・資金調達で失敗したくない・・・。
・他の事業者はどうしているのだろう?
法人でも個人事業でも、事業を経営するにあたり何かと必要になってくるのが事業資金や運転資金のための資金調達です。資金調達は事業にとって大切なものであり、選択を誤ってしまうと大きく損をしてしまうことも・・・。
そこで資金調達に失敗しないために情報を集めようと思ったのですが、なかなか客観的なデータを見つけることができませんでした。
そこで今回、事業者限定でアンケートを行い、「今まで利用したことのある資金調達方法と、それに付随する情報を集計してみました。」
職種や事業規模など異なるため、一概にどれが良い資金調達方法であるとは言い切れませんが、事業者の「85.5%」に資金調達をした経験がありました。
これから資金調達を考えている方は、同じ事業者から集めた意見ですので参考にしてみてはいかがでしょうか。
目次
事業者の利用する「主な12の資金調達の方法」+1
まずはじめに、事業者が今まで利用したことのある資金調達の方法を紹介します。
WEB調査では、以下の12の資金調達方法と「その他」を選択肢として用意しました。
- 金融機関-銀行
- ビジネスローン・事業者ローン
- ファクタリング
- 公的資金
- 手形割引
- 補助金
- 助成金
- 動産担保融資
- セールスアンドリースバック
- ベンチャー・キャピタル
- エンジェル投資家
- クラウドファンディング
- その他
結果は以下のようになりました。
一番多く利用されていたのが「金融機関-銀行」であり、「60%以上」の事業者が利用した経験を持っていました。安心感もありますし、何より利息が低いといったメリットがあります。
次に多かったのは「公的資金」です。「19.8%」の事業者が利用した経験を持っていました。金利の低さが魅力な資金調達方法であり、創業時に利用される人も多いです。また最近では、日本政策金融公庫の特別貸付を利用された事業者も多いことでしょう。
続いて多かったのは「補助金」や「助成金」です。これらは一定の条件をクリアすれば受けることができ、基本的には返済義務がないため資金調達としては人気です。
第1位 金融機関-銀行 資金調達の大定番
一番利用者数の多かった資金調達方法である「金融機関-銀行」ですが、事業者の「64.1%」が利用した経験を持っていました。
調達した金額は100万円~100万円が「40.5%」であり、次いで1000万円~5000万円が「19%」、10万円~50万円が「14.3%」となりました。
資金調達までに必要とした時間は1ヶ月以内が「47.6%」、次いで1ヶ月以上が「23.8%」であり、これから利用を考えている方は1ヶ月前後は余裕を持つようにした方がよいでしょう。
ただし「65.5%」の利用者は満足しているようですが、残りの「34.5%」の利用者はそれほど満足していないようでした。
https://ennavi.tokyo/urikake-kaikake/financing/bank/
第2位 公的資金 金利の低さが大きな魅力
2番目に多く利用されている資金調達方法は「公的資金」であり、全体の「19.8%」の事業者が利用していました。
調査を行ったのが2020年10月であるため、日本政策金融公庫や商工組合中央金庫による新型コロナウイルス関連の特別貸付を利用した事業者が増えたことも原因となっていることでしょう。
そもそも非常に利息が低く設定されており、もともと事業者には人気の資金調達の方法です。ただし知名度からすると銀行の方が勝っているため、利用者が多いのではと推測されます。
調達した金額は1000万円~5000万円が「34.6%」、100万円~1000万円が「34.6%」という結果でした。
資金調達までに要した時間は1ヶ月以上が「57.7%」、1ヶ月以内が「38.5%」でした。比較的まとまった資金を調達でき利息が低いというメリットがある一方、銀行と同じように今すぐ資金を調達したいという需要には対応が難しいかもしれません。
第3位 補助金・助成金 条件クリアで返済ナシ
公的資金に次いで利用者が多かったのが、「補助金」と「助成金」です。この2つの資金調達方法の特徴としては、「補助金」では「87%」、「助成金」では「79.2%」と利用者の満足度が比較的高いことです。
「補助金」や「助成金」は、基本的には返済義務がありません。このため必然的にも満足度が高くなる結果に繋がっていることでしょう。
https://ennavi.tokyo/urikake-kaikake/financing/subsidies-grants/
意外と多かった「その他」
意外と多かったのが「その他」の「22.9%」でした。
約半数以上が「資金調達をしたことがない」というものであり、半数弱が「友人・知人・親族から資金調達した」という回答でした。
満足度の高い資金調達方法2選+1
数ある資金調達の方法の中で、利用者の満足度が高かったのは「ファクタリング」と「セールスアンドリースバック」でした。
まず注目すべき点は、「利用者が多かった資金調達方法が必ずしも満足度が高いというわけではない」という点です。
満足度が高い資金調達の特徴として、その資金調達方法を選んだ理由が「複数の資金調達方法の中から吟味して選んだ」を挙げた事業者が多い傾向にありました。
逆に、満足度の低い資金調達を選んだ理由は「資金調達ができれば何でもよかった」や「何となく選んだ」という意見が多い傾向にありました。
第1位 ファクタリング 債権資金化のスピード感が魅力
もっとも満足度の高い資金調達方法は「ファクタリング」であり、利用者の「100%」が利用したことに満足していると回答しました。
ファクタリングの知名度は上がりつつありますが、他の資金調達に比べまだまだ低く、さらに未回収の売掛債権を持っていなければ利用できないといった点が利用者が少ない理由と推測されます。
勘違いされやすいですが、事業者が利用するファクタリングと、個人が利用する給料ファクタリングは全くの別物です。そして給料ファクタリングが最近何かと社会的に問題になっています。今回の調査で、事業者の利用する一般的なファクタリングの魅力は高いものだとわかりました。
https://ennavi.tokyo/urikake-kaikake/financing/factoring/
同率第1位 セールスアンドリースバック
同率1位としてセールスアンドリースバックの利用者満足度が「100%」でした。
会社所有の建物や土地を売却することで調達できる金額が高額になりやすく、今回の調査では5000万円~1億円を調達できた事業者が2名いました。
「その他」の100%はサンプル数が少ない
ファクタリングやセールスアンドリースバック以外にも、ベンチャー・キャピタルやエンジェル投資家を利用した事業者の満足度は「100%」でした。ところがサンプル数が少ないため除外させてもらいました。
1事業者当たり1種類以上の資金調達を利用
今回の調査で、事業者全体の「85.5%」が何かしらの資金調達を利用した経験を持っていました。
割合としては以下の通りです。
資金調達をしたことのある事業者のみで計算すると、1事業者当たり1.89種類の資金調達を利用していることが分かりました。基本的に複数の資金調達している事業者は「金融機関-銀行」は利用していました。
一番多い事業者では「金融機関-銀行」「ファクタリング」「手形割引」「助成金」「セールスアンドリースバック」「エンジェル投資家」と6種類もの資金調達方法を利用していました。
資金調達をしたことがない事業者は14.5%
事業者といえば資金調達の経験が少なからずありそうなものですが、「14.5%」の事業者は今までに資金調達をした経験がないとのことでした。
理由としては職種的に経費が必要ないケースや、自己資金で間に合っているという理由でした。
これにより将来的にまとまった資金を調達しなければならないときにでも、調達しやすくなるというものだ。
自分で吟味して選んだ資金調達ほど利用満足度が高い
今回の調査で最も興味深い結果として「利用した資金調達を選んだ理由」に大きな偏りがありました。
数多くある資金調達の中からよく選んだ場合においては、利用満足度はそれほど低い結果ではありませんでした。
ところがそうではない場合、満足度が低くなりやすい結果になりました。とくに「なんとなく選んだ」場合においては、全体の3割程度しか満足していないという結果となりました。
理由 | 総数 | よかった | どちらでもない | 悪かった |
---|---|---|---|---|
複数の資金調達方法の中から吟味して選んだ | 80 | 59 (73.75%) | 21 (26.25%) | 0 (0%) |
その他に選べる資金調達方法がなかった | 43 | 34 (79.06%) | 9 (20.93%) | 0 (0%) |
資金調達できればなんでも良かった | 34 | 21 (61.76%) | 10 (29.41%) | 3 (8.82%) |
第三者から勧められた | 42 | 26 (61.90%) | 11 (26.19%) | 5 (11.90%) |
なんとなく選んだ | 11 | 4 (36.36%) | 6 (54.54%) | 1 (9.09%) |
何事でも言えることですが、同じ答えにたどり着いたとしても、自分で悩みに悩んで出した答えと、人に勧められて出した答えでは納得感が異なります。
自分で悩んで出した答えの場合、たとえ答えが間違っていた場合でも納得して受け入れやすいものですが、第三者に勧められた答えが間違った場合には、納得しきれない場合があります。
資金調達を選ぶ際にも、この影響が顕著に出たと言えます。
そのためこれから資金調達を考えている方は、資金調達とは会社にとっては非常に重要なことであるため、そして後悔しないためにも、事業者自身がじっくり検討して決定したほうがよいと言えます。
決して短絡的に資金調達先を決めるというのだけは避けたいところだ。
友人・知人・親族からの資金調達6%
友人・知人・親族から資金調達をした経験を持つ事業者は全体の「6.1%」となりました。資金調達をしたことのある事業者の中では「7.14%」となりました。
そのうちの半数は、それ以外の資金調達は利用していませんでした。
そしてもう残りの半数については複数の資金調達を利用しており、さらに利用した資金調達への感想はあまり満足のいく印象を持っていないようでした。
これは何を意味するのか、そしてどう解釈するかにもよりますが、個人的には友人・知人・親族からの資金調達は避けたいと思うような結果でした。
WEB調査を振り返って
今回事業者対象に資金調達に関する調査を行ってみて、いろいろ発見がありました。
「資金調達といえば銀行」というイメージを持つ人は多く、「金融機関-銀行」から資金調達をした事業者が多いであろうという予想をしていました。結果としてもそのように表れたわけですが、意外と満足度が低いということがわかりました。
また公的資金や補助金、助成金など、金利が低かったり返済する必要のないものであっても、利用者の数がそれほど多くはなく、かつ、満足度が予想していたよりも低い結果となりました。
そこで今度行ってみたい調査としては、「資金調達で感じた不満点・問題点は?」と「資金調達 知名度調査」です。
参照 資金調達(商工中金)
お断り
- 事業者に対し、今まで利用したことのある資金調達方法を質問しています。そのため今までに複数の資金調達を利用した事業者は複数回答しているため、百分率としたときに最大値が100%とならない項目もあります。
- 今回のアンケートは事業者対象ですが、法人事業者、個人事業者の区別はしていません。
- 各資金調達はさらに細分化したサービスが存在しますが、今回のアンケートは大きなカテゴリーで分けた結果です。
- 新型コロナウイルス関連の資金調達が多数出てきたため、例年よりもデータが偏っている可能性があります。