかもしれません。
しかし、もし商品やサービスがまったく売れなかったらどうするでしょうか。オフィスの家賃や光熱費はどのように支払っていくことでしょう。従業員がいる場合、どのように給料を支払いますか。
自己資金ゼロで起業した場合、早々に利益を出さなければ会社として機能しなくなってしまうのです。
そのためまずは、売上以外の方法で自己資金を確保する方法を探す必要があるのです。
しかしそうではない場合、かなり危険な道を進むこととなる。
しばらく会社経営をして、赤字の決算書を持ち銀行に行っても渋い顔をされる可能性は大きい。
そうであれば、決算書がまだ出ていない状態で資金調達交渉をする方がよほど良い。
事業を行う上で「無借金を美学」と考えるのはいかがなものか?
事業者の中には「無借金」をまるで美学かのようにアピールする人がいます。個人的な考えですが、無借金は美学でもなんでもありません。
事業というものはチャンスがあったら攻める必要があります。そのときに「資金が足りないから今は動くことができない」というのは論外です。チャンスは何度も巡ってくるものではありません。
そういった時には、資金調達をしてお金を用意すべきなのです。そうしなければ事業は大きく成長することは難しいのです。
もちろん返済できないような借金をしてしまうのはよくないことです。そして金利の高い借金もよくないことです。つまり借金には「良い借金」と「悪い借金」があります。
例えるなら住宅ローンや自動車ローンは良い借金と言えます。低い金利で借りることができ、家や車という実用的な商品を手に入れることができるためです。ところがそれ以外の金利が高めに設定されているような借金は悪い借金といえます。
利息の返済に苦労する・・・。全く元金が減らない・・・。
このような借金はどのような状況であっても返せる目処がない限りは避けるべきでしょう。またこのような借金をしてしまった多くの場合、信用情報に傷が付いてしまいます。信用情報に傷が付いてしまった場合、たとえば銀行から融資を受けたいと考えた時に、審査で落とされる可能性が高くなってしまうのです。
積極的に借金をした方が良いとは言いませんが、事業を行う上で必要経費となるであろう金額を半年から1年分は事前に用意、もしくは資金調達で用意した方が良いと思います。また事業上、チャンスと判断できた時に動けるだけの資金の目処も立てておくとよいでしょう。
資金調達することで信用を得ることができる
事業者の常識ではあるのですが、資金調達をし、それをしっかりと返済していくことで、信頼を作り上げることができます。
たとえば銀行から資金調達をした場合。決められた金額を決められた日にしっかり返済していたとします。すると銀行側からしてみると「この事業者はしっかり返済してくれる。約束を守ってくれる。利息も支払ってくれ銀行にとって利益になる人だ。」と判断されるわけです。
すると、大きな金額が必要となった時に、積極的に融資をしてくれやすくなるのです。
つまり借金をして利息を支払うことで「信頼を得ることができた」ということなのです。
だからこそ大きな会社も、とくに経営に困っておらず融資を受ける必要がないのにも関わらず金融機関から融資を得ているのです。
自己資金ゼロからのスタート!売上以外で運転資金を調達する方法
そもそも自己資金とは、自分の考えている事業に使うために銀行などの金融機関に預けている現金のことです。自分の趣味や旅行などの目的で貯金している現金は自己資金ではありません。あくまでも「事業」に使う予定のお金が自己資金にあたります。
自己資金ゼロから起業し、売上以外で運転資金を調達する方法はいくつかありますが、大きく分類すると次のような区分けになります。
借りる | 売る | もらう |
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自己資金ゼロから起業した場合、どのような資金調達方法が取れるかを紹介します。
自己資金ゼロからの資金調達方法:「借りる」
自己資金がゼロの状態から起業する場合、多くの事業者は「借りる」を選択します。
これは銀行や金融会社から借りることとなります。ただし問題点としては、起業前や起業して間もない状態の場合、選ぶ金融商品にもよりますが、融資の審査に通る可能性が低くなることがあります。
実績がないためです。
銀行や金融会社が融資審査でもっとも重視する点としては、「貸倒れにならないかどうか」です。つまり貸したお金が返ってくるかどうかを最も心配するのです。
起業前や起業して間もない会社は、融資する側にとって将来性が予想しにくいというデメリットがあります。自己資金ゼロで運転資金を金融機関や金融会社からの融資に頼るのはリスクがあるかもしれません。
自己資金ゼロからの資金調達方法:売る
資金調達方法としては一番単純であり、ある意味確実な方法が「売る」でしょう。
起業前に個人で購入して使わなくなったものを売却し、そのお金を自己資金として活用するのです。とはいっても、会社を運営するための資金となると、ある程度の金額が必要となることでしょう。
大きな資金を調達するためには、不動産や自動車などの固定資産などの比較的金額が大きいものの売却が考えられますが、みんながみんな、それらを売却して資金調達しているのかというとそんなことはありません。あくまでも方法の1つとして考えておくとよい程度だと思います。
自己資金ゼロからの資金調達方法:(投資して)もらう
最近ではクラウドファンディングなどの不特定多数の人から投資してもらう手法が多くなっています。投資する人が魅力的、投資したいと思える事業であれば、将来性に投資してもらえる可能性も高くなるでしょう。
投資以外で「もらう」資金調達方法として、補助金や助成金といった行政からの支援金も挙げられます。自分の事業が補助金・助成金の対象事業であることが条件ですが、自己資金ゼロで起業する場合には、まず補助金や助成金に該当するかを確認してみるとよいでしょう。補助金や助成金は役場や地元の商工会などで情報を得られます。
ちなみに補助金は「もらう」に該当はしますが、一部負担してもらうといったものであり、自己資金がゼロというわけにはいきません。
自己資金ゼロからのスタートで活用したい創業融資について
自己資金ゼロで起業後に運転資金を確保するのはかなりハードルが高いです。しかし、そんな自己資金ゼロで起業する経営者に向けた融資サービスがあります。財務省所管の特殊会社である「日本政策金融公庫」や、認可法人である「信用保証協会」が提供している「創業融資」がそれにあたります。
創業融資は新規起業した会社が条件さえ満たしていれば融資を受けられる行政主導の制度です。この創業融資を活用することで、自己資金ゼロでも運転資金を手に入れられるのです。
自己資金ゼロで利用できる4つの創業融資
自己資金ゼロでも利用できる創業融資は全部で4種類です。
- 新創業融資制度(日本政策金融公庫)
- 中小企業経営力強化資金(日本政策金融公庫)
- 挑戦支援資本強化特例制度(日本政策金融公庫)
- 制度融資(信用保証協会制度融資)
それぞれどんな融資制度で、どんな条件を満たせばよいのかを解説します。
新創業融資制度(日本政策金融公庫)
新創業融資制度は無担保・無保証で融資を受けられる融資制度です。詳細を確認してみましょう。
融資制度 | 新創業融資制度 |
---|---|
対象者 | 新たに事業を始める方または事業開始後で税務申告を2期終えていない方 |
融資限度額 | 3,000万円(うち運転資金1,500万円) |
融資期間 | 各融資制度に定める返済期間以内 |
基準利率は2.41%~2.80%であり非常に低く設定されています。使い道や融資期間、担保の有無によって利率は変動します。
融資条件に関しては「対象者」にも記載している通り「新たに事業を始める方または事業開始後で税務申告を2期終えていない方」となっていますが、さらに2つの条件が概要に掲載されています。
次の1~3のすべての要件に該当する方
1.創業の要件
新たに事業を始める方、または事業開始後税務申告を2期終えていない方2.雇用創出等の要件(注1)
「雇用の創出を伴う事業を始める方」、「現在お勤めの企業と同じ業種の事業を始める方」、「産業競争力強化法に定める認定特定創業支援等事業を受けて事業を始める方」又は「民間金融機関と公庫による協調融資を受けて事業を始める方」等の一定の要件に該当する方(既に事業を始めている場合は、事業開始時に一定の要件に該当した方)
なお、本制度の貸付金残高が1,000万円以内(今回のご融資分も含みます。)の方については、本要件を満たすものとします。3.自己資金要件
新たに事業を始める方、または事業開始後税務申告を1期終えていない方は、創業時において創業資金総額の10分の1以上の自己資金(事業に使用される予定の資金をいいます。)を確認できる方
ただし、「現在お勤めの企業と同じ業種の事業を始める方」、「産業競争力強化法に定める認定特定創業支援等事業を受けて事業を始める方」等に該当する場合は、本要件を満たすものとします(注2)。
分かりづらいと思います。簡単にまとめますと以下のようになります。
- 自己資金として開業資金総額の10%以上持っているか?
これが融資条件となるわけです。
ところが自己資金ゼロで起業している場合には、この融資条件には該当していません。そのため本来であれば、この融資制度を利用することはできません。
しかし以下の項目をチェックしてみてください。
- 現在の行っている仕事と同じ業種の事業を始める場合
- 産業競争力強化法に定める認知特定創業支援事業を受けて事業を始める場合
このような特例が設定されています。
この特例のどちらかを満たしていれば、自己資金ゼロで起業していたとしても、融資制度の利用対象になります。
中小企業経営力強化資金(日本政策金融公庫)
中小企業経営力強化資金も自己資金ゼロで起業した人が利用できる融資制度です。
融資制度 | 中小企業経営力強化資金 |
---|---|
対象者 | 外部専門家の指導や助言、または「中小企業の会計に関する基本要領」の適用などにより、経営力の強化を図る方 |
融資限度額 | 7,200万円(うち運転資金4,800万円) |
融資期間 | 設備資金:20年以内(2年以内) 運転資金: 7年以内(2年以内) |
今回紹介している「中小企業経営力強化資金」は、「新創業融資制度」とは異なり、自己資金条件が設定されているわけではありません。
しかし、次の2つの条件を満たしていなければ申込できません。
次の1または2に該当する方
1.次のすべてに該当する方
・経営革新または異分野の中小企業と連携した新事業分野の開拓等により市場の創出・開拓(新規開業を行う場合を含む)を行おうとする方
・自ら事業計画の策定を行い、中小企業等経営強化法に定める認定経営革新等支援機関による指導および助言を受けている方2.次のすべてに該当する方
・「中小企業の会計に関する基本要領」または「中小企業の会計に関する指針」を適用している方または適用する予定である方
・事業計画書を策定する方
つまり以下のような感じです。
- 経営革新を目指している会社、もしくは異なる業界の中小企業と連携した新事業であること
- 自分で事業計画を作成し、認定経営革新等支援機関(認定支援機関)から指導や助言を受けている会社であること
これらが条件となります。
認定経営革新等支援機関(認定支援機関)とは?
認定経営革新等支援機関とは、認定支援機関とも呼ばれています。これは国が認定する公的機関のことです。商工会や商工会議所など中小企業支援者のほか、金融機関や税理士、公認会計士や弁護士等が挙げられます。
具体的な例を挙げてみましょう。
その際には、国が認定した認定支援機関から助言を受けています。
極端な例ですが、このような状態で起業した場合に、中小企業経営力強化資金を利用できるのです。
その専門家というのは国が認めた金融機関や士業だったりするのだ。
挑戦支援資本強化特例制度(日本政策金融公庫)
挑戦支援資本強化特例制度も中小企業経営強化資金と同じように、自己資金の条件がない融資制度です。
融資制度 | 挑戦支援資本強化特例制度(資本性ローン) |
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対象者 | 創業・新事業展開・海外展開・事業再生等に取り組む中小企業・小規模事業者であって、地域経済の活性化のために、一定の雇用効果が見込まれる事業、地域社会にとって不可欠な事業、技術力の高い事業などに取り組む方 |
融資限度額 | 4,000万円(事業承継・集約・活性化支援資金をご利用の方は別枠4,000万円) |
融資期間 | 5年1ヵ月以上15年以内 |
挑戦支援資本強化特例制度も、次の2つの条件を満たしていなければ申込できません。
・地域経済の活性化にかかる事業を行うこと。
・税務申告を1期以上行っている場合、原則として所得税等を完納していること。
税務申告を1期以上行っていて、所得税を完納していることとあるため、起業直後である場合には申し込みができないということになります。
しかし以下の条件に該当する場合には、起業直後であっても融資対象となります。
- 技術・ノウハウ等に新規性がみられる方
- 独立行政法人中小企業基盤整備機構が出資する投資事業有限責任組合から出資を受けている方
- 事業に新規性及び成長性がみられる方
ただし、この挑戦支援資本強化特例制度を利用する場合、融資希望金額によって条件が厳しくなります。1000万円を超える融資金額を希望する場合、次の条件を満たさなくては成りません。
- 産業競争力強化法に定める認知特定創業支援事業を受けて事業を始める方
産業競争力強化法に定める認知特定創業支援事業とは、簡単にいうとこれから起業する経営者向けのセミナーなどが挙げられます。
スタートアップセミナーなど、各自治体ごとで支援事業の内容が異なるため、挑戦支援資本強化特例制度で融資を申し込む場合には、事前に支援事業を行なっている機関に確認をとるとよいでしょう。
制度融資(信用保証協会制度融資)
信用保証協会が行っている創業支援融資の1つである「制度融資」は、自己資金ゼロでも融資してもらえる資金調達方法です。この融資は都道府県と信用保証協会が協力して提供している融資制度になります。
各都道府県にある信用保証協会が独自で行なっている制度融資になるため、会社の住所地にある信用保証協会で内容を確認するとよいでしょう。
信用保証協会制度融資に共通しているのが利用条件です。
- 事業を営んでいない個人で、創業しようとする具体的な計画を有するもの
つまり「まだ自分で会社を立ち上げておらず、会社を作った時にどのような事業展開をしていくのか具体的な計画がある人」ということになります。
融資内容は自己資金に1,000万円を上乗せした金額を最大借入額として融資を受けられます。自己資金ゼロの場合は上限1,000万円で融資が受けられるということになります。
注意したい点としては、各都道府県の信用保証協会によって融資条件が異なっている点です。そのため制度融資の利用を考えている場合には、制度の内容を一度確認してみるとよいでしょう。
自己資金ゼロで起業するなら創業融資の活用は検討しておきまよう
業種にもよるのですが、一般論として自己資金がゼロで起業することはかなり厳しいといえます。とくに固定費や仕入れをするタイプの業種の場合はです。すぐに売り上げが立てられるほど事業は甘いものではありません。
そのため運転資金を調達できる目処を立てておいた方が良いでしょう。
起業の直前や直後は、日本政策金融公庫や信用保証協会から融資を受けやすい期間と言えます。条件は細かいですが、銀行や金融会社の融資と違い、かなり格安な利率で運転資金を調達できる可能性があります。
しかし資金不足で事業を続け、数年後に赤字決算の状態で融資を申し込んだとしても、融資を受けられる可能性はかなり低くなってしまいます。
お金を貸す側として、「明らかに返済能力のない相手に貸すことはしません」。つまり赤字決算はマイナス要素と捉えられます。
しかし起業したばかりの場合、決算を迎えていないため、決算を判断材料にすることはありません。そういった意味でも、起業の段階で資金調達することは1つの方法と言えます。
避けてほしいことは、起業目的、もしくは起業後にカードローンやキャッシングローンを利用することです。確かに楽に借り入れをすることができますが、利率が高いだけでなく、返済遅延などを起こしてしまうと信用情報に影響が出てしまいます。その結果、将来的に融資を受けようと思っても傷ついた信用情報の影響で融資を受けられなくなってしまうリスクがあるのです。
まずは創業融資制度を活用しつつ、事業実績を積み、そこから他の資金調達方法も進めていくとよいでしょう。
要するに起業するときに資金調達が必要であれば、日本政策金融公庫にまずは連絡をしてみるとよいだろう。そして自分の状況、これからどのような事業を行う予定でいるかなどを話してみるとよいだろう。金利が低いのが非常に大きな魅力だ。
おススメのプランを提示してくれる。
参照 資金調達方法は意外と沢山ある!?事業者のための28の資金調達方法とメリット・デメリット