一般社団法人障害者就労支援ネットワークP&Pは、クラウドファンディングプラットフォーム「CAMPFIRE」にて「障がい者の収入を10倍にUPするプロジェクト」を行い、スタート22時間で資金調達を達成しました。
今回のプロジェクトは通称「おりづるガチャプロジェクト」。障がい者が作成する様々なアイテムをガチャガチャの中に詰め込み、来日する外国人に日本の文化を伝えるとともに楽しんでもらえるような仕様となっています。
ガチャガチャの中の商品は以下のものとなります。
- マグネット仕様の折り鶴
- 5ヵ国語で記載されたおみくじ
- 商品説明+手書きメッセージ
このプロジェクトを成功させることにより、作業単価を最大260倍にすることにも期待することができるようになるとのことです。
このプロジェクトがクラウドファンディングで求める目標金額は「30万円」。その内訳は以下の通りです。
設備費 | 121000円 |
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製造原価 | 125500円 |
販売促進費 | 11480円 |
リターン代 | 15000円 |
クラファン手数料 | 27000円 |
合計 | 299980円 |
結果として、クラウドファンディングを開始して22時間で目標金額を達成しました。
障がい者の収入を増やしたいという思い
障がい者の収入をご存じでしょうか。約20万人の障がい者の平均月収は16000円ほどとのことです。時給換算すると18円程度であったり、月収にして2857円という方もいらっしゃるということです。
なぜこのような状況になってしまうのか。それは内職作業の単価が安く仕事量が安定しないということが理由とのことです。
そして、障がい者が仕事を行う上での内職作業の相場とされているのは「1工程0.1円」とのこと。
この事実はあまり知られていないことでしょう。
障がい者施設で働くスタッフの現状
障がい者だけではなく、働く職員の年収も恵まれているものとは言えません。年収は、非常勤職員で約186万円、常勤職員であったとしても約286万円。この中で、業務内容は障がい者の支援業務はもちろんのこと、障がい者の収入を増やすための営業活動、商品開発、価格交渉など、多岐にわたっているのです。
この状態が続くことで、障がい者もスタッフも、将来の不安は大きくなるばかりです。
だからこそ必要となってくることは、障がい者、そして施設で働くスタッフ、つまりは障がい者施設全体の収入をアップさせ、さらには安定化することでしょう。
障がい者が積極的に参加できるブランドを創設
障がい者が積極的に参加できるブランドとして「ありがとうおりづる」ブランドが設立されました。
https://pporizuru.official.ec/
2019年丸の内KITTEで開催された千葉県期間限定アンテナショップに出店した結果、雑貨部門での売り上げランキングに4商品すべてTOP10入り。これにより戦略次第では一般の市場で福祉生産品を販売し、売り上げを上げることが可能ということが分かりました。
そしてマイステイズホテルグループと契約が決まります。割りばしに折り鶴の内職を施すというものであり、今までは割りばしの内職単価が1膳当たり1円だったのに対し33円にすることができました。
障がい者が作りやすく、職員が指導しやすく、受け取ったお客様に感動していただける、関わる全ての人がハッピーになる動きが現実的なものとなってきたのです。
そして今回のクラウドファンディングにつながります。
さらに障がい者の活躍の場を広げるために、障がい者が作成する様々なアイテムをガチャガチャの中に詰め込み、来日する外国人に日本の文化を伝えるとともに楽しんでもらおうと考えたのです。
結果として多くの賛同を得ることができ、目標金額を即日の22時間で達成することができました。
代表「奥岳洋子さん」に今回のプロジェクトについて聞いてみた
今回、一般社団法人障害者就労支援ネットワークP&Pの代表「奥岳洋子さん」に、クラウドファンディングを利用して資金調達に成功した秘訣をお聞きしました。
- なぜクラウドファンディングを利用しようと考えたのですか?
- 理由は3つです。1つ目は単純に「一般社団法人」で活用できる補助金がほとんどないからです。
2つ目は社会から求められていることなのか客観的に判断したかったからです。自分ではどんなに良いアイディアだと思っても、それは主観でしかありません。第三者に、より多くの人に、事業計画をジャッジして欲しくてクラウドファンディングを選びました。
3つ目は宣伝広告費の削減です。クラウドファンディングは資金調達と同時に宣伝活動が可能です。モノが完成してからの宣伝活動では競合が増えるため、どんなに良いモノを作っても資金力で負けてしまいます。ストーリーを含めた商品化で他社と差別化を図るためにもクラウドファンディングを行う必要がありました。 - 金融機関からの融資や、補助金などは検討したのですか?もし検討したとしたら、なぜクラウドファンディングを選んだのですか?
- 1つ目のご質問と被る部分もありますが、今回のプロジェクトは後々必要になる宣伝広告費をいかに抑えて、より多くの人に知ってもらえるかが重要だったので金融機関からの融資や補助金は検討しませんでした。
- 補助金申請と比較してクラウドファンディングとの違いはありますか?
- 以前他の事業で補助金申請を行ったことがあります。考える内容も記載する内容もほとんど同じです。
シンプルに考えるとクラウドファンディングは事業計画の公開です。ジャッジする人が違うだけです。後々宣伝する必要性のない事業であれば、ジャッジする人が決まっている補助金の方が資料構成では簡単かもしれません。
後々宣伝する必要のある事業、例えば「ものづくり」や「新規サービスの提供」などは、クラウドファンディングの方が合理的だと考えます。売り出したいモノ・サービスが決まって採択が決定してから宣伝する補助金、モノ・サービスができる前から資金調達と同時に宣伝できるクラウドファンディングが大きな違いだと思います。
どちらが良いのかは資金調達する事業によって変わるかもしれませんね。 - クラウドファンディングで達成率を高める方法は何かありますか?
- 成功率を高める方法は2つです。
1つ目はプロジェクト開始前までにジャッジしてくれる人をどれだけ自分で集められるかが重要です。ただプラットフォームにプロジェクトを載せるだけではジャッジしてくれる人を集めることはできません。他にもプロジェクトがたくさんあるので埋もれてしまいます。自分らしい方法で、本気でお願いすることが大切です。
2つ目は、1つ目のポイントに加えて支援期日をこちらで設定してお願いすることです。クラウドファンディングの性質上、初日が一番閲覧数が多く盛り上がります。大手クラウドファンディングのプラットフォームでも「5日目までに〇〇%を達成を目指しましょう」と言われている通り、1週間後から一気に減ります。
私は宣伝広告も兼ねたプロジェクトで話題性を作りたかったこともあり、近しい関係の方々には『初日にご支援をいただきたい』というお願いをしました。その結果、即日達成して、最終的には200%以上の資金を調達することができました。
いかにスタート時点で盛り上がっているかが、一週間後以降の支援に影響してきます。支援のお願いをする時は、ご支援いただきたい日をこちらから伝えることで成功率が高まります。 - クラウドファンディングを活用してみてどうでしたか?(良かった点、悪かった点)
- 【良かった点】
まずは目標金額の資金調達ができたことです。
そして多くの方に応援してもらえるプロジェクトだと客観的に判断することができました。何より全国に多くの仲間ができて、1人で行うよりも、もっと良いプロジェクトに育っていく予感がします。
【悪かった点】
悪かった点は特にないですが、思っていたより「大変」でした。
写真や文章構成などプロジェクトページは自分で考えなければなりません。はじめて読む人にも伝わる文章になるまでに何度も何度もブラッシュアップをしました。 - これからの目標を教えてください。
- 多くの方にご支援いただいたプロジェクトです。必ず実現させて2025年の大阪万博までに、関西エリアに50台の設置を目指します。
自分たちの作る福祉生産品で障害福祉の仕事量を増やします。それが新しい障害福祉への第一歩になったら私自身も嬉しいです。 - これから資金調達をしようと考えている人に一言アドバイスをお願いします。
- 資金調達の目的によって相性の良い資金調達方法があると思います。先々のことまで考えて、自分の計画に一番合った方法で資金を調達することが、今後の自分自身のモチベーションにもつながると思います。長引く新型コロナの影響で厳しい状況がまだまだ続きますが、一緒にがんばって乗り越えていきましょう!